<ライブハウス・午後>
莉薗 「え~?いいじゃん。どうせ誰ともマジで付き合う気ないくせに~。」
莉薗は紫苑の背中に向かって叫んだが、走り出した紫苑には届いていなかった。
真瀬 「莉薗ちゃん、紫苑はここでバイトはじめて2カ月位だけど、最初の頃からはちょっと変わったよ。それに、ここは紫苑のテリトリーなんだから、ちゃんとみんなの誤解を解いてあげないとね。」
莉薗 「はぁ~い。・・・どこまで話していいのかな・・・。」
真瀬は莉薗にそれだけ言うと、自分の仕事に戻った。
湊 「詳しいことは後で紫苑くんに聞くからええとして、あなたと紫苑くんの関係位は知りたいかな。」
莉薗 「えっと、私は神宮寺莉薗と言います。」
湊 「神宮寺!?・・・神宮寺って、あの?」
莉薗 「はい。あの神宮寺です。紫苑とは兄弟です。」
湊 「え!?紫苑くんって神宮寺社長の息子なん?」
莉薗 「えぇ!?そこから?・・・紫苑は言ってないんですか?」
湊 「うん。知らんかった。僕らも聞かへんかったしな。」
紫苑も莉薗も出来る限り神宮寺を名乗りたくないのだ。
神宮寺と言った瞬間から相手の自分に対する態度が変わることを子供の頃から知っていたから。
それにしても紫苑ったら、バンドのメンバーにくらい名乗りなさいよ。
って、メンバーも聞いてないってどういう人たちなの?
湊 「ほな、梨里香と見合いしたんは紫苑くん?」
晴樹 「梨里香ちゃん、見合いしたん!?」
湊 「え?・・・まぁ。」
莉薗 「あなたが湊さん?梨里香ちゃんとお見合いしたのは零王です。」
湊 「えっと・・・何人兄弟なん?」
莉薗 「3人です。零王が長男で私が2番目で紫苑が一番下です。と言っても、3人とも同い年ですけどね。」
彰仁 「えぇ!?三つ子なの!?」
莉薗 「・・・えっと、誕生日が違うので三つ子ではないんです。父親が共通の兄弟?」
湊 「なんや、複雑なんやな。それで紫苑くんはあんまり自分のこと話さんのかな?」
莉薗 「そうですね・・・紫苑も私も神宮寺の本宅は出ましたし。」
晴樹 「その、零王くん言うんが神宮寺家の跡取りなん?」
莉薗 「そうです。私達とは生まれた時から別扱いですから、彼は。」
晴樹 「どんな・・・人なんやろ?」
莉薗 「見た目は紫苑とそっくりですよ。零王の瞳と髪の黒さは天然ですけど。でも、性格は全く違いますね。紫苑はいっつも怒ってるみたいですけど、零王はいっつも笑ってますから。」
彰仁 「でも、莉薗ちゃんは紫苑くんとあまり似てないね。」
莉薗 「私は一番父親の遺伝子の影響を受けなかったみたいです。よかったわ。」
湊 「まぁ、意外やったけど兄弟やったら彼女なわけはないやな。」
莉薗 「ごめんなさい。彼女って言えばお店に入れてもらえるかなって思って。」
莉薗は肩を窄めて舌を出した。
暫く莉薗の差し入れを食べながら雑談していると、光と紫苑が飲み物を買って戻ってきた。
湊 「お帰り~誤解は解けたで。」
紫苑 「すみません。お騒がせしてしまって。」
彰仁 「こんな綺麗なお姉さんがいるなら教えてくれればよかったのに~。」
紫苑 「は?・・・莉薗!?ちゃんと説明したのか?」
莉薗 「したわよ。零王と私と紫苑は誕生日が違う同い年の兄弟だって。それより、紫苑こそ一緒にバンドやってて、自分のフルネームも伝えてないってどういうことよ?」
紫苑 「・・・それは、機会がなかっただけだ。」
湊 「まぁ、それはええねん。ちょっとびっくりしたけどな。」
莉薗 「ところで、紫苑の隣にいる美人さんは誰?」
光 「あっ、ボーカルの百瀬光です。」
莉薗 「え!?おかま?」
紫苑 「お前が言うな!」
光 「本当に兄弟なんやな。初対面で言うことが同じや。」
紫苑 「・・・すみません。」
店内に、みんなの笑い声が響いた。
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