<湊の家・夕方>
ゴールデンウィークも終わり学校が始まって、みんなそれぞれ忙しくなった。
彰仁は実家暮らしで、湊は実家からの支援がだいぶあるのでバイトはしていないが、晴樹と光は昼間は学校へ行き、夕方からバンドの練習またはバイト。時には練習の後深夜にバイトを入れていたりもした。
紫苑も昼間は学校、週末のライブがある日はスイートポテトのSEの他に、Lumie`re (リュミエール)以外のバンドのヘルプなどのバイトもしていた。
そんな目の回るような忙しい毎日を過ごしながらあっという間に、スイートポテトでのマンスリーライブの日が近づいていた。
今日は、湊の家でその打ち合わせをする為にメンバーが集まっていた。
湊 「紫苑くん、学校の用で少し遅くなるらしいで。」
晴樹 「学校の用ってなんや?補修?」
湊 「ハルやアキとちゃうねんで?紫苑くん頭良さそうやん。」
彰仁 「なんで俺出てくるかなぁ?確かに紫苑くん頭良さそうだけど。」
光 「そう言えば、紫苑ってどこの学校行ってるんやろ?」
湊 「聞いてへんな。」
彰仁 「俺、前に聞いたら一緒だって、花柳だって言ってたよ。」
晴樹 「ほんまに?会ったことあらへんで?学部ちゃうんやろか?」
彰仁 「俺、どっかで会ってる気がするんだよね・・・思い出せないんだけど。」
光 「記憶力なさすぎやろ?」
湊 「そう言えば、紫苑くんも人の顔覚えられないって言ってたで。」
彰仁 「そうなの?曲はすぐに覚えちゃうのにね。」
光 「花柳やのに、芸術学部ちゃうんやったらもったいないなぁ。」
晴樹 「経済とか法学とかも似合いそうやけど。」
湊 「・・・そう言えば目立ちたくないって言うてたな。音楽の道へは行かんのかな?」
光 「あいつ、地味にしてるつもりやろけど、目立ってるしな。」
彰仁 「カッコイイよね。こないだのライブ来てた奴ら、今度から紫苑くんがサポートで入るって言ったら、絶対来るって言ってたし。特に女子。」
晴樹 「やばいな。紫苑くんにファンみんなもってかれてまうで?」
湊 「でも、僕らってタイプ被ってへんから大丈夫やん?」
晴樹 「確かに、みとごに被ってへんな。ははははっ。」
ピンポーン
湊 「あ、紫苑くんや。」
湊がリモコンでロビーの扉を解除すると、しばらくして玄関のインターフォンが鳴った。
彰仁 「俺、鍵開けてくる。」
湊 「頼むわ。」
彰仁がパタパタと玄関に向かったが、少しすると叫び声とともに戻ってきた。
彰仁 「えぇぇぇぇぇぇえええええぇぇぇぇ!?」
湊 「な、なんや!?」
湊が慌てて立ち上がり、みんなが玄関につながる廊下に注目すると、紫苑がいつものように無表情のまま部屋に入ってきた。
紫苑 「遅くなってすみません。」
全員 「???」
晴樹 「はぁ?なんやそれ?コスプレかいな?」
紫苑 「え?」
湊 「・・・なんで制服?」
紫苑 「あ、着替える時間なかったんで。」
彰仁 「それって、うちの制服だよね?花柳の。」
紫苑 「はい。」
彰仁 「え?花柳って言ってたけど・・・まさか、花柳学園の高等部?」
紫苑 「そうですけど・・・。」
晴樹 「うっそん。」
湊 「・・・めっちゃ聞くの怖いねんけど、何年?」
紫苑 「2年です。」
晴樹 「まじかー!?」
湊 「17歳ってこと?」
紫苑 「あぁ、早生まれなんで、まだ16です。」
全員 「・・・・・」
光は紫苑の制服姿を見て、何も言えず固まっていた。
なんで俺、ドキドキしてんのやろ?
ここは、ドン引きするところやないか?
俺、制服フェチやないし、年下好きともちゃうし・・・。っていうか紫苑、男やし。
湊 「もも、どないしたん?紫苑くんに見とれてんの?」
光 「!?・・・は?」
晴樹 「は?やないで、さっきから固まってるやん。」
湊 「顔赤いしな。」
光 「赤いことあるかっ。ビックリしすぎただけや。」
彰仁 「ホント、ビックリしたよー。紫苑くんが俺より年下だなんて・・・。」
晴樹 「全然見えへんな。」
彰仁 「ちょっとぉ~。」
湊 「しゃぁないな。事実やから。」
紫苑 「俺、どんだけおっさんに見られてたんですか?」
晴樹 「おっさんには見えてへんで。俺らと同じかアキと同じくらいと思っててん。」
湊 「うん。大学生かと思うとった。まさか高校生やとはなぁ。」
紫苑 「確かに年相応に見られたことはありませんけど・・・。」
晴樹 「まぁ、別にサポートしてもらうのに、年齢関係あらへんけどな。」
湊 「えぇ?じゃぁ大阪で僕らのライブ見たんって、中3時なん?」
紫苑 「はい。中3の修学旅行で・・・。」
湊 「よう抜け出せたもんやな?」
彰仁 「うちって結構自由だもんね。」
晴樹 「そうなんや?」
彰仁 「別行動なんて当たり前だから。」
光は大阪でライブをしていた頃のことを思い出していた。
クリとタクがいた頃・・・。怖いものなど何もなかった。
突然、大切なものを失うことがあるなんて知らなかった。
自分を信じて、仲間を信じて、夢を信じて・・・ただ、突っ走っていたあの頃。
湊 「もも?ほんま大丈夫か?」
光 「そうや、あの頃の俺らは、今の紫苑みたいに制服着てたんやな。」
過去にトリップしてしまった光は、隣でムッとしている紫苑に気づくこともなかった。
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