彰仁 「あ~あ。なんだか静かになっちゃったね。」
バタバタと慌ただしく紫苑や莉薗が出て行く頃に起きだしてきた彰仁は、まだ眠気を伴って気だるく伸びをしながら呟いた。
晴樹 「よう寝とったな。」
彰仁 「うん。寝る子は育つって言うでしょ。」
晴樹 「意味わからん。」
晴樹は軽くため息をつきながらリビングのソファに深く沈んだ。
湊 「紫苑くんのお父さん、たいしたことないとええけどな。」
湊がみんなの分のコーヒーを淹れて、カップをカウンターに出しながら晴樹に声を掛ける。
晴樹 「そうやな。どっか悪かったんやろか?」
梨里香がカウンターに置かれたカップを、リビングの椅子に座る彰仁に、中庭に出ている光に、そしてソファーに座る晴樹にそれぞれ運んだ。
晴樹 「梨里香ちゃん、家に居った時はどうやった?」」
梨里香「全然、会うとらんかった。忙しいみたいで、ほとんど家にも帰って来んかったわ。」
湊は、自分のカップを持ってソファーに腰掛けた。
晴樹 「零王くんは?病院とか言ってたけど、どこか悪いんやろか?」
梨里香「ようわからん。いつもニコニコしてて、何を考えてるのかもわからんし。」
晴樹 「その・・・零王くんって、ほんまどんな人なん?」
梨里香「見た目はほんま紫苑くんにそっくりやで。髪も瞳も真っ黒やけど。」
湊 「・・・」
晴樹 「うん。紫苑くんと会うた時の梨里香ちゃん見れば、どんだけ似とるかわかる気するわ。」
梨里香「ほんま驚いたわ。でも、紫苑くんは、表情あんまりないけど、温かい感じすんねんけど、零王さ・・くんは、ロボットっていうかアンドロイド?・・・なんや、近未来の人型ロボットみたいやねん。人間なんやけど、体温ないみたいな。」
晴樹 「なんやそれ?」
梨里香「なんて言うか・・・心がない?」
湊 「・・・。」
晴樹 「紫苑くんの生い立ち、少し聞いたんやけど色々複雑みたいやからな。それに、どうしてそこまで早く後継ぎが欲しいんやろか?」
梨里香「うん・・・。なんでやろね。」
湊 「何か事情があるんやろけど、零王くんの気持ちもわからんと、どうしようもないな。」
梨里香「お見合いん時は、いい人やと思ったんやけどな。・・・あれ、ほんまは紫苑くんやったんやないやろか?」
晴樹 「まさか、それはないやろ。」
梨里香「そうかな?ピアノ弾いてくれたんやけど、心に響くいい音やったんや。」
湊 「お見合いどこでしたんや?」
梨里香「Regnbage (レグンボーゲ)」
湊 「そうか。」
梨里香「そうかって。」
湊 「・・・紫苑くんやったかもしらんな。まぁ、もうどっちでもええけど。」
梨里香「・・・そうやね。」
梨里香は現実を思い出して、小さくため息をついた。
晴樹 「梨里香ちゃん、これからどうすんねん?」
梨里香「うん・・・。大阪帰るしかないやろね。どんな顔して帰ろ?」
湊 「家には僕から連絡するわ。」
梨里香「ほんまに!?」
湊 「あぁ。それと、もうちょとここにおったらええやん。せっかく夏休みなんやし。」
梨里香「ええの?」
湊 「週末のライブ終わったら、僕達も引きあげるから、そんとき大阪まで送ってくわ。」
梨里香「うれしい!!」
晴樹 「よかったな。なんや、やっといつもの梨里香ちゃんの笑顔見れた気するわ。」
それから3人は、大阪にいた頃の話で盛り上がっていたが、暫くして湊は彰仁の姿がないことに気付いた。
湊 「あれ?アキどこ行ったんやろ?」
晴樹 「また、部屋で寝てるんちゃうか?」
湊 「ちょっと、見てくるわ。」
湊が部屋へ向かう背中を見送り、晴樹と梨里香はまた思い出話を始めた。
光は、そんなリビングの様子も耳に入らず、中庭でお茶を飲みながら遠くを見つめていた。
なんでやろ、俺。
紫苑と離れ離れになってしもたのに、ほっとしとる・・・?
光は、頭をブンブンと振ると、大きなため息をついた。
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