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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
実在する地名・人名・団体名が登場しても、それは偶然ですので、まったく関係ありません。
また、ここに記されている内容はオリジナルですので
著作権は作者にあります。勝手に使用しないでくださいね。
【18禁表現を含みます】


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俺が車のエンジンをかけて自問自答している間に、姉貴の瑠璃子が走り寄ってきた。

姉  「内藤さん、今から東京に戻るのも大変でしょうから、今夜は近くの旅館に泊って行きませんか?」

瑠璃子は現在都内の大学に通っていて、間もなく卒業したらこちらに戻ってくる予定だそうだ。今日はたまたま旅館街の女将の会に出席していて、地元にいたということらしい。
女性目線で既に街の為に動いているってわけか。やるなぁ。
せっかくの申し出なので、お言葉に甘えて今夜は旅館に泊ることにした。
既に先方には連絡済みだそうだ。行動も早い。

瑠璃子が紹介してくれた旅館は、旅館街の中でも更に山奥にあって、ちょっとしたお忍び旅館のようだった。
中に入ると、若くて綺麗な女将が出迎えてくれた。
・・・ん?・・・男だな?
たぶん、気づく人はそうそういないと思うが、俺にはわかる。
へぇ~なるほど、それで瑠璃子がこの旅館を紹介したのかな。
女将が部屋まで案内してくれたが、後は自分達でするからと、部屋の前で早々に女将を返した。

女将 「では、食事の支度ができていますので、少し休まれましたら食堂までどうぞ。」

女将は、ニコリと口角を上げて上品に微笑むと戻って行った。
俺は先に宇宙を部屋に上がらせ、後手で引き戸を閉めると、宇宙の肩に手をかけて振り向かせ、抱きしめた。
もう、我慢が限界だった。ずっと宇宙を抱きしめたかったのだ。

宇宙 「!?・・・和樹・・さん?」
和樹 「宇宙。・・・ありがとう。」
宇宙 「え?」
和樹 「俺の手をとってくれて・・・。」
宇宙 「和樹さん・・・」
和樹 「宇宙がもし、実家に残るって言ったらと思ったら・・・怖かった。」

宇宙は、俺の背中に手をまわすと、ぎゅっと抱き返してきた。

宇宙 「僕も・・・怖かった。和樹さんに実家に残れって言われたらどうしようって・・。」
和樹 「ははっ・・・俺の選択肢にそれはなかったな。宇宙が決めることだから。」
宇宙 「うん。・・・僕、和樹さんと一緒にいて・・いいの?」

俺は、宇宙の両頬を手で包み込むと、唇を重ねた。

和樹 「あぁ、離さない。」

俺は宇宙の唇を貪った。宇宙もそれに応える。
何度も何度も角度を変えて唇を重ね合う度に、宇宙が吐息を漏らす。
ん~このまま押し倒したい。
俺がそう思った瞬間、宇宙が両手で俺の胸を押さえた。

宇宙 「んっはぁ・・和樹さん・・・これ以上・・だめ・・・」
和樹 「なんでだよ。」
宇宙 「我慢できなくなっちゃうから。食堂行かなきゃ。」

まったく、こんな時だけ冷静だな。まぁ、地元だしお姉ちゃんの手前もあるのだろう。
俺たちは少し落ち着いてから、食堂へ向かった。
食事をする場所も個室になっている。
落ち着いた雰囲気の中、俺たちは食事を楽しんだ。

部屋に戻ると大きめの布団が二枚並べて敷かれていた。
なんだか少し照れるな。
食事の後、女将が「お部屋のお風呂は24時間ご利用いただけます。」と言っていたが、よくよく見ると、窓の外に桧の露天風呂がある。これのことか?なんとも贅沢だな。
もちろん俺は、宇宙と一緒に入ることにした。
俺が宇宙の髪を洗ってあげたり、宇宙が俺の背中を流してくれたりしながらじゃれ合った。
桧の香りがする湯船にふたりで入ると、長い一日だったなとため息がでた。

和樹 「ふぅ~」
宇宙 「和樹さん?疲れた?」
和樹 「いや、今日は色々あったな。明日からもなんだか忙しくなりそうだと思って。」
宇宙 「僕、・・・楽園のアクターになれるかな・・・?」
和樹 「なれないよ。この間撮ったPVもお蔵入りだ。」
宇宙 「え?」
和樹 「こっちにおいで。」

