<和樹くん、未知なる宇宙の謎に挑む!?>
俺は休日だというのに、早起きをして朝からずっとそわそわしている。
今日は俺の部屋に宇宙が引っ越してくる。とは言っても、ここは楽園の寮で、普通のマンションだし、2LDKでもともとふたり部屋だったのだ。前の住人が出て行ってから1年近く一人で住んでいた。
だから、新しい住人がやってくることに異論はなく、俺は性格的にも別に人と一緒でもあまり気にならないのだが、相手が宇宙だと思うとなんだか落ち着かない。
俺は、リビングのソファに腰を下ろし、コーヒーを飲みながら、宇宙との撮影を思い出していた。
※
<宇宙くんのセックスの相性、理想と現実>参照
翔 「和樹いるか?入るぞー。」
ここは楽園の自社ビル内の寮なので、俺は普段から玄関のカギはかけていない。
翔は、この部屋にもよくくるので、勝手にあがってくる。
和樹 「あぁ、翔?どうした?」
翔 「どうしたじゃないよ。宇宙くん連れてきた。」
宇宙 「おじゃましまぁす。」
俺は、慌てて立ちあがった。
和樹 「あっ、あぁ、いらっしゃい。」
翔 「なんだそれ?緊張してる?」
和樹 「ばっか。思ったより早かったからビックリしただけだ。」
翔 「そう?宇宙くんの部屋はこっちだよな?」
和樹 「あぁ。家具も揃ってるし、そのまま使えるんじゃん?」
宇宙 「わぁ、広くて綺麗ですね。」
翔 「一応、部屋には鍵ついてるから、あのおじさんに襲われそうになったら部屋に逃げ込んでね。」
和樹 「こらー。襲わねーよ。マリンさんみたいなこと言うなっつーの。」
翔 「はははっ。個室以外は共同スペースだから、相談していいように使って。」
宇宙 「はい。ありがとうございます。」
それから宇宙の荷物を部屋に運びこんだ翔は、忙しそうに部屋を出て行った。
シーン・・・・・。
宇宙は部屋で荷物を解いている。
和樹 「何か手伝おうか?」
宇宙 「あ、ありがとうございます。でも荷物少ないんでもう終わります。」
和樹 「じゃぁ、終わったらリビングこいよ。」
宇宙 「はーい。」
セックスん時はあんなに全面的に俺に預けてきたくせに、そんなことまるでなかったかのようにドライな感じだ。意外としっかりしていて距離感もある。
「あれは、演技だったんかな?」「んな訳ないよなぁ。」と、ひとりごちる。
宇宙 「あの、食器類は一緒に置いてもいいですか?」
和樹 「好きに使ってくれ。俺はこのコーヒーカップぐらいしか使ってねぇから。」
宇宙 「ホントだ。キッチンピカピカ。僕もコーヒーいただいていいですか?」
和樹 「どうぞ。俺のもおかわり頼む。」
宇宙はキッチンに出しっぱなしになっていたコーヒーメーカーで。2配分のコーヒーを入れてきた。
宇宙 「あ、撮影の時は色々ありがとうございました。あと、これからよろしくお願いします。」
和樹 「あぁ。こちらこそ。まぁ、気楽にいこうな。しかし、荷物少ないな。」
宇宙 「え?・・・はい。これだけ持ち出すのがやっとだったんで。」
和樹 「持ち出す?」
宇宙 「逃げてきたんです。元彼のところから・・・。」
彼氏と一緒に住んでいたが、思い通りにならないと暴力をふるう男で、何度別れ話をしても別れてくれない危ない奴らしい。その辺りを、マリンさんに相談したら翔が色々手配してくれたそうだ。
なるほど、それで急にこの部屋になったわけね。ここはセキュリティもしっかりしているし、よそ者が入ってくるとは思えないが、万一を考えて一人部屋じゃなくて、ここにしたのね。俺はボディーガードかっての。
宇宙 「あの・・・迷惑じゃなかったですか?」
和樹 「へっ!?別に、もともとふたり部屋だし、お前のせいじゃないだろ?」
宇宙 「あっ、そうですけど。いえ、そうじゃなくて次も和樹さんがいいって言ったこと。」
和樹 「あっ、AV?・・・い、いや、普通に嬉しかったけど?」
宇宙 「本当ですか!?・・・よかった。」
だから、その笑顔。反則なんだってば。さっきまでめちゃくちゃドライな感じだったくせに、急にくりくりの目をキラキラさせちゃって。押し倒すぞ!
