ヨネ子は昼間見た時よりもだいぶ元気そうに、ツンとすました顔で、飛び起きた俺をじっと見ている。俺は夢の余韻にまだ少しドキドキしていて、膨らんだ股間に軽く手を乗せてため息をついた。当時良介とよく一緒に寝ていた布団で寝たせいか、だいぶ生々しい夢を見てしまったようだ。
「にゃぁー」
すたすたと部屋の扉の前まで歩いて立ち止まり、ヨネ子が俺を呼ぶので、布団から出てついて行くことにした。ヨネ子は器用に階段を降りて玄関の前で振り返った。
なんだ、外に出たいのか?
サンダルを履いて外に出ると、目の前には一面の星空が広がっていて、思わず目を奪われた。都会ではこんなに大きな空と沢山の星は見られない。しかも最近は夜空を見上げることすらしていなかったことに気づいた。
物心ついたときから、いつでもどんな時でも隣には良介がいたのに、この3年間はずっとひとりぼっちだった。たったひとりで東京に出て、初めての一人暮らし。知っている人が誰もいない街、良介のいない学校・・・。
良介からもこの街からも逃げ出した結果、目的もなく孤独を抱えて、ただ時間を無駄に過ごしていただけだ。
何もかもを包み込むような星空に見とれていると、ヨネ子を見失ってしまった。慌てて庭を出ると、すぐそこあるのは、大好きな太陽が見えずしょんぼりしている向日葵たち。
「にゃぁ~」
向日葵畑の中からヨネ子の鳴き声が聞こえた。
「ヨネ子?」
俺はおそるおそる畑の中に踏み込む。人工の灯りは道沿いに転々とある外灯のみで、月や星の灯りを足しても足下は真っ暗だ。すると微かな歌声が聞こえてきた。・・・
この歌なんだっけ?
前にも聞いたことがある。声の聞こえる方に近づいて行くと、自分が向日葵をかき分ける音とは別に、こちらに近づいてくる音が聞こえる。
こんな夜中に誰かいるのか?
俺は身構えて身体を硬くしたが、ふいに少し広く土の見える場所に出た。何かの気配を感じて顔を上げると、目の前に人が立っている。
「えっ!?・・・りょ・・う・・すけ・・・?」
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