俺は宇宙を後ろから抱きしめた。振り向かせると軽くキスをする。
まったく、変なところでドライだな。この期に及んでAV男優になる気なのか、こいつは。

和樹 「お父さんが政治家で、お姉さんもそれ目指してるんだ。お前のAVが流出してみろ。ふたりとも失脚することになる。そんなことさせたくないだろ?」
宇宙 「あ・・。」
和樹 「って、言うのは建前で、俺が嫌なの。」
宇宙 「えぇ?」
和樹 「お前のあんな顔、他の奴になんか見せたくない。悪いけど俺、自分は棚に上げても独占欲強いから覚悟して。」
宇宙 「和樹・・さん?」
和樹 「宇宙、好きだ。」
宇宙 「!?・・・和樹・・さん?」
和樹 「あ、こんなシチュエーションの告白ってダメだった?」

宇宙は振り返り、身体ごと俺に向かいあうと、自分から唇を重ねてきた。

宇宙 「嬉しい。僕も、和樹さんが好き。」

宇宙は、くりくりっとした大きな垂れ目で俺を見つめる。可愛い。
俺は自分の心の中に「愛しい」という感情を初めて見た気がした。
宇宙のぷっくりとした唇を啄み、舌を差し入れ口内を舐めるとお互いの唾液が絡み合って、ピチャピチャと音を立てる。
向かいあって抱き合う形で湯船につかっているふたりの間に、2本のペニスがむくむくと立ちあがってきた。
腰を引き寄せると、それがお湯の中で触れ合う。触れてはビクンっと離れ、また触れる。
俺は右手の中指を宇宙の背中からお尻の丘の間に滑り込ませ、蕾を撫でた。

宇宙 「んんっ・・あんっ・・そこ・・・ダメ・・・」
和樹 「なんで?」
宇宙 「だって・・・あぁ・・・・」
和樹 「お蒲団でしたい?」
宇宙 「うん。」

宇宙は俺を焦らすのが上手いな。
了解。そろそろ俺ものぼせそうだ。
上気した宇宙の頬は薄いピンク色に染まっていて、なんとも色っぽい。
そろって、お風呂を出ると浴衣に着替えた。



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俺たちが通されたのは、明智小五郎や金田一耕介がなぞ解きをするような応接室だった。
メイドさんが高級そうな紅茶を淹れてくれたが、今は口をつける気にもなれない。
宇宙は隣で小刻みに震えている。自分の親に会うのにこんなに緊張する子供って、いったい何なんだ。と俺は怒りがこみ上げてきた。
すると、廊下から足音が聞こえてきて、木崎がドアを開けると宇宙の両親と思われるふたりが入室してきた。
俺たちは立ちあがり、一礼した。
父親は宇宙と同じくらいの身長があるが、身体に厚みがあるのでもっと大きく見える。
顔はどこもかしこも角ばっていて、宇宙とは似ても似つかない。
その後を俯き加減についてきた母親は、宇宙とそっくりだ。宇宙を小さくしたような感じ。
宇宙くん、お母さん似で良かったね。

父親 「宇宙、何だその頭は!・・・ところで君は誰なんだ?」

確かにこの雰囲気に、宇宙の金髪は浮きまくっている。
そして当然の様に、父親の視線は俺に突き刺さった。

和樹 「初めてお目にかかります。内藤和樹と申します。今日は宇宙くんの付き添いで参りました。」
父親 「ふん。勝手についてきて、初めて訪問するのにスーツも名刺もなしか?」
和樹 「本日は休日で訪問が急でしたので、私服で失礼いたしました。遅れましたが私、株式会社楽園で企画営業部長をしております。」

俺は、翔に感謝しつつ、今朝無理やり持たされた名刺を父親に渡した。

父親 「木崎。」

父親は、名刺に目を通すこともなく木崎に渡している。まったく何なんだこの人は。
母親が控え目に「どうぞ」と言うので俺たちはソファーに腰を下ろした。

父親 「宇宙、もう東京は懲りただろう。こっちに帰ってきなさい。」
宇宙 「・・・」
父親 「社会勉強をと思って東京に出したが、間違いだったな。男が化粧などに興味をもって、挙句に男が好きだなどと言いだして。私はオカマを育てた覚えはないぞ。」

オカマって・・・。宇宙くんはちゃんと男の子ですよ。ただ恋愛対象が男性なだけです。
お化粧だって自分でするわけではないでしょうに。
そして宇宙は何も言えずに俯いている。

父親 「近々、選挙があるんだ。こちらに戻ってきて木崎についてまずは、秘書の勉強をしなさい。ゆくゆくは私の後を継ぐのだから。」
宇宙 「・・・」
和樹 「宇宙?自分の言いたいことをきちんと伝えないとな。」

