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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
実在する地名・人名・団体名が登場しても、それは偶然ですので、まったく関係ありません。
また、ここに記されている内容はオリジナルですので
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朝、目が覚めるとベッドには既に宇宙の姿はなかった。
のろのろと起きだしてリビングに行くと、宇宙がキッチンに立っていた。

宇宙 「あ、おはようございます。」
和樹 「おう。おはよ。眠れたのか?」
宇宙 「はい。ぐっすり。ありがとうございました。」

くりくりの大きな垂れ目をキラキラさせている。朝からこの笑顔、たまんねぇなぁ。

和樹 「いや、俺の為だからあれは・・・。」
宇宙 「え?」
和樹 「いや、何でもない。何作ってるんだ?」
宇宙 「あ、昨日の残りもので朝食を。もう出来るので一緒に食べましょ。」
和樹 「あぁ。ありがとう。お前、今日学校行くのか?」
宇宙 「あ、はい。」

宇宙の目が少し泳いで不安な顔になる。きっとまだ元彼のことが怖いはずなんだ。

和樹 「じゃぁ、車で送って行く。」
宇宙 「え?そんな・・・。」
和樹 「A俺に送ってほしい。B俺に送ってほしくない。どっち?」
宇宙 「え?」
和樹 「送ってほしくないの?」

宇宙は大きく首を横に振った。

和樹 「なら、送って行く。遠慮はいらない。宇宙がどうしたいか、はっきい言って。」
宇宙 「あ、・・・和樹さんに、送ってほしいです。」
和樹 「よし。お前、自分の気持ちを言わな過ぎる。我慢ばかりするな。何でも話せ。俺に出来ることならしてやるし、相談にものる。ただ、何事も決めるのは自分だから。俺がたとえ何を言っても、最後に決めて行動するのはお前自身だからな。」
宇宙 「はい・・・?」

宇宙は少しきょとんとしていたが、笑顔でうなずいた。
俺は夕べ、宇宙の寝顔を見ながら考えていた。きっと宇宙は今まで人の顔色を見て、自分を押し殺して生きてきたのだと思う。もう自分の手を噛んで声を殺してひとりで泣くようなことだけはさせたくないと思ったのだ。

一緒に朝食を取った後、俺は会社の車を借りるため事務所に向かった。

翔  「おはよう。あれ?和樹、早いね?」
和樹 「おはよう。ああ、宇宙を学校に送って行く。車貸して。」
翔  「やっぱり、心配?」
和樹 「ああ。あいつ、手首に拘束の痕あるし、背中は傷と痣がいっぱいなんだ。」
翔  「えぇ!?和樹、早速やっちゃったの?」
和樹 「はぁ?やってねぇよ。」
翔  「だって、なんで背中の傷とか知ってるんだよ?」
和樹 「ばっか、あいつ夕べひとりで泣いてたんだよ。心配になってシャツをめくって見たの。」
翔  「ふぅーん。なんだかすっかり保護者だな。」

翔はまだ少し疑っているみたいだったが、社用車を貸してくれた。
しかも新車で、俺が営業OKした時の為の車だとか言っている。まだ返事もしていないのに、すっかりそのつもりだ。更にもう名刺を作ったらしい。無理やり持たされた。
肩書きは「企画営業部長」。まったく気が早いな。まぁ、考えてはいるんだけどね。

宇宙を車に乗せて学校に到着すると、門の所には、到底学校とは似つかわしくない黒塗りの車とその横にスーツ姿の男が立っている。
そいつが視界に入ると、宇宙は急に落ち着かない様子になった。

和樹 「どうした?・・・まさか、元彼?」
宇宙 「違う。・・・父さんの秘書。」
和樹 「とうさんのひしょ・・・?」

俺は、一瞬意味がわからなかった。宇宙は何を言っている?

宇宙 「僕の父親は、地元の議員なんです。その秘書の木崎です。」
和樹 「はぁ。お前ってホント、次から次へと謎の多い奴だな。」
宇宙 「え?そうですか?」
和樹 「で、その父さんの秘書が、どういてここにいるんだろうな?」
宇宙 「わかりません。」
和樹 「じゃぁ、取りあえず話を聞いてみないとな。」

俺たちが車から降りると、その秘書の木崎とやらが、走り寄ってきた。
どうやら、宇宙を連れ戻しに来たらしい。勘当したんじゃなかったのか?
急に次の選挙が決まったらしく、父親がどうしても長男である宇宙に応援させて顔をつなぎ、ゆくゆくは後を継がせたい考えらしい。
力ずくでも宇宙を連れ戻す算段らしいので、この際、話をつけた方がよさそうだと俺は判断した。

和樹 「宇宙、一度、きちんと親父さんと話をしてみろ。このまま逃げてはいられないし、自分が本当にやりたいことを、しっかり伝えるんだ。」
宇宙 「え?・・・あの・・・そう・・ですね。」
和樹 「ん?」
宇宙 「あ・・・和樹さんも、一緒に来てもらえませんか?」
和樹 「ああ。もちろん一緒に行くさ。」

俺は、宇宙が自分から俺に、一緒に来てほしいと言ったことが嬉しくて笑顔で答えた。
もちろん、頼まれなくても宇宙を一人で行かせるつもりはないけどな。

自分の車に乗せると言う木崎をねじ伏せて、無理やり宇宙を俺の車に乗せて走り出した。
宇宙の実家は都心から車で3時間ほどの所にあるそうだ。結構なドライブコースだ。
温泉街の地主の旧家らしい。
親父さんは、未だに男尊女卑の時代錯誤な考えの人で、長男である宇宙を厳しく育てたそうだ。
「男は泣くな」・・・それでか、宇宙があんな風にひっそりとひとりで泣くのは。
「長男が跡を継ぐ」・・・と言うことで、議員を継がせたいそうだが宇宙は政治にまったく興味はない。更にゲイである。女性と結婚して子供を授かり、その家と政治家としての地盤を代々継いでいくなどとは難しいことと思える。
宇宙には3つ年上のお姉さんがいるそうで、こちらは宇宙と全く逆の性格で、ものすごく活発で将来は政治家になりたいらしい。
なら、お姉さんに継がせればまるく収まるもんだと俺などは思ってしまうのだが、親父さんとしては、女は家を守り子を産み育てるべし。というわけだ。
宇宙の話を聞いているだけで頭が痛くなってくる
そんな頑固な親父さんをどう説得するか、これは結構難しいかもしれないな。

俺は途中休憩場所から、翔に電話を入れて事情を話した。
何かあれば、駆けつけると言っている。この車GPSが付いているらしい。まじか?

宇宙の生い立ちを聞いていたら、思ったよりも随分早く実家に着いた。
門をくぐっても更に車で進んでいくとやっと大きな屋敷が見えるくらいの広い敷地だ。
庭は日本庭園でも思わせるような自然がいっぱいで池などもあったりして、宇宙はまさにお坊ちゃまだったのだ。

和樹 「うわぁ~でかい家だな。」
宇宙 「・・・」

宇宙は既に緊張で、カチカチになっていた。
車を降りると、木崎に案内されて、お屋敷に足を踏み入れた。
本物のメイドさんがいる!?
結実香ではない、本当に清楚なメイドさんが応接室に案内してくれた。
流石の俺も、少し脚がすくんだ。



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