<街・夕方>
光は学校が終わると、今日はバイトもないし家に帰って曲作りでもしようかなと、ぼんやりしながら街を歩いていた。
紫苑はどうしてるんやろか?・・・そういえばあいつ、どんな曲かくんやろ?
なんだかちょっと気まずい感じになったまま会えていないのが光は気がかりだった。
Lumie`re (リュミエール)のサポート、続けてくれるんやろか?
俺んこと、嫌いになったやろか?
あんなん、一生懸命助けてくれたのにお礼もしとらんな俺。
・・・紫苑に、会いたいなぁ。
光がふぅ~とため息をついた時、オープンカフェでコーヒーを飲みながらパソコンを開いている男性と目が合った。
年齢は40代くらいかだろうか、ブランド物のスーツを着こなした、お洒落で少し派手めな大人の男性だ。
誰やったかな?見たことあるような気するんやけど・・・挨拶しといたほうがええやろか?
光は、ぺこりと会釈をした。
すると、その男性が立ちあがってにっこり笑うと、手招きをする。
???「百瀬君じゃないか?Lumie`re (リュミエール)の。」
光 「あっ、はい。」
???「覚えてない?岸谷です。前にバンドバトルのイベントで審査員してた。」
光 「あぁ、はい。あの時はお世話になりました。」
ああ、そうや。音楽プロデユーサーの岸谷さんや。
岸谷 「Lumie`re (リュミエール)、最近いい感じみたいじゃない?噂は聞いてるよ。」
光 「ありがとうございます。」
岸谷 「今日、・・・棚橋くんと会うことになってるんだよ。」
光 「えぇ!?ほんまですか?何も聞いてへんけど。」
岸谷 「内緒にしてて、驚かそうと思ってるんじゃない?これから待ち合わせだから一緒に行こうよ。逆にビックリさせちゃおう。」
光 「あ、はい。」
岸谷 「銀座のホテルだから、タクシー乗っちゃおうか。今、会計してくるから少し待ってて。」
光 「わかりました。」
なんや~、ハルなんも言うとらんかったのになぁ。バンドんこと話す時はみんなに相談することになっとるのに・・・湊は聞いてるんやろか?
光はスマホを取り出して、湊に電話をしてみるが繋がらない。
取りあえず岸谷と偶然会って、一緒に銀座のホテルに向かうことをメールで伝えた。
<ホテル・夕方>
岸谷とタクシーで到着したのは、銀座にある一流ホテルRegnbage (レグンボーゲ)だった。光は、東京に出てきたばかりの頃、いつかこのホテルのスイートに泊ってみたいと思ったのだ。その部屋から見える景色は絶景だという。その景色を見てみたいと憧れていた。
光 「すごいですね。ハルとの相談でRegnbage (レグンボーゲ)だなんて。」
岸谷 「いやぁ、いつも利用していてね。僕の部屋に来てもらうことにしただけなんだよ。」
光 「自分もいつか、ここのスイートに泊るんが夢なんです。」
岸谷 「あぁ、ここのスイートいくつかあるけど、どれも景色がすごく良いらしいね。流石に僕が泊っているのは、スイートじゃなくてビジネスデラックスだよ?はははっ。」
光 「それでもすごいですよ。」
光は憧れのRegnbage (レグンボーゲ)に足を踏み入れ、少し舞い上がっていた。
ホテルに入ると岸谷は、光に待っているように伝えフロントに向かった。
光はロビーやラウンジをキョロキョロと見渡した。すると、ラウンジからピアノの音色が聴こえてくる。その曲の色が、紫苑がベースで弾く色と似ていて、光はドキリッとした。
どんな人が弾いてるんやろ?
光の位置からピアノを弾いている人の顔までは良く見えない。少し近づいてみると学生服と黒髪が見えた。
高校生なんやろか?ええ音やなぁ~。紫苑がピアノ弾いたらこんな感じなんやろか?
ふらふらとラウンジに近づいて行こうとした光の腕を岸谷が掴んだ。
岸谷 「お待たせ。さぁ、行こうか。」
光 「あの、ハルは?」
岸谷 「ああ、約束の時間まだだから、先に行ってゆっくりしよう。」
光 「そうですか。あ、このカードが部屋のキーですか?」
岸谷 「そうだよ。今時めずらしくもないけど。」
光がカードキーを手に見ていると、岸谷のスマホの着信音がした。
岸谷 「あぁ、ごめん。百瀬君、エレベータの前でちょっと待ってて。」
そう言うと、岸谷は少し離れたところで電話をとった。
光は、自慢してやろうと思い、カードキーを写真に撮って添付すると湊にメールを送った。
岸谷 「お待たせ。棚橋君もう少しで到着するみたい。部屋に直接来るように言ったから。」
光 「なんや、ハルやったんですか?」
岸谷 「うん。じゃぁ、行こうか?」
光は頷くと岸谷の後についてエレベータに乗り込んだ。
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