宇宙は、潤んだ瞳を俺に向けると、ゆっくり頷いて、父親に向き直った。

宇宙 「父さん。僕、政治家にはなりません。ヘアメイクの勉強をして、綺麗になりたい人のお手伝いをしたんです。僕の手で綺麗になった人の笑顔が見たいんです。」
父親 「何を夢のようなことを言っているんだ。」
宇宙 「それと、女の人を恋愛対象として好きにはなれません。だから、この家を継ぐこともできません。」
父親 「馬鹿がっ!男同士なんて、ただの性欲の捌け口だ。現に痛い目に遇ったのだろう?もう少し大人になれば、女が良くなる。痛い目見れば戻ってくるかと思えばっ・・」
和樹 「あの?・・・まさか宇宙くんの前の彼氏ってお父さんの差し金ですか?」
父親 「だったら何だ?男になど一度懲りれば女の良さがわかるだろう?」
和樹 「いい加減にしてください。あなたの差し金で自分の息子がどんな目に合わされたかわかっているのですか?」
父親 「何を!?」

俺は宇宙を立たせて後ろを向かせシャツをめくった。

和樹 「この傷や痣は、あなたが送り込んだ男にやられたものです。」
父親 「!?・・・木崎っ!!どういうことだ!?」
木崎 「は、はい。」

木崎が父親の所に走り寄ると同時に、廊下が賑やかになり、バンッ!とドアが開いた。
そこには、これまた父親をミニマムにしたような女性が立っている。姉貴だな?

姉  「お父様!いい加減にしてくださいっ!」
宇宙 「お姉ちゃん。」
父親 「瑠璃子!行儀が悪いぞ。来客中だ。」

お姉さんは、父親の言葉など無視して宇宙に近づき、背中の傷を見るとシャツを下ろして座らせ抱きしめた。事情はほぼわかっているようだ。

姉  「お父様が木崎に命令したの?」
父親 「・・・」
姉  「馬鹿ね。木崎は宇宙が好きなのよ。宇宙を自分のモノにするためなら何だってするわ。」
木崎 「る、瑠璃子様。」
姉  「そうでしょう?あなたから逃げるために宇宙はこの家を出たのよ。」
父親 「木崎?」
姉  「まったく、お父様の目は節穴ね。」
父親 「うるさい!!出て行け!!お前たち、みんな出て行け!」
母親 「いいえ。出て行くのはあなたです!!」

ずっと黙っていた母親が、腹の底から声を出して言葉を発した。
そこにいた全員が言葉を失い、母親に指をさされた父親に注目していた。

母親 「この家は、瑠璃子に継がせます。あなたは、瑠璃子に指導できますか?できないのなら出て行ってください。」
父親 「な、何を言っているんだ?」

母親の毅然とした態度に、一同が生唾を飲み込む。
そもそも、この家は母親の実家だそうだ。そう、父親は婿養子だったのだ。
父親は、この大地主で旧家である妻の家で威厳をもちたくて、時代錯誤なことを言ってきたのかもしれない。
後はこの家の問題だ。俺は、静かに立ちあがって宇宙を見つめた。

和樹 「宇宙?宇宙はここに残るか?それとも俺と一緒に帰るか?」

これからのことは、宇宙が自分で決めなければならないんだ。
宇宙は立ちあがると、ゆっくりと全員の顔を見渡し、最後に俺を見つめた。

宇宙 「僕は、和樹さんと帰ります。」
和樹 「そうか。それでいいんだな?」
宇宙 「はい。」

宇宙は、迷いのない目をしている。俺が右手を差し出すと宇宙は左手を乗せて握ってきた。

母親 「内藤さん?宇宙をよろしくお願いいたします。ここは宇宙には少し生きにくい場所です。田舎ですから。」
姉  「あっ。でもいつか私が、宇宙が帰ってきても差別的な目でみられないような街にするから。」
宇宙 「うん。僕、ちゃんと夢を実現できるように、がんばります。」
和樹 「息子さんを、お預かりします。」

母親と姉とは打って変わって、父親と木崎は脱力してしまっている。
いざとなると、女は強い。
俺たちは手をつないだまま、その部屋を後にした。

車に乗り込むと、俺は大きく深呼吸をして、宇宙の頭を撫でた。

和樹 「帰るぞ。」
宇宙 「うん。和樹さん、ありがとうございました。」
和樹 「俺は、何もしていない。宇宙が自分で考えて決めたことだ。」

俺たちはにっこりとほほ笑みあった。
俺はやっぱり、笑った時のこの宇宙のくりくりとした大きな垂れ目が好きだ。
好きだ・・・?
垂れ目が・・・?笑顔が・・・?宇宙が・・・?



