【別冊:まだ見ぬ景色】5 ~その頃、このふたりは・・・?~
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彰仁が部屋を飛び出していった後、湊は後悔の念に苛まれていた。
上気した頬を赤く染めて俯く彰仁が可愛くて抱きしめた。密着すると彰仁の少し早くなった鼓動を感じて愛しさがこみ上げた。その愛らしい唇に触れたくて・・・そして、触れたらもう止められなかった。
「何してんねん。あほや。天使の笑顔奪って・・・ほんまあほや。」
目に涙をいっぱいためて、唇を噛んで震えている彰仁の顔が脳裏にこびりついて離れない。
「僕んこと、好きやったって・・・過去形で言われてしもた。・・・最悪やな。」
湊が眠れぬ夜を過ごした翌早朝、紫苑がベースを取りに来た。
昨日の光の様子を聞くと、やはり酷かったようだ。それでも紫苑は冷静だ。
高校生なのに、しっかりしている。でも、それだけ苦労してきたということなのだろう。
光は自分のせいで亮太が死んだと思っている。でも、湊もまたその責任を感じていた。
その頃の湊は何よりライブが大切だと思っていた。
大阪での自分達の知名度は高かったし、ライブを飛ばすなんてことは考えられなかった。
直接亮太に言ったわけではなかったが、湊はライブを成功させるために、亮太に卓哉を迎えに行って欲しいと思っていたのだ。
紫苑の手前、客観的な話し方をしたが、自分の心の中もまた荒波にもまれる小舟のように揺れていた。
「僕もクリと同じや・・・アキの気持ちが自分と同じになるまで待てんかった・・・」
帰り際、紫苑が暫く練習を休みたいと言ってきた。何か思うところがあるようだ。
湊も、少し彰仁と距離を置かなければと考えていたので、新曲制作という理由でメンバーに暫く練習は休むことを伝えたのだった。
しかし、その日の午後、光がびっくりするほど顔を腫らしてやってきた。
自分もキャパオーバーな位悩んでいるくせに、湊の様子がいつもと違うことに気づく光に湊は少し癒されていた。
「ほんま、気い使いしぃやな。さすがLumie`re (リュミエール)のリーダーや。」
湊がそんなことを想っていると、光が唐突に聞いてきた。
光 「なぁ、湊はいつから男の子好きやったん?」
「どんなタイミングでこの質問やねん!」
光が夕べの自分と彰仁のことを知っているとは思えなかったが、あまりのタイミングの悪さに湊も動揺を隠せなかった。
よくよく話を聞けば、どうやら光は紫苑に魅かれているようだった。
「誰かを好きになる言うことは、幸せやけど切ないな・・・」
それから湊は曲作りに没頭した。
何度か彰仁に電話やメールをしたが、返事がくることはなかった。
その頃彰仁は、Lumie`re (リュミエール)の練習もなく曲作りをすることもないので、大学の友達に誘われるままに合コンに参加していた。
とにかく新しい彼女をつくろう。自分の気持ちを確かめることが怖くて、湊のことを考えることからただ逃げたかったのだ。
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