大阪に着いてから何度もコウに電話をしていますが、電源を切っているみたいでつながりません。空港でレンタカーを借りて、コウのアパートに向かいました。
9時頃にアパートに到着してコウの部屋のベルを鳴らしましたが、誰も出てきません。
渚 「もう、事務所に向かったのかな?」
翔 「ん。事務所行ってみるか?」
すると、部屋から「ガタンッ」と大きな音が聞こえました。
僕と翔くんは顔を見合わせ、翔くんがドアノブをまわすと鍵は開いていました。
部屋に入ると、女の人が手足を拘束ベルトで縛られ、猿轡をされて横たわっていました。
翔 「ちょ、ちょっとなんだこれ?渚、鋏かカッターないか?」
翔くんは女の人に駆け寄り、猿轡を外しています。僕は机の上にカッターを見つけ手に取り、翔くんに渡しました。
???「こ、コウがっ!」
渚 「麻衣・・さん?」
麻衣 「渚くん?」
渚 「はい。」
麻衣 「コウが、拉致された。」
渚 「えっ!?」
麻衣 「あいつら、最初からラストチャンスなんて嘘やったんやっ!」
翔 「どこへ行ったか、わかりますか?」
麻衣 「たぶん、いつもSMの撮影しとる倉庫やと思う。」
翔 「案内してもらえますか?」
麻衣さんは頷いて。立ちあがり、僕たちと一緒に車に乗り込みました。
倉庫は、コウのアパートから車で30分ほどの所で、周りには何もない山間にありました。そこにはワゴン車が1台停まっていました。
翔 「麻衣さんは、車で待ってて。」
翔くんと僕が車から降りると、黒塗りの車が猛スピードで走ってきて、すぐ横で止まりました。そこから大柄で黒スーツを着た男の人が4人降りてきて、翔くんに駆け寄りました。
僕は呆然とそれを見ていましたが、思わずゴクリと生唾を飲み込みました。
翔 「随分、早かったね。」
男A 「GPSで。」
翔 「ははっ、なるほど。」
男たちは目配せをして、1人は麻衣さんが乗っている車の横に立ち、他の3人は倉庫の入り口に駆け寄りました。
翔 「助っ人だ。社長の手配。行くぞ。」
渚 「う、うん。」
男の人達が倉庫の扉を開くと、翔くんはそこからまっすぐ中に入って行きます。
僕は、翔くんの後ろについて歩いて行きました。
奥の方に灯りがあり、人影が見えました。
男1 「なんや、その目は。今、気持ちよぉしたるから。なぁ!ああはははっ。」
男2 「どうや?顔、赤いで?そろそろ、してほしくなってきたんやないか?」
コウ 「うるさいわっ!やるなら、とっととやれやっ!」
男1 「そう、焦るなや。ちょっとずつ痛ぶってお前から欲しがるようにしたるから」
男2 「そんな、強がりもいつまでもつかいな?ぶあっははははっ。」
声の聞こえる方に近づいてみると、コウは背もたれの長い椅子に両手を上から拘束され、足は開脚された格好で拘束されていました。Tシャツにランパン?学校の体操着みたいな服装です。まだ、脱がされてはいないみたいで、少しほっとしました。
固定カメラが2台。Tシャツに皮パンにサングラスの男が2人。カメラを持った男が一人。男たちは全部で3人みたいです。
翔 「お邪魔しまぁ~す!」
翔くんが、場違いな声で言うと、全員の視線がこちらに集中しました。
男1 「な、なんや?」
翔 「そういうの、犯罪なんじゃないですかぁ?」
男1 「はぁ?撮影や。邪魔すんなやっ!」
翔 「無理やりでしょ?」
男2 「なんや、お前もしてほしいんか?」
翔 「その子、うちの事務所に移籍することになったんですよ。だからキズものにされると困るんで、やめてもらえます?」
男1 「何言うてんねんっ!そんなわけあるかっ!」
翔 「渚っ!」
男ふたりが、翔くんに殴りかかってきました。翔くんはそれを軽くかわしてふたりの鳩尾に1発ずつ拳を入れました。
僕はそのすきにコウに駆け寄りました。
渚 「コウっ!大丈夫か?」
コウ 「渚・・・?夢か・・・?」
コウはどこか焦点が合わないような目つきで、朦朧としているみたいでした。
渚 「何、寝ぼけてるの?助けにきたよ。」
コウ 「!?・・・あかんっ!何言うてんねんっ!」
渚 「大丈夫。ほら。」
僕は、翔くんを指さしました。翔くんに殴りかかった男ふたりを黒スーツの男たちが取押さえ、翔くんはカメラマンの男の腕を掴んでいました。
翔 「ほら、事務所に電話して確認してみて。」
翔くんはカメラマンに携帯を持たせて言いました。カメラマンの人はしばらく、電話で話していると、項垂れて「わかりました。」と言って電話を切りました。
後のことは、黒スーツの男の人達にまかせて、僕らは翔くんの車に乗り込みました。
翔くんは、僕とコウをマリンさんが手配してくれた、ホテルに下ろして、麻衣さんを送ってから先に東京に戻るそうです。
翔 「じゃぁ、渚、コウが落ち着いたら引っ越し準備して一緒に東京戻ってこい。」
渚 「うん。翔くん、本当に色々ありがとう。」
翔 「あぁ、大事な楽園のアクターだからな。お前もコウも。」
渚 「それ、本当なの?」
翔 「あぁ、コウの部屋、用意しておくから。」
コウ 「あ、ありがとうございました。」
麻衣 「渚くん、コウをお願いします。」
渚 「麻衣さん、知らせてくれて、ありがとうございました。」
ふたりを見送って、コウと僕はホテルの部屋へ入りました。
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