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響瑠

Author:響瑠
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<学校・午前>

紫苑は嫌な予感がしていた。胸騒ぎがする。
光は「後で、連絡するな。」と言って、美郷に手を引かれバイトに行ったきり、連絡がつかない。明け方にはバイトも終わっているはずなのに、連絡をしてくるどころか、紫苑からメールをしても返信はなく、電話をしても繋がらないのだ。

バイトが終わってそのまま家に帰って寝てしまったのだろうか?

「紫苑は心配性やな。」・・・光の声が聞こえるようだ。

確かに、「後で連絡する。」と言っても、バイトが終わってすぐという意味ではなかったのかもしれない。ただ、あの状況で別れたのだから、紫苑が心配していることくらいは気づいているはずだろう。

紫苑は、光のことを考えながらテスト用紙の回答欄を事務的に埋めていた。


<街・昼>

やっと、昼になり今日の試験から解放され校門を出ると、後ろから声をかけられた。

莉薗 「紫苑!」
紫苑 「学校で、話しかけるな。」
莉薗 「学校出たじゃん。」
紫苑 「・・・何だ?」
莉薗 「機嫌悪いね?」
紫苑 「まぁな。」
莉薗 「あの、ボーカルの美人さんと喧嘩でもしたの?」
紫苑 「!?」

紫苑は無言で莉薗を睨みつけた。

莉薗 「こっわ~い。図星?」
紫苑 「・・・今日は、迎えは来てないのか?」
莉薗 「うん。ちょっと紫苑と話がしたいなって思って、お迎え遅くしてもらったの。」
紫苑 「で、何だ?」

紫苑は、その足で光の家に行ってみようと思い、速足で歩いていた。

莉薗 「零王の事なんだけど。」
紫苑 「もう、代役はごめんだ。」
莉薗 「そうじゃなくて。夏休み中、梨里香ちゃんが本宅に泊るみたいなの。」
紫苑 「はっ?」

紫苑は、思わず足を止めて振り返り、少し後ろを歩いていた莉薗を見た。

紫苑 「何の為に?」
莉薗 「花嫁修業?」
紫苑 「まだ、高1だぞ?」
莉薗 「でも、高校卒業したら子作りするんだよ?」
紫苑 「・・・」

紫苑は、大きなため息をついてまた歩き出した。

莉薗 「ちょっと。」
紫苑 「俺には関係ない。」
莉薗 「・・・零王さ、好きな人がいるみたいなんだよね。」
紫苑 「!?」

紫苑は再び足を止めて振り返った。

紫苑 「零王が言ったのか?」
莉薗 「言うわけないじゃん。私の感。」
紫苑 「適当なことを言うな。」

紫苑はまた速足で歩き始める。

莉薗 「適当じゃないよ。見てればわかるって。」
紫苑 「それで、俺にどうしろって言うんだ?」
莉薗 「・・・梨里香ちゃんはどうなのかなって思って。」
紫苑 「は?」
莉薗 「梨里香ちゃんだって、本当は好きな人がいるかもしれないでしょ?」
紫苑 「だったら何だ?」
莉薗 「もうっ!紫苑は鈍感ね。こんな親同士が決めた結婚なんて、本人たちは迷惑なだけなんじゃない?」
紫苑 「仕方ないだろ?嫌なら嫌だと言えばいい。お前こそお節介だろ。」
莉薗 「嫌だなんて言えないから可哀そうなんでしょ?」
紫苑 「俺にどうしろって言うんだ?」
莉薗 「うちのパパは手強過ぎるから、湊さん家の方から縁談断ってくれないかなと思って。」
紫苑 「そんなこと俺に出来るわけっ・・・!?」

足早に歩いていた紫苑がいきなり立ち止った。すぐ後ろを追いかけていた莉薗は、思いがけず立ち止ったその紫苑の背中にぶつかってしまった。

莉薗 「いったぁ~い。何、急に立ち止ってるのよ?」
紫苑 「・・・」

紫苑の視線の先には、腕を組んで仲よさそうに歩く光と美郷の姿があった。




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