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響瑠

Author:響瑠
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<大学の中庭・昼>
アメリカに渡ってから3年が経っていた。
望とは、一緒に旅行に行った満月の夜以来逢っていない。
一晩中愛し合った翌朝、俺の腕の中に望はもういなかった。
代わりに不機嫌な顔の珠絵が、恨めしそうに俺を睨みつけ、身体の不調を訴えていた。
初めてだったのに、途中からは理性がきかず、思い切り抱いてしまったのだから言い訳もできないのだが。
それでも珠絵は最後に、「望は大丈夫。お互いに自分の足で立って歩けるようになったら、また出会いから始めましょう。その時はきっと、今度こそ寄り添って生きていくことができるわ。」俺に、そんなことを言った。
そう、「お互いに」と・・・。

旅行から帰ると、俺は花柳家を出てじいさんの実家を継いでいる大叔父の籍に入り、
勅使河原宗一郎となって、アメリカに渡った。
しかし、「てしがわらそういちろう」などという日本人でさえ呼びにくい名前をここの学生たちが呼んでくれるはずもなく、何故だが「ショウ」と呼ばれている。変な気分だ。
更に、丁度望と同じくらいの年頃の生徒たちと接しているのだから、一日として望の事を考えない日はない。
佳苗は高校を卒業すると、親父の実家を継いでいる伯母さんの籍に入ったそうだ。
桜庭望となり、自慢の黒い髪をバッサリ切ってイギリスに渡ったという。
俺にはもう、それが本当に佳苗なのか、それとも望なのか、もしかしたら珠絵なのか・・・
それさえもわからなかった。
花柳家は、月子が成長するまでの間、いとこの恵理子が宗家代理を務めることになったそうだ。もう、俺にはどうでもいいことだが。

アメリカに来て思ったことは、自分はとても閉鎖的なところにいたのだなということ。
花柳家は、いつまでこんなことを続けていくのだろうか。花柳流を継ぐ者が男でも女でも、また血のつながりがどうであれ、そんなことがどこまで重要なのだろうか?
花柳流を一番に愛し技術を伴うものが継いでゆけば良いのではないだろうか?
そんなことを思ってみるが、もう外に出た俺には何を言う権利もない。
そしてもうひとつ、自分がどれほど弱く未熟だったかを思い知る毎日だった。
この3年で、俺も少しは成長できたのかな。

じいさんから、そろそろ日本に戻って、学校経営を手伝ってほしいと連絡がきていた。
俺は、放課後、大学の中庭にあるベンチでテイクアウトのコーヒーを片手に、この3年間を思い返しながら、どうしたものかと考えていた。

学生 「ショウー!お客さんだよ~」

生徒が、客人を連れて近づいてきた。
俺の研究室への入室希望者かな?
顔を上げるとそこには・・・何度も何度も夢にまで見た、愛しい望が立っていた。

望  「ひさしぶりだね。」
宗一郎「・・・望?」
望  「うん。迎えに来たんだ。」
宗一郎「迎えに・・・?」
望  「そう、一緒に日本に帰ろうよ。」

望は少し身長も伸びて、凛とした表情になっていた。
あぁ、大人になったんだな。

宗一郎「あぁ、そうだな。一緒に日本に帰ろう。」

望の差し出した手をとると立ち上がり、抱きしめた。
聞きたいことは沢山ある。話したいことも沢山ある。
でも、今はただ、また望に出逢えたことだけで、俺の心は満たされていた。

宗一郎「望・・・もう、二度と手放したりしないぞ。」
望  「うん。俺も、二度と離れない。」

花柳家のしきたりに、振り回され続け、人形にように生きてきた望はもういない。
ここから、宗一郎と生まれ変わった望の、新しい人生がはじまるのだ。


Fin



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