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朝、目が覚めるとベッドには既に宇宙の姿はなかった。
のろのろと起きだしてリビングに行くと、宇宙がキッチンに立っていた。

宇宙 「あ、おはようございます。」
和樹 「おう。おはよ。眠れたのか?」
宇宙 「はい。ぐっすり。ありがとうございました。」

くりくりの大きな垂れ目をキラキラさせている。朝からこの笑顔、たまんねぇなぁ。

和樹 「いや、俺の為だからあれは・・・。」
宇宙 「え?」
和樹 「いや、何でもない。何作ってるんだ?」
宇宙 「あ、昨日の残りもので朝食を。もう出来るので一緒に食べましょ。」
和樹 「あぁ。ありがとう。お前、今日学校行くのか?」
宇宙 「あ、はい。」

宇宙の目が少し泳いで不安な顔になる。きっとまだ元彼のことが怖いはずなんだ。

和樹 「じゃぁ、車で送って行く。」
宇宙 「え?そんな・・・。」
和樹 「A俺に送ってほしい。B俺に送ってほしくない。どっち?」
宇宙 「え?」
和樹 「送ってほしくないの?」

宇宙は大きく首を横に振った。

和樹 「なら、送って行く。遠慮はいらない。宇宙がどうしたいか、はっきい言って。」
宇宙 「あ、・・・和樹さんに、送ってほしいです。」
和樹 「よし。お前、自分の気持ちを言わな過ぎる。我慢ばかりするな。何でも話せ。俺に出来ることならしてやるし、相談にものる。ただ、何事も決めるのは自分だから。俺がたとえ何を言っても、最後に決めて行動するのはお前自身だからな。」
宇宙 「はい・・・?」

宇宙は少しきょとんとしていたが、笑顔でうなずいた。
俺は夕べ、宇宙の寝顔を見ながら考えていた。きっと宇宙は今まで人の顔色を見て、自分を押し殺して生きてきたのだと思う。もう自分の手を噛んで声を殺してひとりで泣くようなことだけはさせたくないと思ったのだ。

一緒に朝食を取った後、俺は会社の車を借りるため事務所に向かった。

翔  「おはよう。あれ?和樹、早いね?」
和樹 「おはよう。ああ、宇宙を学校に送って行く。車貸して。」
翔  「やっぱり、心配?」
和樹 「ああ。あいつ、手首に拘束の痕あるし、背中は傷と痣がいっぱいなんだ。」
翔  「えぇ!?和樹、早速やっちゃったの?」
和樹 「はぁ?やってねぇよ。」
翔  「だって、なんで背中の傷とか知ってるんだよ?」
和樹 「ばっか、あいつ夕べひとりで泣いてたんだよ。心配になってシャツをめくって見たの。」
翔  「ふぅーん。なんだかすっかり保護者だな。」

翔はまだ少し疑っているみたいだったが、社用車を貸してくれた。
しかも新車で、俺が営業OKした時の為の車だとか言っている。まだ返事もしていないのに、すっかりそのつもりだ。更にもう名刺を作ったらしい。無理やり持たされた。
肩書きは「企画営業部長」。まったく気が早いな。まぁ、考えてはいるんだけどね。

宇宙を車に乗せて学校に到着すると、門の所には、到底学校とは似つかわしくない黒塗りの車とその横にスーツ姿の男が立っている。
そいつが視界に入ると、宇宙は急に落ち着かない様子になった。

和樹 「どうした?・・・まさか、元彼?」
宇宙 「違う。・・・父さんの秘書。」
和樹 「とうさんのひしょ・・・?」

俺は、一瞬意味がわからなかった。宇宙は何を言っている?

宇宙 「僕の父親は、地元の議員なんです。その秘書の木崎です。」
和樹 「はぁ。お前ってホント、次から次へと謎の多い奴だな。」
宇宙 「え?そうですか?」
和樹 「で、その父さんの秘書が、どういてここにいるんだろうな?」
宇宙 「わかりません。」
和樹 「じゃぁ、取りあえず話を聞いてみないとな。」

俺たちが車から降りると、その秘書の木崎とやらが、走り寄ってきた。
どうやら、宇宙を連れ戻しに来たらしい。勘当したんじゃなかったのか?
急に次の選挙が決まったらしく、父親がどうしても長男である宇宙に応援させて顔をつなぎ、ゆくゆくは後を継がせたい考えらしい。
力ずくでも宇宙を連れ戻す算段らしいので、この際、話をつけた方がよさそうだと俺は判断した。

