紫苑 「・・・っ?!光さん?!」
紫苑は光の声を聞いたような気がして、目が覚めた。
その瞬間、激しい頭痛に見舞われ、自分が今置かれている状況が把握できない。
何が起きてる?
頭を振りながら起き上がろうとするが、何かに思い切り頭をぶつけてしまった。
紫苑はカプセルのようなものの中に寝かされていた。真っ暗ななか、あちこち叩いてみるがびくりともしない。
紫苑 「くそっ」
ひとしきり暴れると、すこし落ち着いて目が覚める前の記憶をたどってみる。
ああ、リハーサルが終わって楽屋に向かう途中で手塚から電話があったんだ。親父がどうしてもライブ本番前に渡したいものがあるとか・・・。楽園に取りに来いって・・・。
またいつものことかと無視しようと思ったけど、親父はいつも自分でメールしてくるのに手塚を使って連絡してくるのは変だと思ったんだ。手塚の様子もおかしかったから・・・。
そうだ。部屋に入るとそこに零王がいた。しかもシルバーの髪に紫色の瞳をして。
今まで俺が零王になりすます必要があっても、零王が俺になる必要はなかったはずだ。
紫苑 「何してる?」
零王 「ん?」
紫苑 「何をしていると聞いている。」
零王 「今日からここは、僕の部屋だよ。」
零王のヤツ、俺と入れ替わると言ったんだ。俺と入れ替わって自由になるって。
零王 「だから、僕がその心臓もらうね。」
紫苑 「はっ!?何言ってるんだお前?」
零王 「心配しないで。苦しまないようにしてあげるから。」
紫苑 「・・・何を企んでる?」
零王 「僕はもう、神宮司零王でいることをやめるんだ。このまま壊れた心臓抱えて神宮司の言いなりに生きていて、何の意味がある?そんなのただの人形だろ?だから紫苑の心臓をもらって紫苑として自由に生きることにした。」
紫苑 「ふざけるな!」
零王 「どうせ紫苑は失敗作なんだ。心臓以外の体は研究材料になってあげてよ。・・・彼らの」
そのとき後ろから押さえ込まれて・・・何かを嗅がされた。そうだ、それで気を失って・・・。
薄れる意識のなか、紫苑の耳には零王の不気味な笑い声だけが届いていた。
紫苑 「くそっ。今何時だ?俺はどれくらい意識を失ってた?ライブは・・・」
紫苑は再び狭く真っ暗な中、手探りで出口を探す。
しばらくすると話し声が近づいてきたが、カプセルのせいか話の内容までは聞こえない。声はすぐに争っているかのようになり、ガタガタと激しい物音がしてカプセルがぐらりと揺れた。
紫苑 「誰かいるのか?!」
紫苑は叫び、目の前のガラス素材を思い切り叩いた。すると急に明るくなってガラス越しにのぞき込む莉音と目が合った。莉音はめずらしくやわらかい表情をすると、カプセルのふたが静かに開いた。
莉音 「よかった。間に合って・・・。」
紫苑が軽いめまいに襲われながらゆっくりと起き上がると、莉音の足元には男が2人転がっていた。
紫苑 「何これ?」
莉音 「説明は後で。光さんがっ」
紫苑 「!?光さんも来てるのか?」
莉音 「ごめん。・・・場所はわかってる。まずはあんたが冷凍される前に助けないとと思って」
紫苑 「冷凍!?」
莉音 「だから説明は後で!」
二人はその部屋を出ると、奥に向かって走り出した。
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