【別冊:まだ見ぬ景色】3 ~その頃、このふたりは・・・?~
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雷にトラウマがある光は、屋外にいる時に雷と出会ってしまうと、かなりの確率でパニックになってしまう。しかも重症だ。
今日も、メンバーで慌てて探したが、運良く紫苑が見つけて家まで送り届けてくれた。
湊はライブハウスに置き去りになっていた紫苑のベースを彰仁に持たせ、自分のキーボードを持って車で家に帰ってきた。
実は湊も、雷雨は苦手だった。
バンドメンバーだった栗林亮太と柿崎卓哉の死は、湊の心へも大きな影響を及ぼしていたのだ。
笑い上戸でいつもクールな湊だが、雷の日は憂鬱になる。そして精神状態が少し不安定になるのだ。
「ももんこと見つけたんが紫苑くんで、ほんま良かった・・・。」
パニックになっている光を見るのは辛かった。特に今日は、たまたま紫苑とその話をしていたので、いつも以上に思い出してしまっていたのだ。
もし自分が見つけていたら、光の心の揺れをダイレクトに受け取ってしまい、耐えられなかったかもしれない。
湊は、マンションへ到着して楽器を部屋へ運ぶと、リビングのソファーに深く腰掛けて、ため息をついた。
彰仁がバスルームからタオルを持ってきて、湊に手渡した。
彰仁 「今、お湯入れてるから。髪、濡れてるからこれで拭いてね。」
湊 「あぁ、ありがとう。」
彰仁 「元気・・・ないね?」
湊 「ん?・・・ちょっと疲れただけや。」
湊はタオルを受け取ると、彰仁の手首をとって隣に座らせた。
湊 「・・・アキもゆっくりしい。」
彰仁 「うん。・・・タオル貸して。拭いてあげる。」
彰仁はいつもと違って気だるい雰囲気の湊に、なんだかドキドキしてしまって落ち着かなかった。
視線を合わせられず、湊が手に持っていたタオルを少し強引に取ると、俯いたまま長い黒髪の先をタオルで挟んで押しながら水分を拭き取って行く。
「もう、祥くん色っぽすぎるよ。・・・っていうか、ドキドキしちゃう俺って何?」
彰仁 「も、ももくん、大丈夫かな?」
湊 「ん?・・・紫苑くんと一緒やから大丈夫やろ。」
彰仁 「そっか。紫苑くんって、高校生なのにしっかりしてるよね。」
湊 「・・・そうやな。」
彰仁 「ベースもすごい上手だしかっこいいし、頼りになるっ・・・・!?」
湊 「アキ・・・」
湊に名前を呼ばれ顔を上げた瞬間、ふわりと抱きしめられた。
彰仁は一瞬のことで、何が起きたのかわからず硬直していると、湊の長い腕に力が入り更に身体が密着した。
彰仁 「祥くん・・・?どうしたの?」
彰仁の心拍数が一気に上がる。
「祥くんのスキンシップはいつものこと・・・だけど、今日の祥くんは色っぽくて、なんだかいつもとちょっと違う・・・」
湊 「・・・アキも紫苑くんことが好きなん?」
湊は彰仁の首に顔を埋めたまま、くぐもった声で言う。
彰仁 「えぇ?何言ってるの?好きって・・俺、女じゃない・・・し・・・」
次の瞬間、湊の細くて長い指が彰仁の顎を、クイっと軽く上げると唇を塞がれていた。
「え?・・・えぇ!?・・・何これ?・・・・キス・・・キスされてるの?」
彰仁の頭の中はパニックになっていたが、その優しくも情熱的な湊のキスに、全身が痺れて力が入らない。
湊の舌が彰仁の少し厚みのある唇をなぞるように舐め、口腔内に侵入しあちこち舐めまわして舌を絡める。
彰仁が放心状態になっている間に、いつの間にかソファーに押し倒されていた。
そっと唇が離れ、彰仁が恐る恐る瞼を開くと、湊が真上から彰仁を見つめていた。いつもは涼しげなその切れ長の目が少し潤んで熱を帯びている。
彰仁 「・・・なん・・で?」
湊 「・・・」
長い髪がパラリと落ちて、彰仁の頬をくすぐる。
湊は何も答えず、指先で彰仁の唇をなぞると、またその唇を塞いだ。
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