紫苑は、光のキスの相手は自分がふたりめだと言われたことにムカついていた。
それなら、間違いなくひとり目は亮太だからだ。
そう思った瞬間、光の唇を奪っていた。その薄い唇の間を割って舌を差し入れ絡めると、光は吐息を漏らす。その声が甘く切なく紫苑の耳を刺激して、これ以上は自分を止められなくなりそうで、慌てて離れた。
紫苑 「これが本当のキスです。」
光 「・・・?」
紫苑 「だから・・・あんたのファーストキスは俺がいただきました。」
我ながら子供じみた対抗意識だと思ったが、どうしても光の一番になりたかった。
光がそれに言い返してきたので少し安心して、その場から逃げるように帰ろうとしたのだが、そんな紫苑を思いがけず光が引きとめたのだ。
紫苑のシャツの裾を光が握っていた。
紫苑 「・・・?あの・・・?」
光 「・・・行くな・・・」
紫苑 「はい?」
光 「行くなって言ってんねんっ!」
紫苑 「・・・」
光は柚子を抱きしめたまま、紫苑の胸におでこをくっつけた。
なんなんだこの人は・・・口調と態度が違いぎるだろう?・・・可愛いすぎる。
紫苑は、ゆっくりと光の肩を抱きしめると深く息を吐き出した。
紫苑 「それって・・・命令ですか?」
光 「・・・そうや。・・・リーダー命令や。」
紫苑 「ふっ。・・・わかりました。」
柚子 「にゃぁ」
紫苑と光の間に挟まれた柚子が、ふたりを見上げて嬉しそうに鳴いた。
紫苑は、光に借りたスエット素材のハーフパンツにバスタオルを首にかけたまま、風呂から上がってきた。その頃には既に雷の音は聞こえなくなっていた。
紫苑 「着替え、ありがとうございます。」
光 「フラーサイズやけど小さいか?」
紫苑 「大丈夫です。」
光 「あっ。コンタクト外したんや?」
紫苑 「はい。・・・気になりますか?」
光 「綺麗や・・・柚子とおんなじやで。」
光は紫苑の前まで行くと、紫苑の肩に手をかけて背伸びをして紫色の瞳を覗き込んだ。
光 「ほんま綺麗や・・・隠しとくんはもったいないな。」
紫苑 「・・・あの?」
光 「なんや?」
紫苑 「それって、誘ってるんですか?」
光 「は?」
紫苑 「近いです。」
光は慌てて身体を離した。
まったく、この人は・・・天然なのか?
そんな可愛いことをされたらまた、抱きしめてキスしたくなるじゃないか・・・。
紫苑は戸惑っていた。
それにしても、俺はどうかしている。
この人は綺麗で可愛いけれど・・・男だ。
紫苑は、自分が男を好きになることだけは許せないと思っていたのに、光に魅かれていく自分をどうすることも出来ずにいた。
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