<ライブハウス・夕方>
湊と紫苑は地下にあるライブハウスの店内にいたので、外の天気の変化にまったく気付いていなかった。
湊 「なんや、今日そんな予報やったか?」
晴樹 「はずれるのが天気予報や!それより、はよもも見つけな。さっきから電話も繋がらん。」
湊 「そうやな。」
紫苑 「あの?」
晴樹 「俺、バイト先の方探してみるわ。」
湊 「頼む。」
紫苑は、どうして湊と晴樹がこんなにも慌てているのかわからなかった。
湊 「紫苑くん、ももな、雷ん時パニック起こしてしまうねん。いつもってことはないねんけど、外にいるとかなりの確率で。」
紫苑 「パニック?」
湊 「さっき話した・・・クリ達が事故ったとき、すっごい雷やってん。それで。」
紫苑 「・・・俺も、探します。」
湊 「頼むわ。僕は学校の方行くから、紫苑くんももん家知ってるな?」
紫苑 「はい。」
湊 「ほな、そっち方面頼む。」
階段を駆け上がると、彰仁が丁度到着したところだった。
湊は彰仁に、光がたどり着いた時の為にここで待機するよう話して、ふたりは店を飛び出した。
<街・夕方>
まだ雨は降りだしていなかった。
真っ黒な重たい雲が広がり、稲光と雷鳴が遠くから聞こえていたが、時折その音が大きくなる。
紫苑は光の家の方向へ走った。家々の軒先やビルの合間などの人影を見逃さないよう慎重に光の姿を探した。
そして息も上がり、ポツポツと大きな雨粒が落ち始めたころ、やっとその姿を見つけた。
光は民家の庭先にある背の低い木の根元に、膝を抱えて座り込んでいた。
その姿はまるで捨て猫のようで、紫苑はその前に膝をつき思わず抱きしめた。
ビクリと肩を震わせ、紫苑を見たがその目は朦朧とし唇は紫色になっている。
紫苑 「大丈夫ですか?」
光 「あぁ・・あぁ・・・あっ・・・はぁ・・・あぁぁ・・・」
何か言おうとするが、呼吸ができていない。過呼吸か。
身体は小刻みに震えている。
紫苑は抱きしめた光の背中をゆっくりさすった。
紫苑 「ゆっくり呼吸して。大丈夫だから。」
光 「んんっ・・・はぁ・・・あぁ・・・あっ・ぁつ・・」
紫苑 「ゆっくり、ゆっくり息を吐いて。」
くそっ。
紫苑は自分の唇で光の口を塞いで、1,2と数え離れると背中をさすった。
紫苑 「ゆっくり吐いて。・・・そう。吸って」
光が息を吸うと唇を塞ぎ、1,2と数えて離れ背中をさする。
そんな動作を何度か続けていると、光の呼吸がだいぶ落ち着いてきた。
しかし雨脚はどんどん強くなり、雷の音も近付いてきている。
光 「しお・・ん・・・」
紫苑 「はい。呼吸できてますか?」
光はコクリと頷く。顔色も少しよくなったようだ。
紫苑 「歩けますか?どこか雨宿りできるところに移動しましょう。」
光 「あ・・・柚子が・・・」
紫苑 「はい?柚子がどうしました?」
光 「逃げて・・・もうて・・・みつ・・からん・・・」
紫苑 「ふぅ。わかりました。後で俺が探しますからまず避難しましょう。」
光 「・・・」
紫苑 「大丈夫です。家に帰ってるかもしれませんよ?」
光 「ほな・・・家に・・かえ・・る。」
紫苑 「あぁ、もうわかりました。じゃぁ帰りましょう。」
まったく、なんなんだこの人は。今は柚子より自分だろ。
紫苑はそう思いながらも、取りあえず光発見の一報を湊にメールしてから、光を支えて立ちあがった。
光のアパートに向かう途中、何度も稲光に身体を震わせ雷鳴に首をすくめる光を、紫苑はしっかり抱きしめながら歩いた。
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