<湊の家・朝>
紫苑は、ふわふわの毛に鼻先をくすぐられ目を覚ました。
重い瞼をゆっくり開くと、目の前には朝日に照らされキラキラと光る薄茶色のふわふわの毛があった。思わずそれを指先に絡め取る。
少しずつ頭を覚醒させながら、自分の腕の中にあるものを覗き込むと、それは光だった。
紫苑 「・・・え?・・・・」
紫苑はごくりと生唾を飲み込んだ。
・・・なんでこの人が俺の腕の中にいるんだ?
そして夕べ湊の家に泊ったことを思い出す。
紫苑は、ふぅ~っと深く呼吸をすると、光の顔にかかっている髪をかきあげた。
そして、やっぱりその綺麗に整った顔に見とれてしまう。
そのまま頭を撫でていると、光がうっすらと目を開けて紫苑と目が合った。
光 「・・・んっ?・・・なんや、柚子やんかぁ・・・んんっ・・・ゆ~ず~」
そう言うと紫苑の両頬を手のひらで包んで鼻と鼻を擦りつけ、唇を何度も食む。
紫苑 「・・・・・」
光 「柚子どないしたん?・・・元気ないん?」
紫苑は光の突然の行為に一気に目が覚めたが、夕べに引き続きまた別人と間違われていることに腹を立てていた。
紫苑 「ムカつく。あんたは男も女もありか。どんだけ遊んでんだ。」
光 「・・・・・?」
光はその声に、ハッとしたように大きく目を開いた。そして一瞬、目の前にいる紫苑を凝視したかと思うと、いきなり大声を出した。
光 「うわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!」
その声と共に布団にもぐりこむ。
その声に驚いた湊がリビングから駆け付けて襖を開けた。
湊 「どないしたん?」
紫苑 「・・・どうもこうも・・・」
湊 「・・・・くくっ。ぷはぁははははははっ。」
湊は、お腹を抱えて笑いだした。すぐに彰仁もその横から顔を出す。
10畳もある和室に敷いてあった3枚の布団は、あちこちに散らばり、その中のたった一枚の布団に寝ている紫苑の腕の中にはかけ布団にもぐりこんだ光。ふたりは向かいあって抱き合っているような形だが、その紫苑の背中には晴樹が逆さまになって大の字で寝ている。もちろんそこに布団はない。そしてその細くて長い足の膝が紫苑の頭に乗っていた。
彰仁 「うわぁ、サンドイッチみたい。」
湊 「紫苑くんは、磁石みたいやな。」
彰仁 「こんなに広いのに、何もそんなに密着しなくてもね。」
紫苑 「この人たちどうにかしてください。」
湊 「ぷぷぷっ。あかん、面白すぎるわ。紫苑くん先顔洗ってき。」
湊はそう言うとウインクをした。
紫苑はそのまま起き上がり洗面所へ行って、コンタクトをする。
彰仁は湊から聞いていたのだろうか、紫苑の紫色の瞳を見ても何も言わない。
晴樹は光の大声にも湊の笑い声にもびくともせずに眠っている。
光はまだ布団をかぶったままだ。
このふたりの寝像の悪さは天下一品で、その為彰仁は湊の部屋に避難させていたらしい。
っていうか、俺は・・・?
紫苑はそんな疑問もあったが、まぁ揉みくしゃにされることはなかったのでいいか。
それにしても、寝起きの光の寝ぼけっぷりはどうしたものか。
光にはあんな風に甘アマに可愛がる女がいるのか。
紫苑はなぜか面白くなかった。心の中にもやもやが広がっていく。
紫苑 「ムカつく・・・。」
※拍手&ランキングバナーをポチっとしていただけたら嬉しいです♪
↓
小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村
コメントの投稿