翌日の土曜日のライブも大盛況だった。どこから聞き付けてきたのか、この施設に宿泊していない人達まで集まってきて、バーベキューガーデンは人が溢れかえるほどだった。
昼間、湊がPCにある音源をCDに焼き付け、紫苑が描いたLumie`re (リュミエール)のロゴと、彰仁が描いたメンバーの似顔絵でパッケージを作り全員でセットした。
そして用意したCDは、ライブ終了後あっという間に完売となった。
翔や和樹やそのほか楽園のアクターと思われる若者たちもライブを見に来ていた。しかし、その中の一人が光を舐めまわすような視線を送っている。光はそんなことにはまったく気付かず、晴樹や紫苑に絡んで客を煽るが、紫苑はその下品な視線が妙に気になった。
そして日曜日の夕方、光はやっと雅紀と会えることになった。
週末を利用して宿泊していた客が、日曜日の午後にはほとんど帰ってしまうので、施設内は比較的人が少なかった。
光 「一人で大丈夫やって。雅紀とふたりで話がしたいねん。」
紫苑 「わかりました。・・・でも、チャペルまで送ります。」
光 「ほんま紫苑は心配性やな。」
紫苑は光が心配で、自分も立ち合うつもりだったが、光はどうしても雅紀とふたりで話がしたいと言い張った。珍しく本気の喧嘩になりかけたが、光は言い出したら聞かないことを紫苑はわかっていたので、仕方なく送って行くだけということに落ち着いた。
待ち合わせのチャペルに到着すると、雅紀は先に到着していてマリア像の前にある長椅子に座っていた。
光 「雅紀?」
雅紀 「ん~?・・・百瀬?久しぶり。・・・あれ?保護者つき?」
光が声を掛けるとゆっくりと振り向いた雅紀は、アッシュグレーの髪と紫色の瞳をしている紫苑を見て少し驚いたが、すぐに微笑んだ。
光 「うちのベース。神宮寺紫苑言うねん。」
雅紀 「神宮寺?へぇ~。・・・すっごい派手だね?」
光 「天然やねん。・・・紫苑は、帰るから。ふたりで話しよ。」
雅紀 「ふぅ~ん。」
紫苑 「どうも。・・・この人に何かしたら容赦しないんで。」
光 「紫苑!何言うてんねん。そんなんあるわけないやろ。」
雅紀 「・・・愛されてるんだね。・・・俺、百瀬はタイプじゃないから安心して。」
紫苑は雅紀を睨みつけるが、雅紀は気だるそうにふたりを見ると少し寂しそうに笑った。
紫苑がチャペルを出ると、光と雅紀は長椅子に並んで座った。ふたりは何とはなしに無言で暫くマリア像を見つめていた。
雅紀 「話があったんじゃないの?」
光 「うん。・・・なんや雅紀、やさしい顔しとるから調子狂ってしもた。」
雅紀 「そう?」
光 「・・・なぁ雅紀?また歌わんか?」
雅紀 「・・・それは無理だよ。・・・汚れきってる俺が、夢叶えようぜとか愛してるなんて歌えると思うか?」
光 「雅紀は汚れてなんかないやろ!・・・綺麗やで。」
雅紀 「聞いたんだろ?俺、AV出てるんだぜ。」
雅紀はそう言って長袖のシャツをまくりあげると、手首には拘束の跡があり、あちこちに小さな痣があった。
雅紀 「発情した男達のちんぽ舐めて、ケツに突っ込まれて精液まみれになって・・・」
光 「やめろやっ!・・・そうやって悪ぶるんはやめ。」
雅紀 「本当のことだよ。・・・いろんなことされて、どんなに嫌だって思って抵抗したって、最後には自分も気持ち良くなっちゃうんだ。心とは別に身体は反応する。」
光 「もう、AVなんてやめろや。セックスは、ちゃんと好きな人とせなあかん。」
雅紀 「ふっ。百瀬は綺麗だな。」
光 「別に綺麗なんかやない。雅紀がそんなことしてるんは・・・岸谷のせいなんやろ?」
雅紀 「・・・」
雅紀の目つきが急に変わった。さっきまで少々虚ろなくらいの優しい瞳をしていたのに、岸谷の名前を聞いた瞬間、憎しみの色を纏った。
雅紀 「・・・そう・・だな。岸谷の事は許せない。・・・だけど、一番許せないのは・・・自分なんだ。」
光 「なんでや?悪いんは岸谷やんか。雅紀は悪ない。」
雅紀 「綺麗な百瀬には、わからないさっ!・・・もう、話はいいだろ。今後一切俺にかかわるな。」
雅紀はそう言うと立ちあがった。
光も立ちあがって、雅紀の前に立ったつと、少し目線の高い雅紀の瞳をまっすぐに見つめる。
光 「雅紀は悪ないっ!汚れとらんっ!・・・綺麗やんかっ!」
雅紀 「・・・知りもしないで・・・何も知らないくせに勝手なこと言うなっ!」
雅紀の声は少し震えていた。握った拳も小刻みに震えている。
光 「雅紀・・・。」
雅紀 「・・・手足を拘束されて、好きでもない変態オヤジにいいように身体中いじくりまわされて・・・変な薬飲まされて・・・嫌なのに身体は勝手に反応して・・・何度も寸止めされて、どうにも我慢できなくて・・・イきたくて・・・最低な男に、イかせてって泣いて懇願したんだ俺は。・・・あいつはそんな俺を嘲笑って更に攻めてきた。オモチャ突っ込まれて、口で奉仕させられて・・・それでもイかせてもらえなくて・・・だんだん頭も身体も痺れて・・・何が何だかわからなくなって・・・やっとそこを開放された時には、溜まりに溜まってたものが一気に放出されて・・ぐちゃぐちゃだった。」
光 「・・・」
雅紀 「・・・だけど俺はその時・・・今までに経験したこともないほど感じたんだ。・・・気持ち良かったんだよ。・・・最低だろ?・・・そんな俺が・・・俺が自分を許せないんだ。」
光は言葉が見つからず、静かに雅紀を抱きしめた。
雅紀は荒い呼吸のまま、光の肩に顔を埋めて、その背中に手をまわした。
すると、チャペルのドアが開いて夕陽が差し込んできた。
黒い影がゆらりと揺れて扉は閉まり、その影の主がニヤリと笑った。
???「へぇ~JUNくん、いいもん持ってるじゃん。その美人さん、俺らに頂戴?」
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