<湊の部屋・夕方>
梅雨明け宣言がされた日の夕方、Lumie`re (リュミエール)のメンバーは新曲制作の為に、湊の部屋に集まっていた。
湊の住んでいる部屋の中に楽器部屋がある。防音になっていてドラムセットやキーボードも置いてあるが、派手なパフォーマンスができるほど広くはない。しかしスタジオを借りるのにもお金が必要なので、節約の為、曲のアレンジをする時はここを使用することが多い。
先日、湊と晴樹が持ち寄った曲に光は既に詞をつけていた。
紫苑を正式メンバーに加えてのアレンジ作業は順調だった。
湊 「ちょっと、休憩しよか?」
晴樹 「そうやな。」
場所をリビングに移してティータイムとなった。
湊が、キッチンからグラスに入った赤くキラキラ光るドリンクを、氷とグラスのぶつかるカランカランという涼しげな音をさせながら持って来た。
光 「なんやそれ?めっちゃ綺麗やな?」
湊 「ハイビスカスとローズヒップのハーブティーや。」
晴樹 「カクテルみたいやな?」
湊 「アルコールは入ってないで?ちょっと酸っぱいけど夏向きや。ビタミンCもいっぱいやしな。ハルはタバコ吸うからビタミンCいっぱい取った方がええで。」
彰仁 「氷の上にのってる葉っぱは何?」
湊 「ミントや。そこのベランダにいっぱい生えてるやろ。」
晴樹 「あの草か?」
湊 「ぷっ。草って・・・」
光 「美味しい。身体にしみこむ感じや。」
彰仁 「クッキーも美味しい!」
湊 「それ、夕べ僕が焼いたんや。」
紫苑 「湊さんって、マメなんですね。」
湊 「そうか?みんなの笑顔みるんが好きなだけやけどな。」
晴樹 「ほんま、器用やしな・・・なんや最近流行りの乙メンちゅうやつやな?」
湊 「ククッ。なんやハルはおっさんぽいことばっか言うとるな。ぷぷぷっ。」
晴樹 「うるさいわっ。」
全員 「あははははっ・・・・」
日中はジリジリと地面を照りつけていた太陽もだいぶ傾いて大きな窓から日差しが差し込み、みんなの笑い声が響くリビングをオレンジ色に染めていた。
湊 「紫苑くんが夏休みに入る頃には、ほぼ完成しそうやから、どっかで合宿でもしたいな?」
光 「そうやな。レコーディングもしたいしな。」
彰仁 「レコーディング、ドキドキするね。」
晴樹 「やりたいことありすぎて、あっという間に夏休み終わりそうで怖いわ。」
湊 「ほんまやな~。8月はスイートポテトも休みやし、9月のライブまでに仕上げたいな。」
晴樹 「うわぁ~また、バイト増やさんとあかんやろか?」
湊 「厳しいか?合宿とレコーディングスタジオと・・・結構かかるな。」
紫苑 「あの・・・、伊豆にある神宮寺の施設にスタジオもあるので、よかったらそこで合宿しませんか・・・?」
晴樹 「ほんまに!?」
紫苑 「スタジオのあるコテージに泊って、食事は自分達で作ってもいいし、施設内のホテルで食べても大丈夫です。」
光 「ええの?」
紫苑 「はい。会社の研修とかで利用されてる施設なので、夏休みは意外と空いてるんです。日程は確認してみますけど。」
湊 「助かるわ。後は、レコーディングスタジオやな。」
紫苑 「それも、俺が今住んでるビルの地下にあります。」
全員 「・・・・・」
晴樹 「ほんま、神宮寺グループって凄いんやな。」
光 「紫苑がええんやったら、ほんま助かるわ。実は俺、アパートも出なあかんねん。」
湊 「どないしたん?」
光 「柚子んことがバレてしもて。」
湊 「ももひとりやったらそこの部屋使ってもろてもええんやけど、柚子は無理やな・・・」
彰仁 「柚子だけ預かってもいいけど、ももくん、柚子と離れ離れは嫌でしょ?」
光 「うん。柚子と離れるなんて無理や。」
晴樹 「うちも動物ダメやしな・・・そやけど、何でバレたん?」
光 「それがな・・・先週末、朝まで鳴き声が煩かった言うねん。柚子そんな鳴かんのになぁ・・・」
湊 「先週末ってライブん日やろ?帰ったの遅かったからやろか?」
そんな会話を聞きつつ、紫苑は片手で口元を覆い視線を外した。心なしかその顔は上気している。それに気づいた湊が、紫苑の顔を覗き込んで、小刻みに肩を揺らした。
湊 「もも、それは柚子やなくて他の猫がええ声で啼いてたんやないか?なぁ、紫苑くん?」
紫苑 「・・・」
光 「なっ、なんで湊は紫苑が泊ったん知っとんねん?」
湊 「ぷっ。くくくっ・・・・」
上戸にはいってしまい笑いが止まらない湊を、晴樹と彰仁と光がキョトンとした顔で見つめるなか、紫苑だけが赤面した顔を隠すように俯いていた。
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