結局、莉薗が来ると言うので、話はそれを待ってからということになった。
お腹が減っているという梨里香の為に湊がまたキッチンに入りチャーハンを作っている。
彰仁 「もう、電車ないでしょう?車で来るの?」
晴樹 「高2やから免許もってへんやろ?タクシー飛ばして来るん?」
紫苑 「いえ、別のもん飛ばして来るみたいです。」
梨里香「リムジン飛ばして来るんやない?」
紫苑 「いえ・・・。それほど時間はかからないと思います。」
紫苑は、どうせプロペラの音でばれるとは思っていても、こんな私用でヘリコプター飛ばして来るとは言いにくかった。更に、梨里香の視線を避けるように窓の外を見ている。
梨里香「紫苑さんって、笑わんのやね?」
紫苑 「・・・」
光 「こいつ、表情筋あんま使わんのや。なっ?」
光が紫苑の隣から肩を抱いて、顔を覗き込む。
紫苑 「そうですね。・・・愛想笑いする理由もありませんから。」
彰仁 「最初はちょっと怖かったけど、最近は笑ったりするよね。」
光 「いっつも怒ってるみたいに、ムッとしてたな。」
紫苑 「そうですか?変わってないと思いますけど。」
梨里香「もっと笑ったらええのに。・・・紫苑さんの方が優しい笑顔になる気するわ。」
梨里香はキラキラした瞳を紫苑に向ける。
湊同様頭が切れると思われる梨里香は、すでにお見合いの時の相手が紫苑であったことに感づいているかもしれないと、紫苑は思った。
梨里香がチャーハンを食べ終わり、湊がお茶の用意をしていると、上空からバラバラというプロペラ音が聞こえてきた。
晴樹 「なんや!?すっごい音近いな。この辺に自衛隊の基地でもあるんかいな?」
湊 「自衛隊だって、こんな夜中にヘリとばさんやろ?」
部屋の中なのに、紫苑を除きなぜかみんなが天井を見上げた。
光 「えっ?・・・まさか?」
紫苑 「はい。・・・莉薗です。」
最初に気づいたのは光だった。大きな目を更に大きく見開いて紫苑を見つめた。
そして、全員が言葉を失ったのだ。
ほどなくして、ホテルの屋上に降り立ったと思われる莉薗は、瀬崎を従えてコテージへやってきた。
彰仁が玄関を開けると、勝手知ったる我が家のごとくリビングに入ってきた。
莉薗 「お待たせしました~!」
紫苑 「待ってない。」
莉薗がそこに立っただけで部屋の空気ががらりと変わった。
もう夜中だと言うのに、白色が基調のローズ柄のワンピースを着て、ロングの赤毛をクルクルと巻いた姿は、すっかりくつろいでいたメンバー達の視線を一気に集めた。
莉薗 「梨里香ちゃん、無事でよかったわ。心配したのよ~。」
梨里香「すみません。莉薗さんには連絡しよう思ったんやけど、良く考えたら連絡先知らんかって。」
莉薗 「あら、そうだったわね。で?零王と何があったの?」
梨里香「・・・。」
莉薗は、いきなり本題へとバサッリ切りこんむと、リビングのソファーに綺麗な足を組んで座った。流石に梨里香も息を飲む。
彰仁が緊張しながら、莉薗の隣にあるテーブルに紅茶を運んだ。
紫苑 「そんな、いきなり聞いたら話しにくいだろ。莉薗と俺は零王の身内なんだし。」
莉薗 「のんびりなんかしてられないのよ?零王が何を仕掛けてくるかわからないんだから。零王のいいように話をもっていかれたら、梨里香ちゃんが悪者にされちゃうかもしれないじゃない。」
晴樹 「莉薗ちゃんは梨里香ちゃんの味方なんや?」
莉薗 「当たり前じゃない。どう考えても零王が悪いに決まってるもの。」
紫苑 「なんだ、事情は知ってるんじゃないか?」
莉薗 「まあね。リサーチはしてきたわよ。でも本人から聞かないと始まらないでしょ?」
梨里香は莉薗の向かい側に座ると、莉薗をまっすぐに見つめた。
梨里香「お話します。・・・神宮寺家に到着して、最初みなさんと一緒にいた時の零王様は、やさしかったんです。そやけど、零王様の部屋へ行ってふたりっきりになると、急に声のトーンが低なって・・・。僕の事は零王様と呼ぶように。と言われたんです。」
紫苑 「何考えてるんだ、あいつ?」
梨里香「呼び方位は、まぁええか思ったんですけど・・・。」
梨里香にしては少し歯切れの悪い口調で、ぽつりぽつりと話始めた。
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