<光の部屋・昼>
紫苑は、腕の中に光をだきしめて、久しぶりにぐっすりと眠った。
暫くの間、神宮寺零王として本宅での生活をしていた為、睡眠時間が極端に短かったのだ。
そして、光もそれは同じだった。岸谷の事件以来、暗闇で目を閉じるとあの時に見せられた写真に写る彼らの姿が浮かび寝付けない。浅い眠りに入っても、その写真の彼らの顔が自分にすり替わっている悪夢をみて目が覚める。そんな日々が続いていたのだ。
もう、太陽は真上に登っていた。蝉が煩いくらいに鳴いている。
二人に気を利かせたのか柚子は随分と長いこと大人しくしていたけれど、流石に昼を過ぎてお腹が減ったのだろう。主を起こしに来た。
柚子 「にゃぉ~にゃぁ~」
光 「ん・・・柚子~?・・・どないしたん?」
光がうっすらと目を覚ました。そこにはいつもあるはずの壁ではなく紫苑の寝顔があった。
光は寝像が悪い。というか、すみっこで寝る癖があるので、いつも壁にへばりつくように眠っているのだ。
・・・紫苑?
そうやった。夕べ紫苑泊ったんやった。・・・なんや俺、久しぶりによう寝た気するわ。
柚子 「にゃぁ~にゃおぉ~にゃぁ~」
光 「あっ、柚子すまん。お腹減ったんやろ?」
光が起き上がろうとすると、光を抱きしめている紫苑の腕に力が入る。
光 「!?・・・紫苑、起きたんか?」
紫苑 「・・・」
光 「・・・寝とんのかいな。」
光は自分に巻きついている紫苑の長い腕を、そっと外して起き上がった。
立ちあがると、カクンと膝の力が抜ける。そして腰は鉛のように重い。
光はそのままベッドの上に尻もちをついて、ひっくり返りそうになった。
寸でのところで、紫苑が慌てて抱きとめた。
紫苑 「大丈夫ですか?」
光 「あっ。すまん、起こしてしもたな。おはよう。」
紫苑 「おはようございます。」
光 「なんや、・・・照れるな。」
光は、夕べ本能のままにお互いを求めあったことを思い出し、頬を染め俯いた。
そして、もう一度立ちあがろうとするが、足に力が入らない。
紫苑はベッドの上に起きあがり、後ろから光を支え抱きしめた。
紫苑 「辛いですか?」
光 「辛ないで?ちょっと足に力がはいらんだけや。」
紫苑 「すみません。手加減したんですけど。」
光 「えっ?」
まじか?あれで手加減したんや?本気出されたら俺壊れるんちゃうやろか?
光は首を後ろに向けて紫苑の顔を見た。紫苑は、その光の薄い唇を舐めて口づける。
光 「んぁ・・そんなんしたら余計力入らんやろ?」
紫苑 「・・・ずっと、光さんが足りなかったから・・・」
光 「・・・俺も、同じや。・・・そやけど、今は柚子にご飯やらんと・・・」
紫苑 「・・・?」
紫苑はやっとベッドの下で、上目遣いで恨めしそうに紫苑を見つめる柚子の紫色の瞳に気がついた。
紫苑 「俺がやります。柚子のごはんどこですか?」
光 「キッチンの下の棚や。」
紫苑は、光の頬にチュっとキスをすると、立ちあがりキッチンに向かった。
なんや俺・・・こんな幸せでええんやろか?
光は、つい顔の筋肉がゆるんでニヤケてしまうのを堪えることができなかった。
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