和樹 「宇宙、一度、きちんと親父さんと話をしてみろ。このまま逃げてはいられないし、自分が本当にやりたいことを、しっかり伝えるんだ。」
宇宙 「え?・・・あの・・・そう・・ですね。」
和樹 「ん?」
宇宙 「あ・・・和樹さんも、一緒に来てもらえませんか?」
和樹 「ああ。もちろん一緒に行くさ。」

俺は、宇宙が自分から俺に、一緒に来てほしいと言ったことが嬉しくて笑顔で答えた。
もちろん、頼まれなくても宇宙を一人で行かせるつもりはないけどな。

自分の車に乗せると言う木崎をねじ伏せて、無理やり宇宙を俺の車に乗せて走り出した。
宇宙の実家は都心から車で3時間ほどの所にあるそうだ。結構なドライブコースだ。
温泉街の地主の旧家らしい。
親父さんは、未だに男尊女卑の時代錯誤な考えの人で、長男である宇宙を厳しく育てたそうだ。
「男は泣くな」・・・それでか、宇宙があんな風にひっそりとひとりで泣くのは。
「長男が跡を継ぐ」・・・と言うことで、議員を継がせたいそうだが宇宙は政治にまったく興味はない。更にゲイである。女性と結婚して子供を授かり、その家と政治家としての地盤を代々継いでいくなどとは難しいことと思える。
宇宙には3つ年上のお姉さんがいるそうで、こちらは宇宙と全く逆の性格で、ものすごく活発で将来は政治家になりたいらしい。
なら、お姉さんに継がせればまるく収まるもんだと俺などは思ってしまうのだが、親父さんとしては、女は家を守り子を産み育てるべし。というわけだ。
宇宙の話を聞いているだけで頭が痛くなってくる
そんな頑固な親父さんをどう説得するか、これは結構難しいかもしれないな。

俺は途中休憩場所から、翔に電話を入れて事情を話した。
何かあれば、駆けつけると言っている。この車GPSが付いているらしい。まじか?

宇宙の生い立ちを聞いていたら、思ったよりも随分早く実家に着いた。
門をくぐっても更に車で進んでいくとやっと大きな屋敷が見えるくらいの広い敷地だ。
庭は日本庭園でも思わせるような自然がいっぱいで池などもあったりして、宇宙はまさにお坊ちゃまだったのだ。

和樹 「うわぁ~でかい家だな。」
宇宙 「・・・」

宇宙は既に緊張で、カチカチになっていた。
車を降りると、木崎に案内されて、お屋敷に足を踏み入れた。
本物のメイドさんがいる!?
結実香ではない、本当に清楚なメイドさんが応接室に案内してくれた。
流石の俺も、少し脚がすくんだ。



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嵐のように大騒ぎをして、渚とコウが帰って行くと部屋はまた静かになった。
俺は口を開くとまた宇宙に説教してしまいそうで、なんとなく当たり障りのない話をして早めに休むことにした。
しかし、ベッドに入っても一向に眠れそうもなく、何度も寝がえりを打ってはため息をついていた。
「宇宙は眠れただろうか?」「宇宙は慣れない部屋で寂しくはないだろうか?」「宇宙は・・・」
頭の中はリビングを挟んだ向かい側の部屋で眠る宇宙の事でいっぱいだった。
なんだって、俺はこんなにも宇宙の事が気になって仕方がないんだ?
まったく、いい年したおっさんが、恋でもあるまいし・・・恋!?
はっ?恋・・・はないだろう?ないない。10歳も年下の男の子に恋?
まさか・・・な。

なんだか、悶々としてきたので、酒でも煽って眠ろうと決めて、部屋を出た。
ドアを開けると、真っ暗なリビングにあるTVがついている。音は聞こえないが画面は・・・?
おい、俺と宇宙のAVじゃないか!?
楽園の寮内にあるTVでは、楽園のAVがいつでも見ることができる。自分のモノをみて反省するなり、人のモノを見て勉強するなり、おかずにするなり使い方は色々だが。
宇宙と俺のは宇宙のデビューがまだ決まっていないので販売はされていないが、ここでは見ることができる。
さっき、渚が宇宙に色々レクチャーしていたから、きっと教えてもらったのだろう。
それにしても、おいおい。
おじさんは眠れないって言うのに、初日から余裕でAVですか?やっぱり19歳は若いね~。
宇宙の姿は見えないので、ソファーの下に座っているのだろう。
まさか、オナニーしてたりして・・・。
俺は悪戯を思いついた子供のように、後ろからそっと近づき、宇宙のヘッドフォンを外した。

