<紫苑の部屋・深夜>
紫苑が風呂から上がって寝室に戻ると、光は柚子を抱きしめて眠っていた。
紫苑はパジャマの下だけを履いて、バスタオルを肩から掛けたままの姿で、光の腕から柚子をそっと抱き上げると、窓際にある寝床に寝かせた。柚子は少しだけ目を開いて紫苑を見たが、そのまま丸くなって眠ってしまった。
紫苑は光の眠るベッドに腰掛けて、肩にかけたバスタオルで自分の髪を拭きながら、父親との会話を思い出していた。
神宮寺「お前が1番乗りだとはな。」
紫苑 「一番乗り?」
神宮寺「お前が零王や莉薗よりも先に、大切な人を見つけたことが少し意外だったということだ。」
紫苑 「・・・」
神宮寺「私に一番反発しているお前が、頭を下げて彼をここに住まわせてほしいと言ってきた時は、驚いたよ。」
紫苑 「そう・・・ですね。自分でも少し驚いています。」
神宮寺「大切な人を守るということは簡単ではない。これからお前は、色々なことを学ぶだろう。」
紫苑 「・・・」
神宮寺「髪の色を戻したのは、彼のすすめか?」
紫苑 「はい。本当の俺でいるべきだと言われました。」
神宮寺「・・・なるほど。彼らと本気でバンドをやるのか?」
紫苑 「はい。・・・あなたに迷惑を掛けることになるかもしれませんけど。」
神宮寺「ふっ。子供が親の心配をするな。」
紫苑 「あのメンバーでなら、必ずメジャーになりますよ。」
神宮寺「湊祥一郎くんは・・・なかなかのやり手だな。・・・紅茶の淹れ方も上手い。」
神宮寺は紫苑から受け取った紅茶を飲みながら目を細める。
紫苑 「彼の繊細な音づくりは、かなりの腕です。他のメンバーも個性的で技術もある。それに、光さんの声・・・。」
神宮寺「随分自信があるようだな。」
紫苑 「いま創作中の曲たちが世に出れば、必ず注目されます。そうなれば、嫌でも俺も目立つことになる。・・・いいのですか?」
神宮寺「かまわん。神宮寺を見縊るな。それくらいのことでどうにかなるものでもない。」
紫苑 「・・・零王は?」
神宮寺「仕掛けてはいるのだがな。なかなか本心を見せん。」
紫苑 「仕掛けて・・・?」
神宮寺「いや、こちらの話だ。お前は、好きにやればいい。」
紫苑はこんな風に本音で父親と話をしたのは初めてだった。
隣ですやすやと眠る光の寝顔を見つめながら、この人を守る為に自分は強くなろうと思った。光は純粋でまっすぐだ。それゆえに傷つきやすい。
Lumie`re (リュミエール)がメジャーになろうとすれば、必ず傷つけられることがある。
売れれば更に、嫉妬や妬みをかうこともあるだろう。
湊は、光と彰仁を「綺麗だ」と言った。
少し子供っぽくも見えるが、純粋無垢なふたりの心は、傷を沢山持っている湊や紫苑には、ただただ美しく映るのだ。
紫苑が光の薄い唇に、チュッとキスをすると、光はゆっくりと瞼を開いた。
光 「しお・・ん?」
紫苑 「光さん・・・好きです。」
光は紫苑を見つめ、アルコールが入っているせいか少し上気した頬をゆるめてニッコリと微笑むと、両手を伸ばして紫苑の首に手をかけた。
光 「紫苑・・・好きやで。」
そう言うと、紫苑の唇を求める。唇が重なると薄い舌をちろりと出して紫苑の口内へ忍び込ませた。酔っているのか寝ぼけているのか、いつもより少し大胆な光のキスに、紫苑は一気に欲情した。
紫苑 「光さん?・・・酔ってるの?」
光 「ん?・・・酔ってへんで。」
紫苑 「今夜は随分、大胆ですね。」
光 「そうか?」
紫苑は光の上に覆いかぶさり、深く口づけると右手を光の下腹部に伸ばした。そこは熱をもって既に勃ちあがっている。布越しにゆっくりと擦るとすぐに光は吐息を漏らす。
紫苑 「ずっと、したかったの?」
光 「んっ・・・そんなん、ちゃう・・・」
紫苑 「だって、もうこんなですよ。」
光 「あっ・・・だって・・紫苑・・・ほんまに、全然せぇへんから・・んぁ・・」
紫苑 「毎日はしないって言ったでしょ?」
光 「そやけど・・・」
紫苑 「毎日Lumie`re (リュミエール)の練習があるのに、光さん身体辛くて詩えないと困るでしょ。」
光 「んぁっ・・・はぁ・・・んんっ・・・・しおんっ・・・あぁ・・・」
紫苑 「明日は練習お休みだから、今夜は俺の腕ん中でいっぱい詩って・・・」
光 「あぁ・・紫苑・・・しおんっ・・・あぁ・・あんっ・・・・紫苑っ・・・」
光は感じている時、いつも無意識のように紫苑の名前を呼ぶ。
紫苑は、自分を求めるその甘く鼻に抜ける光の声がたまらなく愛しいと思うのだ。
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