<佳苗の部屋・夜>
美菜子に女心とやらを聞いて、少しは突破口が見えてきたような気がしていた。
もちろん、まだ答えは見つからない。
尋常ではない抵抗を繰り返す佳苗を押さえこんでことを済ませるのは、
・・・やはり気が重い。
その夜も、手錠と目隠しを持って佳苗の部屋へ向かった。
起こさないように静かにドアを開けると、電気がついている。
宗一郎「佳苗・・・・?まだ、起きていたのか?」
ベッドの上で片足をたてて後ろ向きに座っていた佳苗は、ゆっくりと振り返った。
宗一郎「・・・?」
佳苗・・・じゃ・・・ない。
佳苗と良く似たその少年は、俺の顔を見ると、駆け寄ってきて抱きついた。
???「お兄ちゃん!!」
宗一郎「・・・の・・望かっ!?」
望 「うんっ!」
俺は、細いその肩をぎゅうっと抱きしめた。
宗一郎「望っ!会いたかった!」
望の両頬を挟んで上を向かせ、顔を覗き込む。望だ!間違いなく望だ。
宗一郎「どうして?」
望 「それが・・・よく、わからないんだ。」
俺は望の肩を抱いて、ベッドに腰掛けた。
宗一郎「佳苗ちゃんは?」
望 「それが、今夜は佳苗ちゃん、睡眠薬を飲んで寝たんだ。
宗一郎「睡眠薬!?」
望 「あっ、ちゃんと神田先生に処方してもらったやつだよ。」
宗一郎「そうか。びっくりした。でも、どうして?」
望 「うん。昨日、お兄ちゃんと美菜子さんのエッチ見てショックだったみたい。」
宗一郎「!?・・・はぁ?」
望 「俺もショックだったけど・・・」
宗一郎「すまん。・・・俺もちょっと溜まってて・・・」
望 「まぁ、俺はなんとなくわかるけど・・・佳苗ちゃんはね・・・」
宗一郎「・・・だよな。でも、睡眠薬なんて飲んで寝たら望だって眠ってしまうんじゃないのか?」
望 「そうでもないみたい。佳苗ちゃんが眠っている時の方が、出てこれること多いし。」
宗一郎「それなんだが。その、どっちが出てくるとかってどうやって決まるんだ?」
望 「ええ?・・・わからない。俺はいつも部屋にいて、何かのきっかけで押し出されるみたいなんだ。」
宗一郎「押し出される?自分の意志では出てこられないのか?」
望 「うん。・・・たぶん、佳苗ちゃんが部屋に入りたくなると俺を押し出すんじゃないかと思うんだけど・・・」
宗一郎「じゃぁ、佳苗ちゃんの意志?」
望 「ん~、そうでもないかなぁ。例えば今夜は、どうしても佳苗ちゃんはお兄ちゃんと会いたくなくて
睡眠薬を飲んで眠った。そしたら俺が代わりに出てきた。みたいな?」
宗一郎「・・・。最初に望が出てきたのはいつだ?」
望 「中2の夏休みに、眠っていたらお兄ちゃんが『望~望~』って言いながら、キスしてきた時。」
宗一郎「はぁ?そんなこと・・・あぁ!酔っぱらって佳苗の部屋へ言った時か?」
望 「うん。たぶん。佳苗ちゃん疲れてぐっすり眠ってて、
お兄ちゃんにキスされたから俺ビックリして・・・気づいたら、身体が動いて・・・」
宗一郎「なるほど・・・。眠り姫みたいだな。
なぁ、望から佳苗に話しかけることは出来ないのか?」
望 「・・・話したことはない。」
宗一郎「今度、話してみてくれないか?本当は、お前たちは別々じゃないんだ。」
望 「別々じゃない?」
宗一郎「そう。ふたりでひとり。だから、きっと話もできるはずだ。」
望 「うん・・・わかった。」
宗一郎「・・・今度、佳苗ちゃんにも言ってみるから。」
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