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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
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<居間・夕方>

美鈴 「きゃーーーーーーーー!いやーーーーーーーー」

それは、俺が中学3年の秋の出来事だった。

我が家は古くから続く華道家一家で、代々女が継ぐことになっている。
だから、長男と言えども俺は華道なんてやったこともないし、自由に生きていた。
そんな俺が中学に入る頃、双子の兄弟が生まれた。望と佳苗だ。
佳苗は待望の女の子ということで、お人形のように大切に育てられた。
望は俺と同じ自由人だ。
双子なのにあまりにも家族からの、特に母親からの扱いが違う望が可哀そうで、
俺はいつも望の遊び相手をしていた。
とは言っても、望と佳苗は、とても仲が良かった。
そして、よく似ていた・・・。

二人が3歳の秋、そろって高熱を出した。原因は不明だった。
それは、1週間も続き、小さな子どもたちは、日に日に衰弱していった。
そして、佳苗が死んだ。
主治医と家族が見守る中、佳苗の息が途絶えるのとほぼ同時に、
望は少しずつ呼吸を整えながら顔には赤みが差していき、一命を取り留めた。
佳苗が望を助けたのかもしれない・・・
俺は、漠然とそんなことを思いながらふたりを見つめていた。
後継ぎである佳苗が息を引き取ったことで、大人たちはただ呆然と一点を見つめ、
時が止まったかのように静まり返った。

望  「・・・おかぁ・・ちゃま・・・」

その静寂を破ったのは、望の声だった。
のぞみは、そろりと起き上がるとそばにいた母親に抱きついた。

と、その時だった。

美鈴 「きゃーーーーーーーー!いやーーーーーーーー」

あろうことか、母親である美鈴は、望を突き飛ばし佳苗の亡骸にすがりついて叫んだのだ。

美鈴 「佳苗!かなえぇぇぇぇぇぇぇぇ!!死んじゃだめ~死なないで~
    どうして?どうして佳苗!?」

もう、それは狂気だった。泣き叫び佳苗を揺さぶり続けた。
そして、主治医が注射の準備をしていた時だった。

美鈴 「どうして望じゃないの?望が死ねばよかったのに!!」

美鈴は佳苗を抱きしめたまま、先ほど突き飛ばした自分の息子である望に向かって
叫んだのだ。

パリーン!

そんなガラスが割れるような音がした。
幼い小さな心が壊れた音だ。
望の顔からは血の気が引き、まるで蝋人形のような無表情になっていた。
そして母親を見つめて動かなかった。
瞬きさえせずに・・・。

その場にいた、父も主治医も看護師も、そして俺も絶句した。
家の事情はそこにいる誰もが知っていた。女子が家を継ぐ。
佳苗が亡くなれば後継ぎがいなくなるということだ。
しかし、あまりにも無情すぎる。

宗一郎「かあさん、何を言っているんだ?亡くなったのは望だよ?
母さんが抱きしめているのは、望だ。こっちが佳苗だよ」

俺は、望を抱きしめてそう言った。
たかだか中3の俺に、何か名案があったわけでもない。
いたたまれず咄嗟に動いてしまっていた。

宗一郎「俺が夕べ、パジャマを着せかえる時、望と佳苗のものを間違えてしまったんだ。」
孝司 「・・・あ、あぁ、そう言えば、夕べそんなことを言っていたな。」

父も察したのだろう。話を合わせてきた。
そして、呆然としている美鈴から佳苗を受け取り布団に寝かせた。
美鈴は口をぱくぱくと何か言いたげに望を見つめ近寄ってきたので、
俺は慌てて望を抱き上げた。
宗一郎「着替えさせてくるね。望の服も持ってくるよ」
孝司 「あぁ、頼む。美鈴は少し休みなさい。先生お願いします」
主治医「わかりました」

主治医はそう言って、美鈴に精神安定剤であろう注射を打った。



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