<湊の部屋・夕方>
曲作りの為、しばらくバンド練習を休止していたLumie`re (リュミエール)のメンバーはそれぞれの曲を持ち寄って久しぶりに湊の家に集まっていた。
光 「遅なってすまんっ!」
最後に到着したのは光だった。
光が来るまでの間に、湊から岸谷の事件のことは掻い摘んで晴樹と彰仁に伝えられていた。
晴樹 「なんや、遅かったなぁ。」
光 「バイト長引いてしもて。」
湊 「冷たい紅茶入れるよって、まぁゆっくり休み。」
光 「サンキュ。みんな元気やった?」
晴樹 「元気やったけど、ももは大変やったんやろ?大丈夫なんか?」
光 「あぁ。マジ大変やった・・・けど、もう大丈夫や。」
彰仁 「ももくん、なんだか雰囲気変わったね?」
光 「そうかぁ?髪伸びたからやないか?」
晴樹 「ほんまや。なんや色っぽくなったなぁ。」
光 「はぁ?そんなんあるかぁ。」
湊 「くくっ。恋でもしてるんちゃうか?」
光 「な、何言うてんねん!」
晴樹 「図星かいな?ももは、ほんまわかりやすいなぁ。」
彰仁 「ももくんの彼女ってどんな子なんだろう?紹介してよ~」
光 「そやから、ちゃう言うてんねん!彼女なんておらんわっ!」
晴樹 「まぁそんなん、曲聴けばわかるやろ。」
光 「うっ・・・」
湊 「・・・人ごとやないな。」
晴樹 「なんやって?」
湊 「なんでもないわ。はよ曲聴こ。」
バンド内ではほとんど隠しごとなんてできない。曲を聴けばお互いの精神状態がほぼわかってしまうのだから。特に光は全ての詞を担当しているので、それはダイレクトに現れる。
Lumie`re (リュミエール)の曲作りは、湊、晴樹、光が担当している。光は作詞も作曲もするので、ほぼ曲を完成させてきて、みんなでアレンジをする。湊と晴樹は曲だけを作ってきて、その作品のイメージを光とディスカッションし、光が後から詞を書いてみんなでアレンジする。というのが通常だ。
湊 「ほな、ハルの曲かけるで。」
晴樹 「おう。2曲かいてきたで。」
晴樹は相変わらずクールでカッコイイ曲を作って来る。2曲とも光や他のメンバーが聴いたイメージと晴樹の作意はすぐに一致した。
湊 「ほな次、僕のな。僕も2曲や。」
湊はいつも繊細な曲作りをする。やさしいけれど力強い曲を作ることが多い。
光 「なんや、珍しくセンチメンタルやな?」
湊 「そうか?明るい曲調やんか。」
晴樹 「明るいけど・・・心弱なってないか?」
湊 「そんなことないで。」
光 「でも、ええ曲やな。・・・ちょっと切ない感じの詞かくわ。」
湊 「・・・切ないか?」
晴樹 「切ないな。」
メンバーが曲作りをする会話に、彰仁はほとんど加わらない。自分で曲をかかないということもあるが、やはりこの3人はどこか心が通じ合っていて、そこからLumie`re (リュミエール)の曲が生まれるのだと思っているから。
光 「アキ、どう思う?」
彰仁 「えっ!?」
晴樹 「え!?やないわ。湊の曲、いつもとちゃうと思わん?」
彰仁 「そ、そうだね。いい曲だと思うけど。」
湊 「・・・」
なんだか湊と彰仁の様子が、いつもと違うなと光は感じていた。
湊 「ほな、次はももの曲や。」
光 「俺、3曲かいてきたで。」
晴樹 「忙しかったわりに、3曲もかけたんか?」
光 「なんや、眠れんこと多くてな。曲はどんどん出てくるねん。」
光の曲はどれもエネルギーに満ちていた。恋をするというパワーと愛し合うという熱のこもった曲たちは、今まで光がかいたどの曲よりも深みがあった。
晴樹 「なんや、ええ曲ばっかりやな。」
光 「ほんまに!?」
湊 「ええ曲や。しかも、エロい。」
光 「エロい!?そんな歌詞書いとらんやろ?」
晴樹 「いや、全体的にエロい。」
光 「な、なんやねんそれ。」
湊 「やっぱり、バレバレやな。くくっ。」
それからメンバーはしばらく、それぞれの曲について話をして、光が書く詞やみんながアレンジする曲調の方向性を固めた。
湊 「明日から週末のライブのリハやから、本格的に新曲作るんは、それ終わってからやな。
晴樹 「そうやな。明日は紫苑くんも来るんやろ?」
湊 「来る言うとったで。そんとき、新曲渡してアレンジ考えてもらおうや。」
晴樹 「そうやな。アキ、紫苑くんとも相談してアレンジ頼むな。」
彰仁 「了解です。」
光 「次のライブん時までに、新曲でミニアルバムでも作りたいな。」
湊 「そうやな。忙しくなるで。まぁ、もう夏休みやからええけど。」
晴樹 「俺とももはバイトも忙しいけどな。」
光 「ほんまや~。はよ、音楽で食えるようになりたいなぁ。」
やっと明日、紫苑に会えるんや・・・
光は、結局あれから約2週間、紫苑と会えていなかった。
光のことを心配するメールは何通も届いていたが、電話をしても留守電になっているか電源が切れていて声も聞いていなかった。
実は、やっぱりあれは夢だったのかもしれないと言うくらい光は不安になっていたのだ。
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