<ホテルの部屋・夕方②>
俺って、ほんまあほや・・・。失くしてみんと自分の気持ちもわからんのやな。
亮太んことは、大好きやった。その大好きは友達っていうだけやなくて、兄弟みたいな家族としての大好きやったんや。一緒にいるんがあたりまえやった。そやけど、恋人としての好きとはちゃうねん。それを、ちゃんと亮太に伝えなあかんかったんや。
そやけど・・・紫苑への気持ちは、それとは全然ちゃう。
ぎゅって抱きしめられて心が温かくなったり、見つめられてドキドキしたり、キスされて身体が熱くなったり・・・。俺、こんなん初めてで、それがどういうことなんかようわからんかった。・・・こんなことんなって、こんな状態でやっと自分の気持ちに気づくやなんて、どんだけあほなんやろ・・・。
こいつに、こんなやつにボロボロにされてしもたらもう、紫苑ことも好きでおられん。一緒にもおられへん。・・・バンドかて続けられへんかもしれん。・・・いやや。
岸谷 「光?急に大人しくなっちゃって、どうしたの?・・・安心して。すぐに気持ち良くなれるから。甘い声で啼く光を見るのが楽しみだな。」
光 「・・・なんで、こんなことすんのや?」
岸谷 「僕のモノにしたいからだよ。」
光 「そやけど、俺だけやないんやろ?」
岸谷 「うん。僕のコレクションだからね。・・・少し見せてあげるね。」
光 「・・・?」
岸谷は自分のスマホを持ち出すと、光の隣に寝そべってその画面を見せた。
そこには両足を開いて抱え込み、後孔に岸谷のものと思われるペニスを咥えこんで恍惚の表情をしている少年が映っていた。岸谷は、何度かページをめくる。どの画面にも様々な少年や青年たちが、あられもない姿で映し出されていた。
岸谷 「あぁ、この間、お漏らししちゃった可愛い彼はこの子だよ。」
光 「あっ!?」
それは、暁のバンドのボーカルだった。
暁んバンドが解散したのは・・・こいつのせいやったんか。・・・最低や。
岸谷 「さぁ、おしゃべりはこれくらいにしよう。」
岸谷はそう言ってスマホをサイドボードに置くと、先ほどスーツケースから出してきた怪しげな小瓶を片手に取り、もう片方の手で光の顎を掴んだ。
と、その時突然、部屋のドアがものすごい音をたてて叩かれた。
ドンドンドンドンッ!ドンドンドンドンッ!!!
岸谷 「!?なんだ?どっかの部屋と間違えているのか?」
岸谷は小瓶をサイドボードに置き、光の口に中に丸めた数枚のティッシュを押し込むと、ドアの方に向かって歩いていく。
すると音は急に止んで、ガチャガチャとドアが乱暴に開く音が聞こえた。
光の位置からドアの方は全く見えていないので、何が起きているのかさっぱり分からなかった。
岸谷 「なっ!なんなんだ!?人の部屋に勝手に入ってきやがって!」
紫苑 「うるせー!!!」
その声と共に、岸谷がベッドの足もとの方まで飛ばされてきた。そしてすかさず仰向けに横たわった岸谷の上に馬乗りになって拳を振り上げたのは・・・紫苑だった。
神宮寺「紫苑!!」
その時、家具が振動するほどの低く大きな声が響き、数人の黒いスーツを着た男たちがわらわらと部屋に入ってきて、光の拘束をほどき、岸谷のスーツケースを片づけはじめた。
紫苑はその大きな声に反応して、振り上げた拳をゆっくりと下ろすと、顔をあげベッドの上の光を発見した。
光 「紫苑!」
光は駆け寄ってきた紫苑に思わず抱きついた。紫苑は無言で光を抱きしめる。その呼吸は乱れ肩は上下に揺れていた。
紫苑が助けに来てくれたんや・・・
光は心の底からほっとしていた。
神宮寺「紫苑、後はこちらで処分するから、お前は彼を連れて裏口から出なさい。」
紫苑 「はい。」
紫苑は神宮寺が投げた詰襟の制服を受け取り、光の肩にかけた。
紫苑 「動けますか?」
光 「うん。」
光は紫苑に支えられてベッドを下り立ちあがるが、まだ身体にあまり力がはいらず、ぐらりと揺れた。紫苑はその腰を支え光の腕をとった。
紫苑 「俺の首に摑まって。」
光が紫苑の首に両手をまわすと、紫苑は光を抱きあげ、そのままドアに向かった。
支配人「紫苑様、こちらです。」
支配人の案内で、紫苑は光を抱いたまま従業員用のエレベータで地下まで下り、裏口からホテルを出た。その間、紫苑は一言も言葉を発することはなかった。
紫苑、怒ってるんやろか・・・?
こんな、あほな俺んこと軽蔑してるやろか?
光は紫苑の首に顔を埋めながら、心の中は不安でいっぱいになっていた。
ホテルの裏口を出ると、そこには黒塗りのリムジンが待っていて、ふたりはすぐに乗り込んだ。
運転手 「紫苑様、行き先は楽園でよろしいでしょうか?」
紫苑 「あぁ、お願いします。」
そして、車は静かに走り出した。
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