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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
<妄想>です。
実在する地名・人名・団体名が登場しても、それは偶然ですので、まったく関係ありません。
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僕は、電話が切れた後も、受話器から聞こえる「プープープー」という音を聞きながら、しばらく固まっていました。
頭の中が真っ白で、どうすればいいのか何も考えられませんでした。
麻衣さんって人のあの必死の声は、たぶん今の僕が想像も出来ないくらい、コウはひどい目に遇わされるんだということを意味しているのです。

とにかく大阪に行かなきゃ。

始発で、新幹線?飛行機の方が早いよね・・・。
事務所、まだ誰かいるかな?パソコン借りて調べよう。
僕は、半ばパニック状態のまま部屋を飛び出しました。
エレベータで事務所のある2階へ降りて走り出すと、角でドンッと人にぶつかってよろけ、その人に抱きとめられました。

翔  「渚!?どうした?」
渚  「翔くん。・・・あっあっ・・・コウが・・・コウ助けなきゃ」

僕は抱きとめてくれた翔くんの顔を見た途端に、涙が溢れてきてしまいました。

翔  「とにかく、落ち着け。事務所行くか?」

僕は、頷いてついて行きました。
事務所に入ると、まだマリンさんがいて、ホットミルクを入れてくれました。それを飲んで少し落ち着きを取り戻し、翔くんとマリンさんにさっきの電話の内容を話しました。
マリンさんは、コウの面接をした時の資料を持ち出してきて、色々調べてくれました。
コウが所属しているAV制作会社は、実は裏ルートで稼いでいるそうです。
コウや麻衣さんが出演していたのは表向きのAVだったようですが、そっちで売れない女優や男優は裏に出演させられ、元をとるようなやり方のようです。
レイプやSMはマニアが多いので、本気の裏物は高く売れるそうです。

マリン「コウくんはルックスもいいしテクもあるから、表でそれなりに売れてたんだと思うのよね。でも、本番を何本もふっとばしたとなると・・・その話もハッタリでもなさそうね。」
渚  「事務所の場所とか、わかりますか?あと、始発のチケットとれるかな?」
マリン「渚くんが行って、どうするつもりなの?」
渚  「そ、それは・・・その、ラストチャンスの撮影に主演します。」
マリン「うち(楽園)は、よそと掛け持ち出来ないことはわかってるわよね?」
渚  「はい。」
マリン「辞める覚悟ってこと?」
渚  「・・・はい。」
翔  「でもそんな会社なら、もし、渚がそのコウと出演するって言ったところで、まともな撮影してくれるかどうかもわからねぇんじゃ?」
マリン「そうね。渚くん可愛いし、下手したら渚くんがレイプされるってことも考えられるわね。」
渚  「そ、それでもっコウがされるよりは、たぶんマシだから・・・」
翔  「馬鹿かっ!レイプされるのにマシも何もあるわけないだろ?和樹んとこの撮影でやってるみたいなのと違うんだぞっ!」
渚  「でもっ!」
マリン「・・・わかったわ。とにかくコウくんのアパートと事務所の住所と地図をコピーしたから。あと事務所の電話番号と、始発の飛行機の手配ね。」
翔  「・・・俺も行くから、2枚お願いします。」
マリン「そのつもり。渚くんひとりでは行かせられない。あと、社長には?」
翔  「俺から連絡します。」
マリン「そう。じゃあお願いね。」

マリンさんは、テキパキとパソコンを操りチケットの手配や、大阪着いてから必要な地図などをプリントアウトしてくれました。
翔くんは部屋の外にでて電話をしているようでした。
僕は・・・ただ俯いて泣くことしかできませんでした。
ここ(楽園)を辞めなければならないこと、もしかしたら本気のレイプをされるかもしれないこと、そんなことを考えたら震えが止まらなくってしまいました。
でも、それでも僕はコウを助けたいと思いました。
麻衣さんって人も、自分の幸せを捨ててでもコウを助けようとしていたんです。
そこまでコウを想う麻衣さんって、コウの何なんだろう?部屋の合鍵持ってたって・・・。
どうしてか、胸がズキンっと痛くなりました。今はそんなこと考えている場合じゃないのに。
翔くんが事務所に戻ってきました。

翔  「マリンさん、手配出来た?」
マリン「OKよ。」
翔  「じゃぁ、車出すから、まだ早いけど空港向かうか?どうせ眠れないんだろ?」
渚  「うん。」
翔  「着替えとか、必要なもの準備してこい。俺も用意してくるからロビーで待ち合わせな。」
渚  「うん。わかった。翔くん、ありがとう。マリンさんもありがとうございます。」
マリン「気をつけていってらっしゃい。とりあえず、こっちは長期休暇にしておきます。後の事は、戻ってから相談しましょう。」
渚  「はい。」
マリン「翔くん、渚くんのことよろしくね。後の事はまかせて。」
翔  「はい、お願いします。」

こうして僕は翔くんと始発の飛行機で、大阪に向かいました。


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