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響瑠

Author:響瑠
ここに書かれている日記は
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俺は自分の将来について、何ひとつ具体的な目標を見いだせずにいた。
高校を卒業して都内の大学に進学して家を出た。
何か目的があったわけではない。ただ小さな田舎町で生きていくことに息苦しさを感じて逃げたかっただけだ。
大学で4年もあれば何かやりたいことでも見つかるだろうと思っていたが、実際4年もの猶予はなく、田舎育ちの俺が環境になじんだ頃には、すでに周りのみんなは遊ぶだけ遊んで、なんとなく就職先の候補を決めていたし、3年生になると現実的に動き出した。
しかし俺は夏休みになってもまだ、何も考えられず、ぼんやりと日々を過ごしている。

今日も昼間からごろごろとベッドに横になっていると、母からラインが届いた。

『おつー』『ひま?』

間抜けなスタンプが連続で届くが、その後は何か打ち込んでいるらしく、暫く時間がかかる。
遅い!

『夏休み中に帰ってくれば?』

帰ってくれば?ってなんだよ。
まぁ、帰ってきなさいと言われるよりは気が楽だけど。
たぶん感が良い母のことだ、俺が就活してないことも薄々気づいているんだろう。

『今年は久しぶりに、あんたの好きな向日葵畑したから。』

そして一枚の写真が送られてきた。
そこには画面いっぱいに咲き広がる向日葵畑が写っている。
家は田舎で農家をしている。いつもは野菜を作っているが、数年に一度、畑の土に栄養を与えるために、向日葵畑をつくる。

『パス!』

手でバッテンを作っているお気に入りの猫スタンプを送る。

クレヨンで描いたような黄色と緑が太陽の陽を浴びてきらきら輝き、土の匂いまでしてきそうな画像を見ていると、嫌でもあの夏の日を思い出してしまう。
俺はため息をついて、ベッドにスマホを投げ出し横になった。

するとまた、ライン受信の音が鳴る。

『あ、そういえば、ヨネ子の具合が良くないみたい。』

それ、早く言えよ。
俺は慌てて起き上がり、バタバタと実家に帰る支度を始めた。




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