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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
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<ライブハウス・夕方>
6月最初の週末に行われたスイートポテトでのマンスリーライブ初回は、対バン(同日にライブをした他のバンド)に圧倒的な実力と人気の差をつけて大盛況だった。アンコールが鳴り止まず時間を延長したほどだ。
今回はLumie`re (リュミエール)を含む3バンドだったが、次回からは2バンドにすることになった。その分、持ち時間が長くなるので曲数も増える。Lumie`re (リュミエール)のメンバーも出来るだけ早い時期にワンマンでやりたいと思っているので、増曲は急務だ。

週初めのスイートポテト定休日は、スタジオ代わりにLumie`re (リュミエール)が店を借りていた。今日は、今後の打ち合わせと、次回の曲の音合わせをする予定になっている。
店にはまだ、湊と紫苑しか到着していなかった。

湊  「なぁ、紫苑くん。」
紫苑 「はい。」
湊  「ぶっちゃけ、Lumie`re (リュミエール)どう思う?」
紫苑 「どうって・・・?」
湊  「紫苑くんサポート入ってくれて、音も随分良くなったし人気も手ごたえあったと思うねん。こないだのライブは、こっち来てからで一番良かったと思う。・・・そやけど、まだ足りないと思うねん。」
紫苑 「・・・そうですね。俺、2年前に見たライブが今のLumie`re (リュミエール)だったら、ベースやってないと思います。」
湊  「ふっ。直球やな。」
紫苑 「湊さんだって、わかってるんでしょ?こっちきてからで1番良かったって。・・・大阪の時はもっと良かったってことでしょ?」
湊  「・・・鋭いなぁ。そういうことやねん・・・。」
紫苑 「・・・声が・・・全然違うんですよ。歌が・・・こころに響かない。」
湊  「ももの声?」
紫苑 「詞は全部、あの人が書いてるんですよね?・・・それなのに、うそばっかり。」
湊  「うそ?」
紫苑 「言葉はあの人の心から出てきたものだから詞は本物ですけど、歌うとうそになる。」
湊  「歌に・・・魂入ってない・・・てこと?」
紫苑 「そうですね。・・・俺の力不足です。」
湊  「え?なんで?」
紫苑 「大阪のライブハウスで見た時、あの人の心は全開でベースの音とリズムに絡めて言葉を紡ぎだして歌ってた・・・。それを、ドラムとギターとキーボードが温かく包み込んでたんです。」
湊  「・・・。」
紫苑 「どうして・・・あの、ベースの人は今一緒にいないんですか?」
湊  「それは・・・。」
紫苑 「あ、すみません。色々事情はありますよね。」
湊  「いや・・・紫苑くんには、話しておいたほうがいいのかもしれんな。」
紫苑 「・・・?」
湊  「クリは・・・栗林亮太って言うねんけど、そのベースのクリとドラムのタク、柿崎卓哉は死んでしもたんや。」
紫苑  「えっ!?」
湊  「事故やったんやけど、それだけやなくてその少し前位からちょっとゴタゴタしてて、そのまま死んでしもたもんやから・・・もも、気持ちの整理できんままなんやと思うねん。」

紫苑は、最初に参加したライブの打ち上げで、光が寝ぼけてつぶやいた「亮太」という名前を思い出し、胸の奥がズキリと痛んだ。そしてその本人はもうこの世にいないということが衝撃だった。

Lumie`re (リュミエール)の前身のバンドは、高校1年の時に光の声かけで結成した。
光と亮太は幼馴染で、中学の頃から亮太がギターを弾いてふたりでよく歌っていたという。
バンド結成にあたり、ハルがギターを弾いていたので亮太はベースに転向した。
当時のドラムはタクではなく梨本信二だった。
人気も実力もつけ、メンバーは高校卒業と同時に東京進出を決めていたが、梨本は家業を継ぐため脱退した。光たちが高校3年の春。
紫苑が見たライブは、その梨本の卒業ライブだったと思われる。
その後、加入したのが柿崎卓哉だった。

湊は、紫苑にわかるように言葉を選んで説明した。

湊  「タクはドラムはめちゃくちゃ上手かったんやけど、ちょっと我儘なとこがあって、ももとよくぶつかってしもて、いつもクリが間に入っててんけど、ももはそれが余計気に入らんかったんやろな。」
紫苑 「・・・」
湊  「ももとクリは・・・たぶん、幼馴染以上の関係やったんやと思うねん。」
紫苑 「えっ?・・・それって恋愛的なことですか?」
湊  「少なくともクリはな。ももはまだお子チャマやったから、どこまでの関係なんかは知らんけど。紫苑くんは、そういうんダメな人?」
紫苑 「・・・誰かが迷惑することがなければ・・・仕方ないのかもしれないと思います。」
湊  「・・・?なんや、深いなぁ。」
紫苑 「良くわかりませんけど・・・俺、誰かを好きになったこともないから。男も女もないっていうか・・・。」
湊  「あら・・・そうなんや?」
紫苑 「あ、俺の話はいいです。」
湊  「はははっ。・・・まぁ、それでタクが横恋慕しおってな・・・クリの本当の気持ちはわからんけど。ライブ当日、タクが来てなくて、クリが迎えに来てくれたらライブに出るとか言いおって。結局迎えにいってライブ会場に向かう途中で事故におうてしもたんや。」
紫苑 「・・・」
湊  「クリの本心もわからんまま、大事な幼馴染を失ってしもたんや、ももは・・・。」
紫苑 「もう・・・あの時の声は聞けないんですかね・・・。」
湊  「そんなことあらへん!・・・どうして紫苑くんにこんな話したと思う?」
紫苑 「・・・わかりません。」
湊  「僕な、紫苑くんやったら、ももの心動かせると思うてんねん。」
紫苑 「それは・・・かいかぶりすぎです。」
湊  「僕の目は節穴やない。紫苑くんのベースで歌うようになって、もも変わってきてんのわかるねん。」
紫苑 「そうですかね・・・」
湊  「紫苑くん、正式メンバーにならへん?」
紫苑 「それとこれとは話が別です。」
湊  「うっ・・・つれないなぁ。」

紫苑は、光とベースの亮太の関係はなんとなく想像してはいたが、まさかその相手がこの世にいないとは考えもしなかった。もう、あの光の声は聞けないのだろうか・・・?
自分は、いつか光にあんな風に歌わせることができるのだろうか?

湊と紫苑がそんな話をしていると、ライブハウスの重い扉が開いて晴樹が飛び込んできた。

晴樹 「湊っ!もも、来とるか?」
湊  「まだやけど。」
晴樹 「あかんっ!雷や!」

湊の表情が一瞬で凍りついた。



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