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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
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<宗一郎の部屋・昼>
十五夜の夜、妹が生まれた。月子と名付けられた。
今さら妹というのも、なんだか変な気分だが、花柳家もこれで安泰なのかな?
母さんは月子につきっきりで、もう佳苗には目もくれない。
今年の初めに、佳苗ではなく望だと言われて自分の子供に切りつけたことなど、まったく覚えていないようだ。

佳苗は高校を卒業したら留学したいと言いだした。
イギリスでフラワーアレンジメントの勉強がしたいそうだ。
随分と成長したものだ。佳苗自身の変化なのか珠絵やアンや、そして望の影響なのかはわからない。
もう、俺は佳苗に何もしてやれない。
夏に墓参りに行ってから、俺は少し佳苗たちと距離を置こうと思い、家を空けた。
その間に佳苗は自慰もできるようになっていた。
定期的に神田先生のところで田崎先生の治療は受けているが、最近は特に変化もなく他の人格は出てこないという。

望はどうしているのだろうか?
このまま、珠絵やアンとともに部屋に閉じこもってしまう気なのだろうか?
たとえ、そうだとしても俺にはどうすることもできない。
俺は望に対して兄弟愛以上の感情を持っている。薄々感じていたけれど気づかないようにしてきた自分の心の奥にあるもの。
もう、それに気づいてしまっていた。封印しなければならない感情。
だから、これ以上、望の中で起きていることに関わってはいけないのだと思うようになっていた。

俺は、じいさんの実家を継いでいる大叔父の養子になり花柳家を出ることにした。
もう30だ。本来なら結婚して婿養子になっていてもいい年だ。
だが、結婚する相手もいなければその気にもならない。
夏に必死で仕上げたレポートが認められて・・・まぁ、じいさんの推薦もあるのだが、
LA.の大学で非常勤講師をすることになった。
勤務は年明けからだが、住むところも全て用意されているらしいので、クリスマス前に日本を発ってしまおうと考えていた。

そんなわけで引っ越しの準備をしていると、開いていたドアに人影が見えた。
顔を上げると、そこには珠絵が立っていた。

珠絵 「お久しぶり。」
宗一郎「あぁ、久しぶりだな。どうしたんだ?」
珠絵 「・・・相談したいことがあって。」
宗一郎「何か問題か?」
珠絵 「問題というか・・・アメリカに行く前に望と会ってもらえないかしら?」

俺が、望を避けて旅立とうとしていることを、まるで見透かしているようだ。

宗一郎「どうして・・だ?」
珠絵 「・・・もう、会えなくなってしまうかもしれないから。」
宗一郎「・・・」

それは、想定していたことだ。
人格の統合がされるのか、それとも強くなった佳苗が望として生きていくのか。
どちらにしても、いままでと同じではいられなくなっていくことは容易に想像できる。
俺も、望に会いたい。しかし・・・。

珠絵 「・・・。会いたく・・・ない?」
宗一郎「いや。・・・会っていいのかなって思って。」
珠絵 「今、望が一番不安定になっているわ。・・・私のせいもあるけど。」

珠絵が最初の望の人格に対し、ショウと名付け別人格としてしまったことを言っているのだろう。ショウであった時は、望を演じ佳苗を演じて生きてきた。
俺と出逢ってショウと名乗ってからも、望と佳苗を守っているという自信があった。
だが、本当は自分が最初の人格であったことを知り、自分が何者なのかわからなくなってしまったようだという。
更に、表にでている佳苗は自分が望だということを受け入れ始めている。
佳苗が望になってしまったら、自分は必要ないと思っているみたいだと。

宗一郎「俺に、・・・俺に何かできるのかな?」
珠絵 「あなたにしか、できないんじゃない?」
宗一郎「そう・・・だろうか?」
珠絵 「随分、弱気になったものね。あなたも、もう自分は必要ないとか思っているわけ?」
宗一郎「・・・」

相変わらず、珠絵は鋭くて容赦がない。

宗一郎「ふたりだけで、会えるか?」
珠絵 「そこは、私にまかせて。佳苗にも協力してもらう。」
宗一郎「俺が・・・いや、なんでもない」

俺が、望を手放したくなくなってしまったら?
そんなこと、思ってはいけないんだ。でも、正直自信がない。
望みを自分だけのものにしたいと、思ってしまうかもしれない。

珠絵 「あなたと、望の思い通りでいいのよ。望の身体なんだから望の好きにしたらいい。」

まったく、珠絵には全て見透かされているようで恐ろしくなる。

珠絵 「みんなと相談して、日程を決めるわ。どこか旅行でも行ってくれば?」
宗一郎「あぁ、いいな。温泉でも行きたい。」
珠絵 「遊園地とかじゃなくて、温泉ってところがおじさんっぽい。」

そう言って、珠絵は声を出して笑った。
望は遊園地の方が良いだろうか?いや、きっと賑やかな所よりも、ゆっくりのんびりできるところの方が好きなはずだ。
何の根拠もないが、俺はそう思った。



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