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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
実在する地名・人名・団体名が登場しても、それは偶然ですので、まったく関係ありません。
また、ここに記されている内容はオリジナルですので
著作権は作者にあります。勝手に使用しないでくださいね。
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俺たちが通されたのは、明智小五郎や金田一耕介がなぞ解きをするような応接室だった。
メイドさんが高級そうな紅茶を淹れてくれたが、今は口をつける気にもなれない。
宇宙は隣で小刻みに震えている。自分の親に会うのにこんなに緊張する子供って、いったい何なんだ。と俺は怒りがこみ上げてきた。
すると、廊下から足音が聞こえてきて、木崎がドアを開けると宇宙の両親と思われるふたりが入室してきた。
俺たちは立ちあがり、一礼した。
父親は宇宙と同じくらいの身長があるが、身体に厚みがあるのでもっと大きく見える。
顔はどこもかしこも角ばっていて、宇宙とは似ても似つかない。
その後を俯き加減についてきた母親は、宇宙とそっくりだ。宇宙を小さくしたような感じ。
宇宙くん、お母さん似で良かったね。

父親 「宇宙、何だその頭は!・・・ところで君は誰なんだ?」

確かにこの雰囲気に、宇宙の金髪は浮きまくっている。
そして当然の様に、父親の視線は俺に突き刺さった。

和樹 「初めてお目にかかります。内藤和樹と申します。今日は宇宙くんの付き添いで参りました。」
父親 「ふん。勝手についてきて、初めて訪問するのにスーツも名刺もなしか?」
和樹 「本日は休日で訪問が急でしたので、私服で失礼いたしました。遅れましたが私、株式会社楽園で企画営業部長をしております。」

俺は、翔に感謝しつつ、今朝無理やり持たされた名刺を父親に渡した。

父親 「木崎。」

父親は、名刺に目を通すこともなく木崎に渡している。まったく何なんだこの人は。
母親が控え目に「どうぞ」と言うので俺たちはソファーに腰を下ろした。

父親 「宇宙、もう東京は懲りただろう。こっちに帰ってきなさい。」
宇宙 「・・・」
父親 「社会勉強をと思って東京に出したが、間違いだったな。男が化粧などに興味をもって、挙句に男が好きだなどと言いだして。私はオカマを育てた覚えはないぞ。」

オカマって・・・。宇宙くんはちゃんと男の子ですよ。ただ恋愛対象が男性なだけです。
お化粧だって自分でするわけではないでしょうに。
そして宇宙は何も言えずに俯いている。

父親 「近々、選挙があるんだ。こちらに戻ってきて木崎についてまずは、秘書の勉強をしなさい。ゆくゆくは私の後を継ぐのだから。」
宇宙 「・・・」
和樹 「宇宙?自分の言いたいことをきちんと伝えないとな。」

宇宙は、潤んだ瞳を俺に向けると、ゆっくり頷いて、父親に向き直った。

宇宙 「父さん。僕、政治家にはなりません。ヘアメイクの勉強をして、綺麗になりたい人のお手伝いをしたんです。僕の手で綺麗になった人の笑顔が見たいんです。」
父親 「何を夢のようなことを言っているんだ。」
宇宙 「それと、女の人を恋愛対象として好きにはなれません。だから、この家を継ぐこともできません。」
父親 「馬鹿がっ!男同士なんて、ただの性欲の捌け口だ。現に痛い目に遇ったのだろう?もう少し大人になれば、女が良くなる。痛い目見れば戻ってくるかと思えばっ・・」
和樹 「あの?・・・まさか宇宙くんの前の彼氏ってお父さんの差し金ですか?」
父親 「だったら何だ?男になど一度懲りれば女の良さがわかるだろう?」
和樹 「いい加減にしてください。あなたの差し金で自分の息子がどんな目に合わされたかわかっているのですか?」
父親 「何を!?」

俺は宇宙を立たせて後ろを向かせシャツをめくった。

和樹 「この傷や痣は、あなたが送り込んだ男にやられたものです。」
父親 「!?・・・木崎っ!!どういうことだ!?」
木崎 「は、はい。」

木崎が父親の所に走り寄ると同時に、廊下が賑やかになり、バンッ!とドアが開いた。
そこには、これまた父親をミニマムにしたような女性が立っている。姉貴だな?

姉  「お父様!いい加減にしてくださいっ!」
宇宙 「お姉ちゃん。」
父親 「瑠璃子!行儀が悪いぞ。来客中だ。」

お姉さんは、父親の言葉など無視して宇宙に近づき、背中の傷を見るとシャツを下ろして座らせ抱きしめた。事情はほぼわかっているようだ。

姉  「お父様が木崎に命令したの?」
父親 「・・・」
姉  「馬鹿ね。木崎は宇宙が好きなのよ。宇宙を自分のモノにするためなら何だってするわ。」
木崎 「る、瑠璃子様。」
姉  「そうでしょう?あなたから逃げるために宇宙はこの家を出たのよ。」
父親 「木崎?」
姉  「まったく、お父様の目は節穴ね。」
父親 「うるさい!!出て行け!!お前たち、みんな出て行け!」
母親 「いいえ。出て行くのはあなたです!!」

ずっと黙っていた母親が、腹の底から声を出して言葉を発した。
そこにいた全員が言葉を失い、母親に指をさされた父親に注目していた。

母親 「この家は、瑠璃子に継がせます。あなたは、瑠璃子に指導できますか?できないのなら出て行ってください。」
父親 「な、何を言っているんだ?」

母親の毅然とした態度に、一同が生唾を飲み込む。
そもそも、この家は母親の実家だそうだ。そう、父親は婿養子だったのだ。
父親は、この大地主で旧家である妻の家で威厳をもちたくて、時代錯誤なことを言ってきたのかもしれない。
後はこの家の問題だ。俺は、静かに立ちあがって宇宙を見つめた。

和樹 「宇宙?宇宙はここに残るか?それとも俺と一緒に帰るか?」

これからのことは、宇宙が自分で決めなければならないんだ。
宇宙は立ちあがると、ゆっくりと全員の顔を見渡し、最後に俺を見つめた。

宇宙 「僕は、和樹さんと帰ります。」
和樹 「そうか。それでいいんだな?」
宇宙 「はい。」

宇宙は、迷いのない目をしている。俺が右手を差し出すと宇宙は左手を乗せて握ってきた。

母親 「内藤さん?宇宙をよろしくお願いいたします。ここは宇宙には少し生きにくい場所です。田舎ですから。」
姉  「あっ。でもいつか私が、宇宙が帰ってきても差別的な目でみられないような街にするから。」
宇宙 「うん。僕、ちゃんと夢を実現できるように、がんばります。」
和樹 「息子さんを、お預かりします。」

母親と姉とは打って変わって、父親と木崎は脱力してしまっている。
いざとなると、女は強い。
俺たちは手をつないだまま、その部屋を後にした。

車に乗り込むと、俺は大きく深呼吸をして、宇宙の頭を撫でた。

和樹 「帰るぞ。」
宇宙 「うん。和樹さん、ありがとうございました。」
和樹 「俺は、何もしていない。宇宙が自分で考えて決めたことだ。」

俺たちはにっこりとほほ笑みあった。
俺はやっぱり、笑った時のこの宇宙のくりくりとした大きな垂れ目が好きだ。
好きだ・・・?
垂れ目が・・・?笑顔が・・・?宇宙が・・・?



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