和樹 「お前さ、これからAV男優になるつもりなの?」
宇宙 「え?・・・はい。お金が必要なので。」
宇宙はヘアメイクの学校に通っているが、ゲイを両親にカミングアウトしたら勘当されてしまったらしい。それで、ろくでもない男につかまって同棲していたが、そこも逃げ出してきたと。仕送り止められてしまったので、ウリセンして稼いで、優しい彼と出会えたらいいなと思っていたらしい。
なんとも、甘ちゃんな気がしてならないが、ヘアメイクの夢は本気らしく、持ち出した荷物のほとんどはその道具だそうだ。
和樹 「あのさ、この世界そんなに甘くないぞ。アクターになるなら強くならないとな。前回は初めてだったから俺まかせでよかたったけど、次は俺が相手だとしても、宇宙のリードで進行しないといけないし、その後は、相手はどんな奴になるかわからないし、素人の場合もある。出来るのか?」
宇宙 「・・・がんばります。」
宇宙は下を向いてシュンとしてしまった。
和樹 「いや、怒ってるわけじゃないんだ・・・」
俺は何を言ってるんだ。そんなこと俺には関係ないのにな。俺は、宇宙にアクターになって欲しくないのかもいれない・・・。
ちょっと微妙な空気にになってしまったところへ、渚とコウがやってきた。
渚 「おじゃましまーす!宇宙くんの引っ越し祝い、お鍋やりましょう!」
コウ 「おじゃまします。」
渚もコウも、宇宙とは初対面のくせに、渚の人懐っこさとコウの関西のりの明るさで、場の雰囲気は一気に賑やかになった。
料理の準備をするのはコウと宇宙。ふたりとも手なれたもんだ。
俺と渚は自炊なんて、ほとんどしたことがない。
渚 「いい匂いがする。なんだか幸せだね。」
和樹 「久しぶりだな、こういうの。」
コウ 「なんもしとらんふたりが、よう言うわ。」
渚 「だって、やろうとしたらコウが危ないからダメっていうし。」
コウ 「あぶなっかしくて、包丁なんてよう握らせられんわ。」
和樹 「コウは過保護だなぁ。」
コウ 「ええんです。大事な渚の指に傷なんてつけられん。惚れた俺の弱みやけどな。」
渚 「ちょ、ちょっと何言ってんのぉ?」
和樹 「はぁ~ご馳走様。」
宇宙 「ラブラブなんですね。うらやましいです。」
和樹 「お前ら、そんなんでアクター続けられんのか?」
コウ 「ラブラブAVのみで、後はスタッフすることになったんや。」
渚 「コウはカメラで、僕は大学復学してバイトでマリンさんの弟子。」
和樹 「まじか?すげーな。」
渚 「翔くんがここ(楽園)任されたらしくて、いろいろテコ入れ中みたい。」
和樹 「あぁ、そう言えば俺に営業やってほしいって言ってたな。」
宇宙 「和樹さん、営業とか経験あるんですか?」
和樹 「もともと、普通のリーマンだったからね。ちぇっ。その割に最近アクター不足でこき使いやがって。」
コウ 「すみません。俺、渚やないと勃たないんで。」
渚 「んもぉー。余計なこと言わないで。」
鍋を囲んで、和やかな笑い声が響いた。
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