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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
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<車・昼>
佳苗が初めて無断外泊をした。
俺は、驚いたが少し嬉しくもあった。
佳苗は賢い子だ。馬鹿なことをしたりはしないだろう。
きっと、自分の中で起きていることを受け入れようとしているのだ。

明け方、佳苗の携帯電話からメールが届いた。
珠絵だ。居場所を知らせてきた。佳苗は心配いらないと、自分たちがついているからと。
そうだな。そうやって協力し合って成長していくべきなんだ。
もう、俺がしてやれることはあまりないのかもしれないと、今度は少し寂しくなった。
2、3日は知らんぷりしておこうかと思っていたのだが、だいぶお腹が大きくなってきた母親の美鈴がうるさいので、迎えに行くことにした。
佳苗よりも成長しなければならないのはこの人なのだと思っている。
まぁ、もうすぐ女の子が生まれれば、佳苗が実は望だと知っても取り乱すこともないだろう。

別荘に到着すると、佳苗と美和ちゃんしかいなかった。
来る途中、山を登り始めたところですれ違った大きな4駆自動車に乗っていたのが涼君と隆哉くんだったようだ。
佳苗を連れて帰ると言うと、美和ちゃんも一緒に帰るというので3人で帰ることにした。
帰りの車中は、終始ガールズトークとやらで盛り上げっていて俺は透明人間に徹していた。
こうして見ていると、佳苗も普通の女子高生に見える。
美和ちゃんを送り届け、佳苗とふたりきりなると、車中はシンと静まり返った。

宗一郎「どこかで食事でもして帰るか?」
佳苗 「ううん。・・・ねぇ、お兄様、私、花柳家のお墓参りをしたい。」
宗一郎「!?・・・墓?まっ、まだお盆には早いぞ。」

俺は慌てた。佳苗は花柳家の墓に行ったことがない。そりゃそうだ。
そこにある石碑には、花柳家代々のご先祖様の名前とともに、花柳佳苗の名前が刻まれているのだから。
花柳家の墓は、一般の人は入れないようになっている。お寺の奥、鍵の掛った門を開けて入るのだ。

佳苗 「大丈夫よ、お兄様。私、真実をきちんと確かめたいだけ。」
宗一郎「真実・・・?」
佳苗 「私が佳苗ではなくて望であるという真実を、ひとつひとつ受け入れていきたいの。」
宗一郎「・・・。そうか、わかった。」

俺は、花柳家の墓があるお寺へ向かった。
住職にお願いをして門の鍵を開けてもらった。
母さんはもちろん、家族は佳苗が亡くなってから、ほとんど墓には来ていない。
誰もが佳苗が亡くなったことを受け入れられていなかったのかもしれない。
それでも、綺麗な花が生けてある。
御布施をして手入れをしてもらっているのだろう。
ふたりで墓前に立ち、花を生けて線香を手向ける。
佳苗は、まるで確認をするように、石碑に刻まれた自分の名前を指でなぞって、深呼吸をした。
そして、ゆっくりと手を合わせると目を閉じた。
しばらくして、目を開きふりかえると、笑顔で口をひらく。

佳苗 「花柳 佳苗 ちゃんは、ここに眠っているのですね。私は、花柳 ・・・望。」
宗一郎「・・・あぁ、そうだ。・・・すまない。俺のせいだ。」
佳苗 「お兄様のせい?」
宗一郎「佳苗が亡くなった時、取り乱した母さんに傷つけられたお前が可哀そうで・・・佳苗になれと言った。そしてお前は、佳苗になった。」

俺はあの時の魂の宿らないような望の蝋人形のような表情を思い出していた。
しかし、佳苗はニコリとほほ笑んだ。

佳苗 「それは違います。誰かに別人になれと言われたからと言ってなれるものではありません。お兄様に言われたからではなく、自分でこうなることを選んだのです。」
宗一郎「・・・?」
佳苗 「きっと、あの時の私が、悲しかったり辛かったりした気持ちを閉じ込めて、佳苗を押し出したのです。お兄様のせいではありません。」
宗一郎「・・・お前は、いつからそんなに強くなったのだ?」
佳苗 「ここに、望ちゃんも珠絵さんもアンさんもいます。力を合わせれば何でもできそうな気がして・・・。もちろん、少しずつですけど。」

そう言ってまた、微笑んだ。
あぁ、本当にもう、俺がしてやれることは何もないのかもしれない。



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