<居間・夜>
目覚めると、まわりにお兄様やお父様、お母様そして神田先生に田崎先生がとても心配そうに私の顔を覗きこんでいました。
神田 「佳苗さん、大丈夫ですか?」
佳苗 「?・・・はい。」
私が起き上がろうとすると、横になったままでよいと先生に制されました。
左手首のズキンッという痛みに顔をゆがめ右手で押さえると、そこには真っ白な包帯が巻かれていました。
私は不思議に思い、お兄様の顔を見上げました。
お兄様は何も言わず、うなずくと温かく大きな手で私のおでこを撫でました。
私は自分の身に何が起きたのか、一生懸命思いだそうとしました。
そして、少しずつ思いだしてきました。
お花のお教室が終わった後、片づけをしているとお母様が来て私に言ったのです。
「花柳家は恵理子さんに継いでもらおうと思っているの。」
ショックでめまいがしました。私は子供を産めないので花柳家を継ぐことはできない。
わかっていたことです。それでも、いざお母様にそう言われると胸が締め付けられるように苦しくなって、全身の血液が沸騰するようにざわざわと騒ぎだしたのです。
すると、頭の中で言い争う声が聞こえてきました。
何を言っているのかわかりませんでしたが、喧嘩をしているようなふたつの声。
そして身体の力が抜けて気を失ってしまいました。
そこまで思い出して、お母様の顔を見上げました。
美鈴 「ごめんなさいね、佳苗さん。そんなに思いつめるほど辛い思いをさせてしまって。」
佳苗 「・・・?それは、仕方のないことですから。」
美鈴 「でも・・・」
神田 「佳苗さん、今は何も考えずにもう少し休みなさい。ゆっくり眠って。」
私は、うなずくと目を閉じました。
※拍手&ランキングバナーをポチっとしていただけたら嬉しいです♪
↓
小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村
コメントの投稿