生まれた時、私は双子でした。
でも、3歳の時に高熱を出して生死を彷徨い、
目が覚めると双子の弟である望ちゃんは死んでいました。
そして、望ちゃんは天国に行くのに、
ひとつだけ大切なものを忘れていきました。
お兄様が「それは望ちゃんだ」と言うので、
今でも大切にしていますが、
その望ちゃんのことは誰にも内緒なので、
大好きなお兄様と二人だけの秘密です。
私は、その時の高熱のせいで、
それまでの記憶をほとんど失くしていました。
でも、お兄様が私をとても大切に可愛がってくれたので、
一生懸命生きてきました。
我が家は、長く続く花柳流の華道家の家系です。
花柳流の宗家は代々、女と決まっていて、
年頃になると婿養子をとり、娘を産みます。
花柳家の男子は、娘さえ創ることが出来れば、
どんな職業につこうと、何をしようと自由でした。
母は18歳の時、画家である父を婿養子に迎え、
すぐに妊娠出産をしましたが、それは男の子でした。
12歳違いの宗一郎お兄様です。
それから、なかなか妊娠することが出来ず、
やっと生まれたのが双子の望と佳苗でした。
佳苗は待ちに待ってやっと生まれた女の子でした。
ですから、双子であるにもかかわらず、
男の子の望ちゃんと女の子の佳苗では、
家族の扱いが全然違うものでした。
そのせいか、わずかな記憶をたどると、
お兄様はいつも望ちゃんに優しかったように思います。
佳苗はずっとそれがうらやましかったのです。
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