宇宙 「えぇ!?」
和樹 「何みてるの~?」

驚いて立ちあがりながら振り返った宇宙の大きな目からは、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちている。宇宙は慌てて自分の服の袖口でそれをぬぐった。

和樹 「・・・どうした?」
宇宙 「あ・・あの・・・ごめんなさい。」
和樹 「怒ってない。俺はAV見ながら泣く奴を初めてみたぞ。」
宇宙 「あ・・その・・・ごめんなさい。ごめんなさい。」

宇宙は、しゃがみ込むと両手を自分の顔の前でクロスしながら、ひたすら謝る。
良く見ると、宇宙の手の甲には赤く滲んだ歯形がついている。自分の手の甲を噛んで声を押し殺して泣いていたのか?
俺はTVの横にある暖色灯をつけてTVを消した。
宇宙の前に座り、その手首を握って開き顔を覗き込む。

和樹 「何があった?」
宇宙 「・・・」

宇宙は俯いてただ首を横に振る。

和樹 「わかった。言いたくないなら何も言わなくていいから、泣け。」
宇宙 「え?」
和樹 「思いっきり泣け。・・・とにかく、声出して泣け。」

宇宙は下唇を噛んで、きょとんとした顔で俺を見ていたが、すぐに涙が溢れてきてボロボロとこぼれだす。俺は手首を握っていた手をはずし、親指でその雫をぬぐう。
座ったまま、両足と両手で宇宙を包み込んだ。

和樹 「我慢するな。ちょっと位大声出しても、このマンションの壁は厚いから大丈夫だ。とにかく、ここで泣け。」

俺は自分の胸を手のひらで叩いた。
宇宙は俺の首に両手をまわして、俺の胸に顔を埋めて泣きだした。細い肩を震わせ、しゃくりあげる。俺はその背中をそっとさすった。
宇宙は堰を切ったように声を出して子供のように泣く。
昼間はドライなほどにひょうひょうといていたくせに、夜中にひとりで声を殺して泣くなんて。こいつは今までこうやっていつもひとりで泣いてきたのだろうか?
まったく、何をこんなにため込んでいるんだ。

どれくらい泣いていただろうか、やっと落ち着いてきたので顔を覗き込んだ。

和樹 「少しは落ち着いたか?」
宇宙 「はい。すみませんでした。」
和樹 「なぜ、謝る?俺が泣けと言ったんだ。泣きたい時は思いっきり泣いた方がすっきりするだろ?」
宇宙 「はい。」
和樹 「ホットミルクでも飲むか?」
宇宙 「はい。」
和樹 「じゃぁ、ソファに座って待ってろ。」

俺は、冷蔵庫から牛乳を出してマグカップに注ぐとレンジでチンして宇宙に渡した。
自分用はバーボンのロックだ。

和樹 「言いたくないならいいけど、何で泣いてたんだ?それもAV見ながら・・・」
宇宙 「・・・撮影の時の事・・・思い出して・・・」
和樹 「え?撮影・・・嫌だったの?」
宇宙 「ち、違います!・・・僕、こんな風に大切に抱いてもらったのって初めてだったから・・・でも、撮影だし演技なんだなって思ったら悲しくなっちゃって・・・」
和樹 「はぁ!?お前、いままでどんな恋愛してきたんだよ。男見る目なさすぎなんじゃ?」
宇宙 「そうかも・・・しれません。好きになる人はノンケだったりバイだったりで、興味本位で付き合ってくれたりセックスしてくれても、どこか精処理的で・・・僕は心のつながりが欲しいのに・・・」
和樹 「ん・・・まぁ、難しいとろこはあるわな。すぐに身体許さなきゃいいのに。」
宇宙 「・・・強引に・・・されること・・多くて。」

俺はふと気づいて、宇宙の袖をまくりあげた。そこには拘束の痕が紫色になっていた。
驚き逃げる宇宙の背中のシャツをまくりあげると、透き通るような白い肌にいくつものあざや傷跡がある。

和樹 「彼氏にやられたのか?」
宇宙 「・・・はい。」
和樹 「まったく。別れられて良かったな。」
宇宙 「はい。」
和樹 「・・・今夜は、一緒に寝るか?」
宇宙 「えっ?」
和樹 「あっ、変なことはしない。ただ、俺が心配なだけ。宇宙を一人で寝かせるのが。」

