彰仁 「な、何?」
彰仁は突然目の前が真っ暗になり、温かい腕に抱きしめられて驚いた。
すぐ後ろから階段を登ってきた湊に、片手で目隠しをされ抱き寄せられたのだ。
湊 「しっ。静かに。」
彰仁 「んっ・・・。」
視界を遮られ少し敏感になっている彰仁の耳元で湊が囁いた。
彰仁は顔を真っ赤にして俯いている。
晴樹 「なんや、出るタイミング逃したなぁ。」
湊 「ほんまやな。くくっ。そやけど、ええもん見させてもろたわ。」
晴樹 「どうせまた、ネタにするんやろ?」
湊 「ももが、顔真っ赤にして怒ってる姿が目に浮かぶわ。くくくっ。」
ふたりの視線の先には、西からオレンジ色のスポットライトを浴びて重なる光と紫苑のシルエットがあった。
彰仁 「えぇ?何?どうしたの?」
湊 「アキはええねん。」
湊は後ろから彰仁を抱きしめたまま、耳元で囁き、その耳朶を甘噛みする。
彰仁 「んんっ。・・しょ、祥くん・・何してんの。もう。」
彰仁は身体を捩って逃れようとするが、そのままくるりと回転させたれ湊の胸にすっぽりと抱きしめられてしまった。
晴樹 「ふっ。・・・っていうか、そこはそこで何しとんねん。」
湊 「キスシーン見て発情しとんねん。くくっ。」
晴樹 「ぷっ。メンバーいちクールな湊の発言とは思えんな。今日はあかんで。」
湊 「明日ライブやからな。くくくっ。」
最近湊は良く笑う。もともと笑い上戸ではあったが、この頃は切れ長の目を始終細めている。
彰仁 「もう、何?なんの話?」
晴樹 「静かにしとかんと、今度は口塞がれるで?」
彰仁 「えっ?えっ?」
湊 「くくくっ。」
明日Lumie`re (リュミエール)がライブをする会場へ下見に来ていた湊と晴樹と彰仁は、地下にある楽屋の見学をしてステージに上がっていたところだった。階段を登りきる手前の舞台袖で客席にいる光と紫苑に気づいたのだ。
紫苑 「そろそろ、出てきてください。」
光を胸に抱いたままの紫苑が、突然上を向いて低く響く声を出すと、3人は肩をビクリと震わせた。
晴樹 「なんや、気づいとったんか。」
紫苑 「気づきますよ。」
ステージに上がってきた3人をみて驚いているのは光だった。
光 「な、なんやねん。みんな来とったんか?」
彰仁 「なんだぁ、ももくんと紫苑くんじゃん。来てたんだね。」
光 「お、おう。今、来たんか?」
彰仁 「結構前に来てたよ。楽屋見てきたんだ。」
光 「!?」
光と紫苑も客席からステージにあがった。
光は彰仁の隣で、ニコニコと目尻を下げている湊を見て悟った。
光 「いつから、みとった?」
晴樹 「なんも、みとらんで?」
光 「うそをつくな。」
湊 「そうやな。『紫苑は不安とかないんか?』・・・あたりからやろか?」
光 「・・・」
光は下を向いて真っ赤になっていた。
紫苑 「そういうことですから。」
湊 「僕らの音を信じてる、ちゅうことやな?」
紫苑 「はい。」
晴樹 「俺らもそうやで。」
湊 「紫苑くんの音を信じとる。」
紫苑 「はい。」
見られとったんか。・・・見られてしもたんか。・・・バレバレっちゅことか・・・。
光は恥ずかしさのあまり、俯いたまま頭の中がぐるぐるとしていた。
光 「なぁんで、はよ声かけんねん!」
晴樹 「そんなん、声掛けられるかっ。」
湊 「かけられへんやろ、アツアツのちゅー・・・」
光 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ」
彰仁 「な。なに?」
光 「なんでもあらへん。」
彰仁 「ちゅう?」
湊 「なに?アキはちゅうしたいん?」
彰仁 「うわぁ!」
するりと逃げ出す彰仁を湊が追いかけて、まだ機材もない広いステージ上を走り回る。
晴樹 「湊って、あんなキャラやったやろか?」
紫苑 「人は恋をすると変わるんじゃないですか?」
光 「・・・」
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