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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
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<光の部屋・夜②>

紫苑は、光を抱きしめながら出逢った時のことを思い出していた。
真瀬と話をしている光を一目見て、綺麗だと思った。大阪のライブハウスで見た女の子に似ていると思った。思わず見とれてしまっていた所に、笑顔で声をかけられたものだから、つい憎まれ口をきいてしまったのだ。

そして、2度目に会ったライブ当日には、ヘルプのベーシストと喧嘩をしてしまい、メンバーに謝っていた。
喧嘩の内容を紫苑は知らないが、きっとこの人のことだから、どうしても曲げられないことだったのだろうと想像できる。それにも関わらず、湊と晴樹が止めなければ土下座までしそうな勢いで仲間に謝っていた。
ライブ本番でも、まず会場に集まっているファンに対して謝った。みんなの気持ちを動かすほどに、事情を説明して誠意をもって深く頭を下げていた。
嘘をつけない人なのだ。人にも自分にも。いつも真っ直ぐで一生懸命に突っ走っている。
だから・・・ほっとけないのだが。
そこに惚れてしまったのだから仕方がないなと、心を決めて念を押す。

紫苑 「光さん?・・・絶対に無理はしないって約束してください。」
光  「あぁ、大丈夫やって。約束する。」
紫苑 「俺、頼りないかもしれないけど、何かあったらいつでも相談してください。」
光  「頼りないことないで。・・・紫苑は心配性やな。」
紫苑 「あなたにだけです。」
光  「お、お前ほんま普段しゃべらんのに、そういうことはさらっと言うな。」

光は紫苑の気持ちが嬉しかった。
光も本当はいつでも紫苑と一緒にいたかったし、べったり甘えていたいとも思っていた。
でも、ずるずるとした関係にはなりたくなかったし、寄り掛かるのではなくしっかりと自分の足で立って紫苑とは対等でいたかった。
同じ夢に向かって走るのだから・・・。

紫苑 「光さん?・・・いつか、一緒に住みましょうね?」
光  「そうやな。はよ夢叶えて、紫苑といつも一緒におりたい。」
紫苑 「はい。」

二人は見つめ合い、唇を重ねた。紫苑はつい光の口内に舌を割り入れて深く口づけてしまう。そして、もっと欲しいと思ってしまうのだが、光に背中を軽く叩かれ唇を離した。

光  「あ、あほ。・・・これからバイトや言うてるやろ。」
紫苑 「・・・あほって言うな。」
光  「ぷぷっ。・・・ほんまは嬉しいけど、そろそろ行かな遅刻してまう。」
紫苑 「・・・わかりました。店まで送ります。」
光  「ありがとう。ほな、一緒に出よ。」

二人は身支度をして、光のアパートを出た。


<街・夜>

光のバイト先のカラオケボックスまでの道を、ふたり並んで歩いた。
夜になってもまだ、だいぶ蒸し暑い。
話す内容はやっぱり新曲のことで、光は目をキラキラとさせて熱く語る。
しかし、幸せなふたりの時間に割り込むように、甲高い声が響いた。

???「ひかるく~ん!!」

声のする方に視線を向けると、小柄な女の子が走り寄ってきた。

???「光くん、今から店でしょ?」
光  「あっ、美郷ちゃん。美郷ちゃんも今から?」
美郷 「うん。一緒に行こうよ。・・・あれ?お友達?」

紫苑は嫌な予感がしていた。美郷と呼ばれたその女の子は、明らかに光に好意をもっていることがわかる。しかも、物陰から出てきたところを見ると、待ち伏せしていたと思われる。そして、紫苑に「気をきかせて帰って」と言わんばかりの視線を向けてきた。
紫苑は、今まで光に向けていた表情とはまるで違う、いつもの仏頂面に戻っていた。

光  「新しくバンドメンバーになった紫苑くん。紫苑、彼女はカラオケボックスで一緒にバイトしてる美郷ちゃんや。」
紫苑 「こんばんは。」
美郷 「こんばんは~。そう言えば、この間のライブに行った店の子が、またカッコイイ人が入ったって言ってたぁ。ホントカッコイイね~。」
光  「そうやろ?紫苑とは初めてなんやな?そう言えば最近、美郷ちゃんライブ来てくれへんなぁ。」
美郷 「うん。だって、ライブの時の光くんって、超かっこよくてドキドキしちゃうし、なんだか遠い人みたいな感じがしちゃって寂しいんだもん。みんなの光くんって感じで。」
光  「なんやそれ?俺はいつでも、みんなの光くんやで?」
美郷 「でも、バイトの時は、すっごく近く感じるもん!」

軽く冗談で流す光の腕に、美郷は自分の腕を絡めてきた。
紫苑の片眉が、ピクリっと反応したことは言うまでもない。

光  「な、なんやねん?美郷ちゃんどないしたんこれ?」

光は、慌てて腕を振りほどこうとするが、美郷はそんなことはお構いなしで、光の腕をひっぱる。

美郷 「ほらっ!早くしないと遅刻しちゃうよ。紫苑さん、今度ライブ行きますね。光くん走るよ!」

美郷は、紫苑をチラリとみたが、強引に光の腕を引きながら走り出した。

光  「あっ!紫苑・・・ごめん。あ、後で連絡するな。」

光はそれ以上美郷を無碍にすることもできず、促されるまま一緒に走り出した。
何度も振り返って紫苑を見たが、仏頂面が笑顔になることはなかった。

そして紫苑は、連れ去られる光を見送りながら大きなため息を吐いた。




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