宇宙は、コクリと頷くと立ちあがった俺を見上げてニッコリと微笑んだ。
うぅ~ん。可愛い。その笑顔だよ。

俺は身体がでかいのでベッドはクイーンサイズ。お陰で男ふたりでベッドに入ってもそれほど狭くはない。
遠慮がちに端に横になる宇宙を抱きよせて腕の中に閉じ込める。

和樹 「なぁ、宇宙?これからは、ひとりで泣くな。俺のいるところで泣け。」
宇宙 「え?」
和樹 「だから、俺のいないところで泣くなって言ってるんだ。」
宇宙 「・・・はい。」
和樹 「俺が心配だから。」
宇宙 「わかりました。」
和樹 「あと、敬語やめよう。なんだか堅苦しい。」
宇宙 「はい。・・・あ、うん。」
和樹 「少しは甘えることを覚えなさい。」
宇宙 「は・・・うん。」
和樹 「寝るぞ。」
宇宙 「おやすみなさい。」

俺は宇宙のおでこにキスをした。

和樹 「あ、それと・・・演技じゃ・・・なかったぞ。」
宇宙 「えっ!?」
和樹 「おやすみ。」

俺は起き上がろうとした宇宙の頭を押さえこみ、強く抱きしめた。
しばらくすると、宇宙の規則正しい寝息が聞こえてきた。
なんだかんだ、気を張って疲れていたんだろう。やっぱりまだ19歳だな。
しかし、俺は宇宙が相手だと、なんだか柄にもないことばかりしているな・・・。



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<和樹くん、未知なる宇宙の謎に挑む!?>

俺は休日だというのに、早起きをして朝からずっとそわそわしている。
今日は俺の部屋に宇宙が引っ越してくる。とは言っても、ここは楽園の寮で、普通のマンションだし、2LDKでもともとふたり部屋だったのだ。前の住人が出て行ってから1年近く一人で住んでいた。
だから、新しい住人がやってくることに異論はなく、俺は性格的にも別に人と一緒でもあまり気にならないのだが、相手が宇宙だと思うとなんだか落ち着かない。

俺は、リビングのソファに腰を下ろし、コーヒーを飲みながら、宇宙との撮影を思い出していた。
<宇宙くんのセックスの相性、理想と現実>参照

翔  「和樹いるか?入るぞー。」

ここは楽園の自社ビル内の寮なので、俺は普段から玄関のカギはかけていない。
翔は、この部屋にもよくくるので、勝手にあがってくる。

和樹 「あぁ、翔?どうした?」
翔  「どうしたじゃないよ。宇宙くん連れてきた。」
宇宙 「おじゃましまぁす。」

俺は、慌てて立ちあがった。

和樹 「あっ、あぁ、いらっしゃい。」
翔  「なんだそれ?緊張してる?」
和樹 「ばっか。思ったより早かったからビックリしただけだ。」
翔  「そう?宇宙くんの部屋はこっちだよな?」
和樹 「あぁ。家具も揃ってるし、そのまま使えるんじゃん?」
宇宙 「わぁ、広くて綺麗ですね。」
翔  「一応、部屋には鍵ついてるから、あのおじさんに襲われそうになったら部屋に逃げ込んでね。」
和樹 「こらー。襲わねーよ。マリンさんみたいなこと言うなっつーの。」
翔  「はははっ。個室以外は共同スペースだから、相談していいように使って。」
宇宙 「はい。ありがとうございます。」

それから宇宙の荷物を部屋に運びこんだ翔は、忙しそうに部屋を出て行った。
シーン・・・・・。
宇宙は部屋で荷物を解いている。

和樹 「何か手伝おうか?」
宇宙 「あ、ありがとうございます。でも荷物少ないんでもう終わります。」
和樹 「じゃぁ、終わったらリビングこいよ。」
宇宙 「はーい。」

セックスん時はあんなに全面的に俺に預けてきたくせに、そんなことまるでなかったかのようにドライな感じだ。意外としっかりしていて距離感もある。
「あれは、演技だったんかな?」「んな訳ないよなぁ。」と、ひとりごちる。

宇宙 「あの、食器類は一緒に置いてもいいですか?」
和樹 「好きに使ってくれ。俺はこのコーヒーカップぐらいしか使ってねぇから。」
宇宙 「ホントだ。キッチンピカピカ。僕もコーヒーいただいていいですか?」
和樹 「どうぞ。俺のもおかわり頼む。」

宇宙はキッチンに出しっぱなしになっていたコーヒーメーカーで。2配分のコーヒーを入れてきた。

宇宙 「あ、撮影の時は色々ありがとうございました。あと、これからよろしくお願いします。」
和樹 「あぁ。こちらこそ。まぁ、気楽にいこうな。しかし、荷物少ないな。」
宇宙 「え?・・・はい。これだけ持ち出すのがやっとだったんで。」
和樹 「持ち出す?」
宇宙 「逃げてきたんです。元彼のところから・・・。」

