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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
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8月最後の週末、Lumie`re (リュミエール)のメンバーは、東京に戻った紫苑の代役に暁を迎えて、ライブを無事に終了した。もちろん雅紀も一緒に来ていたので、光とのツインボーカルで盛り上げた。
そして、いつものようにライブ後の打ち上げだ。

全員 「かんぱーい!」
湊  「色々あったけど、なんやあっという間の1カ月やったな。」
晴樹 「そうやな。ライブできてよかったな。新曲もほぼ完成したしな。」
梨里香「もう、夏休み終わりやなぁ」
彰仁 「俺らはまだ休みだけどね~。」
梨里香「大学生、ずるいわぁ。」
暁  「高校生は夏休み終わりなんだね。紫苑くんどうするんだろ?」
湊  「明日、お父さんが退院らしいから、大丈夫なんやないか?」
雅紀 「百瀬、よかったな。」
光  「ん?・・・うん。」
雅紀 「なんだ、あんまり嬉しそうじゃないね。」
光  「そんなわけないやん。紫苑にはよ会いたい思ってるわ。」
暁  「ラブラブだね~。」
光  「お前らもな。」

光は紫苑が東京に行ってしまってから、ぼーっとすることが多かった。
紫苑に会いたい、抱きしめられたい、一緒にいたい。だけどその気持ちの根源が自分の中のどこにあるのか。紫苑を欲するのは本当に心なのか?それとも身体なのか?
愛なんてなくてもセックスはできる。精処理の為に好きでもない相手とでもできてしまうのだ。自分の欲望の為に手段を選ばず、好みの相手を好きにしようとする奴らもいる。

光は紫苑に抱かれ気を失うほどの快感に支配された自分が、どこか不純であるような気がして仕方がなかったのだ。

紫苑は俺を愛してると言った・・・。俺は?俺のこの気持ちはほんまに紫苑と同じなんやろか?俺は紫苑を・・・愛してる?

光は答えの出ない質問を自分にしつづけていた。

打ち上げは今日のライブのことや音楽の話で盛り上がっていた。光もその輪に入り、笑った。八重歯を見せて得意の笑顔で。

湊  「ももはどうする?」
光  「ん?何が?」
湊  「なんや、話し聞いとらんかったんか?」
光  「すまん。」
湊  「僕ら、梨里香送るんで、明後日ここからそのまま大阪行くつもりなんやけど、ももはどうする?言うたんや。」
光  「ハルもアキも行くん?」
晴樹 「久しぶりに実家に顔だそうか思ってな。」
彰仁 「俺は暇だから、大阪見物~♪」
光  「そうか。」
暁  「東京帰るなら、俺送ってくけど?」
光  「ん・・・。俺も、実家帰ろうかな?しばらく顔見せとらんし。もうすぐ・・・。」
湊  「・・・そうやな。」

もうすぐ、クリとタク・・・栗林亮太と柿崎卓哉の命日だ。
そして何より光は、紫苑と会う心の準備ができていなかった。

ちょうど会話の途切れたタイミングで軽快な音楽が流れた。梨里香のスマホの着信音だ。

梨里香「あれ?莉薗さんや。・・・はい。・・・はい、テレビですか?はい。わかりました。あっ、ちょっと待って下さい。お兄ちゃん、莉薗さんが代わってって。」

梨里香はそう言うと、スマホを湊に渡してテレビの電源を入れた。リモコンでパチパチとチャンネルを変える。

湊  「そこや、ニュースんとこ。」
梨里香「ん?・・・ここ?」

『・・・先週、熱海の海岸で発見された身元不明の遺体は、東京都世田谷区の音楽プロデューサー、岸谷正臣さん46歳と判明しました。死因は海水を多量に飲みこんでの溺死ですが、頭部に打撲痕があることから、事故、自殺の他、他殺の可能性も視野にいれて捜査中とのことです。』

湊  「・・・なんでや?・・・どういうことや?」

誰に問うでもなく、湊は呟いた。
そして、全員の視線がテレビ画面にくぎ付けになった。

雅紀 「・・・殺されたのかも・・・。」

雅紀がゆっくりと視線を湊に向ける。

湊  「何か知っとるんか?」
雅紀 「俺、脅されたんだ岸谷に。・・・レイプされた時の写真をネタに・・・。」

暁がそっと雅紀の肩を抱く。

雅紀 「だけど俺、ゲイビ出てるし、別に写真ばら撒かれてもどうってことないから無視した。」
湊  「それっていつや?」
雅紀 「ここで撮影してた頃。」
湊  「他にも脅された人がいる可能性高いな。」
雅紀 「うん。」

湊は放心状態になっている光の前に座って顔を覗き込んだ。

湊  「もも?大丈夫か?」
光  「ん?・・・大丈夫や。」

光は、焦点の定まらない瞳で一瞬湊を捉えたが、そのままテレビ画面に視線をもどした。

光  「死んだんや・・・あの人。」

その後、暫く誰も言葉を発することができなかった。




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