光 「なぁ。・・・ほんまに明日ここで、俺らライブするんやろか?」
紫苑 「何を今更。」
光 「そんなこと言うたかて・・・。」
光と紫苑は都心にある野外ライブ会場へ来ていた。
そこは、名だたるアーティスト達がライブをして、数々の伝説を残していった場所だった。
光 「ここでライブ出来るやなんて夢みたいや。」
紫苑 「・・・そうですね。」
光 「ここから、始まるんやな。」
紫苑 「はい。」
光 「・・・みんな来てくれるやろか。」
夕陽が光の頬をオレンジ色に染めていた。
紫苑は少し目を細めて光を見つめる。
紫苑 「莉薗のことです。採算が取れない仕事はしない。」
光 「確かに。莉薗ちゃんの敏腕っぷりにはびっくりやったわ。」
紫苑 「あいつが一番、神宮寺の血を継いでますから。」
ひと月前、大阪にいたふたりに莉薗から呼び出しがあった日、結局ふたりはすぐには東京に戻らなかった。翌日何食わぬ顔でのんびりと帰ったのだ。
その時には既に、先に戻っていた湊と莉薗で今回のライブを決めていた。
光は湊に任せれば良いと思っていたし、紫苑は莉薗に任せれば良いと思っていたから。
その日、光と紫苑は改めて栗林亮太の墓参りをしてきたのだ。
光 「な、なんで亮太の墓に行くんや。」
紫苑 「報告。」
光 「報告?・・・報告ってなんやねん。なんの報告やねん。」
大阪見物をした後、紫苑は光の手を引いて栗林亮太の墓に向かった。
光は抵抗したが、紫苑はその細い手首を掴んで半ば強引に連れて行った。大股で石階段を登る紫苑に手を引かれ、光は小走りに駆けあがる。
丘の上の墓地に着くと、紫苑は亮太の墓までゆっくりと真っ直ぐに進み、深呼吸をした。
紫苑 「もう。・・・もう、光さんを解放して下さい。」
光 「し、紫苑!?」
紫苑 「光さんは、俺が守ります。」
光 「・・・」
紫苑 「今日は、報告に来ました。・・・俺が、光さんを幸せにします。」
光 「!?」
紫苑 「俺が、光さんと一緒に。・・・Lumie`re (リュミエール)でてっぺん目指します。」
光 「紫苑・・・。」
真剣な眼差しで、墓石に向かって話す紫苑の横顔を、光はただ見つめていた。
紫苑 「だから・・・。だからもう、安心して下さい。」
光は、その視線を紫苑から墓石に移すと深呼吸をした。
光 「りょ、亮太。・・・そういう訳やから。・・・俺、もう大丈夫やから。」
紫苑 「光さん・・・?」
光 「俺、・・・紫苑が好きやから。Lumie`re (リュミエール)が好きやから。・・・だからもう、大丈夫や。・・・亮太。・・・ありがとう。」
紫苑 「光さん。」
光と紫苑の耳には、遠くで雷鳴が聞こえたような気がした。
ふたりは見つめ合い唇を重ね合う。お互いの気持ちを確かめ合い、亮太に伝える為に。
莉薗が、Lumie`re (リュミエール)の為に、音楽事務所を立ち上げた。もちろん神宮寺グループとして、神宮寺が全面バックアップしてなのだが。神宮寺が莉薗の経営の才能を認め、その第一歩として任せたのだ。
明日、Lumie`re (リュミエール)がライブをする会場は、果てしなく広く静かだった。
紫苑は光を抱き寄せると、こめかみに口づける。
紫苑 「大丈夫です。光さんはその声を届ければいい。想いのままに。」
光 「紫苑・・・。」
光はまっすぐに紫苑を見上げると、その紫色の瞳を覗き込む。
光 「紫苑は、不安とかないんか?」
紫苑 「ありません。」
光 「ほんまに?」
紫苑 「はい。俺は、光さんの声とLumie`re (リュミエール)の音を信じてますから。」
光 「紫苑・・・。」
夕陽に照らされ、光と紫苑のシルエットが重なり合った。
※拍手&ランキングバナーをポチっとしていただけたら嬉しいです♪
↓
小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村
コメントの投稿