彼氏と一緒に住んでいたが、思い通りにならないと暴力をふるう男で、何度別れ話をしても別れてくれない危ない奴らしい。その辺りを、マリンさんに相談したら翔が色々手配してくれたそうだ。
なるほど、それで急にこの部屋になったわけね。ここはセキュリティもしっかりしているし、よそ者が入ってくるとは思えないが、万一を考えて一人部屋じゃなくて、ここにしたのね。俺はボディーガードかっての。

宇宙 「あの・・・迷惑じゃなかったですか?」
和樹 「へっ!?別に、もともとふたり部屋だし、お前のせいじゃないだろ?」
宇宙 「あっ、そうですけど。いえ、そうじゃなくて次も和樹さんがいいって言ったこと。」
和樹 「あっ、AV?・・・い、いや、普通に嬉しかったけど?」
宇宙 「本当ですか!?・・・よかった。」

だから、その笑顔。反則なんだってば。さっきまでめちゃくちゃドライな感じだったくせに、急にくりくりの目をキラキラさせちゃって。押し倒すぞ!

和樹 「お前さ、これからAV男優になるつもりなの?」
宇宙 「え?・・・はい。お金が必要なので。」

宇宙はヘアメイクの学校に通っているが、ゲイを両親にカミングアウトしたら勘当されてしまったらしい。それで、ろくでもない男につかまって同棲していたが、そこも逃げ出してきたと。仕送り止められてしまったので、ウリセンして稼いで、優しい彼と出会えたらいいなと思っていたらしい。
なんとも、甘ちゃんな気がしてならないが、ヘアメイクの夢は本気らしく、持ち出した荷物のほとんどはその道具だそうだ。

和樹 「あのさ、この世界そんなに甘くないぞ。アクターになるなら強くならないとな。前回は初めてだったから俺まかせでよかたったけど、次は俺が相手だとしても、宇宙のリードで進行しないといけないし、その後は、相手はどんな奴になるかわからないし、素人の場合もある。出来るのか?」
宇宙 「・・・がんばります。」

宇宙は下を向いてシュンとしてしまった。

和樹 「いや、怒ってるわけじゃないんだ・・・」

俺は何を言ってるんだ。そんなこと俺には関係ないのにな。俺は、宇宙にアクターになって欲しくないのかもいれない・・・。

ちょっと微妙な空気にになってしまったところへ、渚とコウがやってきた。

渚  「おじゃましまーす!宇宙くんの引っ越し祝い、お鍋やりましょう!」
コウ 「おじゃまします。」

渚もコウも、宇宙とは初対面のくせに、渚の人懐っこさとコウの関西のりの明るさで、場の雰囲気は一気に賑やかになった。
料理の準備をするのはコウと宇宙。ふたりとも手なれたもんだ。
俺と渚は自炊なんて、ほとんどしたことがない。

渚  「いい匂いがする。なんだか幸せだね。」
和樹 「久しぶりだな、こういうの。」
コウ 「なんもしとらんふたりが、よう言うわ。」
渚  「だって、やろうとしたらコウが危ないからダメっていうし。」
コウ 「あぶなっかしくて、包丁なんてよう握らせられんわ。」
和樹 「コウは過保護だなぁ。」
コウ 「ええんです。大事な渚の指に傷なんてつけられん。惚れた俺の弱みやけどな。」
渚  「ちょ、ちょっと何言ってんのぉ?」
和樹 「はぁ~ご馳走様。」
宇宙 「ラブラブなんですね。うらやましいです。」
和樹 「お前ら、そんなんでアクター続けられんのか?」
コウ 「ラブラブAVのみで、後はスタッフすることになったんや。」
渚  「コウはカメラで、僕は大学復学してバイトでマリンさんの弟子。」
和樹 「まじか?すげーな。」
渚  「翔くんがここ(楽園)任されたらしくて、いろいろテコ入れ中みたい。」
和樹 「あぁ、そう言えば俺に営業やってほしいって言ってたな。」
宇宙 「和樹さん、営業とか経験あるんですか?」
和樹 「もともと、普通のリーマンだったからね。ちぇっ。その割に最近アクター不足でこき使いやがって。」
コウ 「すみません。俺、渚やないと勃たないんで。」
渚  「んもぉー。余計なこと言わないで。」

鍋を囲んで、和やかな笑い声が響いた。



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