<湊の家・夜 ③>
紫苑はシャワーを浴びながら考えていた。
・・・どうして自分は今、今日初めて会った人の家でシャワーを浴びているのだろう?
紫苑 「皆さんお疲れみたいですね。俺そろそろ帰ります。」
湊 「ええやん。泊っていき。」
紫苑 「でも、コンタクトの予備もないし。」
湊 「コンタクト外すと全然見えへんの?」
紫苑 「いえ、そんなことは・・・」
湊 「なら、ええやん。ケースと液あるから使ってええよ。僕は眼鏡ないと全然見えへんからあかんけど。見えるんやろ?」
紫苑 「まぁ。」
湊 「シャワー浴びてき。部屋着と下着もあるしな。」
紫苑 「え?」
湊 「いつ誰が泊ってもええようにしてんねん。溜まり場やからな、ここ。」
紫苑 「はぁ。」
なぜか紫苑は湊と話をしていると、湊の思うように全て誘導されてしまっているような気がしてならない。
Lumie`re (リュミエール)のメンバーになることを断ったにも関わらず、ならサポートしてくれという。こちらが強く言えばすぐに引くので、それ以上言えなくなるし断る理由もなくなる。なんとなく話しているうちに紫苑自身が、湊が言っている通りでいいような気がしてきてしまうのだ。
それに、プライベートなことも特に聞いてこない。紫苑は自分の名字も年齢も家の場所も何も話していなかった。今まで興味本位で色々聞かれることが嫌で仕方なかったので、そういう面でも、ここは居心地が悪くないかもしれないと思っていた。
・・・なんとも不思議な人たちだな。
紫苑がリビングに戻ると、そこは綺麗に片付いていた。
紫苑 「あ、シャワーありがとうございました。」
湊 「ちょうどええとこに上がってきたな。ちょっと手伝ってくれへん?」
紫苑 「はい。」
湊 「こいつら全然起きる気ないねん。悪いけどももんこと、そこの和室に寝かせてくれへん?僕はアキをベッドルームに運ぶから。」
紫苑 「は?」
湊 「ハルはもうそこで寝てるから、紫苑くんも一緒に3人で寝てな。」
湊はそう言うと、ソファーで寝ている彰仁を抱きあげて肩に担ぐようにして奥の部屋に消えてしまった。
和室には布団が3枚敷いてあり、すでに晴樹が大の字で寝ている。
和室は10畳はあるだろう。布団4枚十分敷けるのだが何故、彰仁はベッドールーム?
紫苑にはわからないことだらけだ。
まぁ、湊があの細腰で彰仁を担いで行ったのだから、自分が光を運べないとは言えず、ソファーに寄りかかって眠っている光の前にしゃがみこんだ。
紫苑 「ほんと、黙っていれば美人なのにな・・・。でも・・・歌ってるときが一番綺麗なんだよなぁ。」
紫苑は呟きながら光を抱きあげた。いわゆる御姫様だっこ状態だ。
紫苑 「ふぅ。流石に重いっつうの。」
光 「んんっ・・・亮太・・・・」
光は寝ぼけて紫苑の首に両腕をまわしてきた。
紫苑 「ムカつく。落とすぞこらっ!」
紫苑は誰かと間違われたことに無性に腹が立った。
そうは言っても本気で落とすわけにもいかず、丁寧に布団に寝かせたのだが。
紫苑 「俺は紫苑だっつうの!」
紫苑は布団に横になっている光の鼻先を指で軽く弾くと、寝ぼけながらその手を払った光の手が紫苑の左目に当たった。
紫苑 「うわっ。・・・やばっ、コンタクト落ちた。」
弾みでコンタクトが落ちたが幸い自分の胸元に発見しほっとしていると、そこに湊がやってきた。
湊 「紫苑くん、コンタクトのケースと液・・・あれ?」
紫苑 「あっ・・・」
湊 「・・・なんや、めっちゃ綺麗やな。」
紫苑がコンタクトをしているのは視力が悪いからではない。瞳の色を隠すためブラックのカラーコンタクトをしているのだ。コンタクトを外した紫苑の目は、紫色をしていた。
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