<望の部屋・昼>
俺は久しぶりに望の部屋に入った。
佳苗が亡くなってから使われていなかったが、望が覚醒してからは、ショウが望に勉強や生活知識を教える時に使ったりしている。
この部屋の窓からは桜の木がよく見える。もうすっかり葉桜になってしまったが。
佳苗は高校3年生になった。
仲の良いお友達と今年も同じクラスになれたと喜んでいたな。
すっかり明るい性格になった佳苗だったが、正月明けのあの事件のことは、やはり思い出せないという。
母さんから、花柳家は恵理子に継がせると聞いてショックで気を失ったと言っていたから、確かに佳苗が自殺未遂をしたわけではないのだろう。
ショウなのか?望なのか?それとも・・・。
実は、クリスマスのあの夜から俺はショウと話をしていない。
佳苗の自慰を手伝う時も、佳苗自身だいぶ慣れてきたようでほとんど抵抗もしなくなったし、射精をする瞬間にショウと入れ替わるのは相変わらずだが、ショウはそのまま眠ってしまう。
そして、望もまたクリスマス以来顔を出していない。
それと・・・。
佳苗の事件の後、神田先生が気になることを言っていた。
左手首の傷は、自分でつけたものではないかもしれないと。
だとすると、いったい誰が何のために?
佳苗は誰かに狙われているのだろうか?
しかし、あれ以来何か危ない目にあったということもない。
そしてあの後、母さんの妊娠が発覚したのだった。
体外受精だが、お腹の子は女の子のようだという。
女の子が生まれてくれと、ただ祈るしかない。
これで、女の子が生まれれば恵理子がこの家に入ることもないだろうし、
何より、迷宮に入り込んでしまったかのような今の状態から解放されるのではないかと思えるのだ。
俺も佳苗も望も、そしてショウも。
そんなことを考えながらベッドに横になっていると、カチャリとドアが開いた。
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