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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
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<光の部屋・夜>

湊の家でアレンジ作業をした日、光は深夜のバイトがあるので一度家に帰って柚子の食事を用意して出かけることにした。
光が部屋の鍵を開けると、柚子が玄関まで迎えに来て主を見上げる。
光は柚子を抱きあげ頬ずりをしながら靴を脱いだ。

光  「なんや、付き合わせてしもて悪いな。」
紫苑 「俺が好きで付いて来たんで、気にしないでください。」
光  「・・・俺は嬉しいけどな。・・テストは大丈夫なん?」
紫苑 「それは、どうにでもなるんで。」
光  「余裕やな。適当に座っとってな。柚子のご飯用意したら出なあかんけど。」

紫苑は、ベッドに腰掛けて後ろに手をつきながら、光の様子を見ていた。
数日前まで零王として零王の学校へ通っていた紫苑は自分の学校のテスト範囲すら把握していなかった。レベルが上の学校で主席の零王になりきる為の勉強を普段からしている紫苑にとって、自分の学校のテストは少し手を抜いて丁度良いくらいなのだ。本気を出したら1番になってしまう。目立つことが何より嫌いな紫苑は、いつもわざと間違えてそこそこの成績にしていた。

光は柚子にご飯を与えて、その横に座り柚子を撫でている。
紫苑はその横顔を見ているだけで、温かい気持ちになっていた。

紫苑 「光さん?」
光  「ん?」
紫苑 「家に来ませんか?」
光  「はっ?今日はこれからバイトやで。」
紫苑 「いえ。今日も本当は連れて帰りたいけど、そうじゃなくて引っ越しのことです。」
光  「えぇ?なんでやねん?」
紫苑 「もっと、光さんと一緒にいたいから。」
光  「・・・そ、そりゃ、俺かて一緒にいたい思うけど・・・」

頬を染めて立ちあがった光を、紫苑は後ろから抱きしめると、肩に顔を埋めた。

紫苑 「・・・柚子の事バレたの、俺のせいだし。」
光  「え?・・・なんで?」
紫苑 「週末、俺が泊った夜、柚子は鳴いてなかったでしょ?」
光  「うん。鳴いとらんかった。」
紫苑 「だから・・・たぶん、猫の声と間違えられたんです。光さんの声。」
光  「俺の声・・・?」

光はくるりと体制を紫苑の方へ向けると、大きな目を開いて不思議そうに紫苑の顔を覗き込んだ。

だからっ・・・近いって・・・。
まったく、この人のこういうところは天然なのか?
俺がこんなに我慢してるのに、まるで誘っているかのような行動をする。

紫苑はたまらず目の前の、光の頬を両手で包んで唇を重ねた。

光  「んっ!・・・んふっ・・・はぁ・・・あ、あほっ!変な気分になるやんか。」
紫苑 「あほって言うな。・・・変な気分にさせたのは誰ですか?」
光  「・・・?」
紫苑 「だから・・・光さんのいい声が、猫の声に似ていたんです。きっと。」
光  「いい声?」
紫苑 「気持ちいい声。」
光  「!?」

光は、自分の快感に喘ぐ声が柚子の鳴き声と間違えられたことにやっと気付くと、慌てて両手で自分の口を塞いだ。
紫苑は、その光の両手首を掴んでゆっくり口元から外すと、また唇を重ねた。

紫苑 「今頃、口を押さえても遅いです。・・・可愛いけど。」
光  「か、可愛いって・・・。」
紫苑 「・・・だから、家に来ませんか?」
光  「そ、そんなん紫苑のせいやないし・・・」
紫苑 「俺のせいでしょ?俺がいっぱい光さんをいい声で啼かせたから・・・」

赤面して俯く光を紫苑はぎゅっと抱きしめた。光も紫苑の背中に腕をまわすと、そっと力を入れて抱きしめる。

光  「嬉しいけど・・・やっぱ、それはあかん。」
紫苑 「・・・どうして?」
光  「そんな、紫苑に甘えてばかりは嫌や。」
紫苑 「・・・」
光  「俺は、女やない。・・・そやから、紫苑とは対等でいたい。」
紫苑 「・・・俺は、・・・あなたを守りたい。・・・ダメですか?」
光  「ダメやない。・・・ダメやないけど・・・」
紫苑 「・・・バイト、きつくないですか?」
光  「大丈夫や。ここも8月末まで待ってくれる言うてくれてるし。」
紫苑 「夜・・・眠れていますか?」
光  「それは・・・」
紫苑 「・・・光さんが心配なんです。」
光  「大丈夫や!俺、そんなヤワやないで?」

光は、にっこり笑うと紫苑を見つめた。

紫苑は今まで生きてきて、何かに執着したことなど一度もなかった。
必要なものは欲しいと思う前に与えられていたし、たとえどんなに欲しいと思っても手に入らないものは入らない。失われるものは失われる。
子供のころから、どこか冷めていた。
自分の生に対してさえも執着などしていなかった紫苑が、生まれて初めて光に対して執着心を持ったのだ。
自分の心を持て余しながらも、光の気持ちを無視することは出来ないなと思った。

紫苑 「わかりました。でも、無理はしないでくださいね?」
光  「おう。・・・ありがとな、紫苑。」

光は両腕を紫苑の首に巻き付け背伸びをして唇を重ねた。

光  「紫苑・・・すきやで。」
紫苑 「・・・俺も、好きです。」

はぁ・・・俺、この人のこの笑顔に弱いんだよな。

人を好きになるということは、こんなにも自分が振り回されてしまうのかと、紫苑は驚いていた。




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