光 「なぁ紫苑、今日は大阪見物でも行くか?」
紫苑 「そうですね。案内して下さい。」
もう既に太陽は真上にある。
ふたりは朝からまたひと眠りしてシャワーをあびたところだ。
紫苑 「光さん?」
紫苑は不意に光を後ろから抱きしめた。
身長差は15センチ。紫苑は少し腰を折って光の肩に自分の顎を乗せる。
大きな鏡に映るふたりは穏やかな表情をしている。
光 「・・・紫苑?」
紫苑 「何ですか?」
光 「紫苑って、こんなキャラやったか?」
紫苑 「こんなって?」
光 「こんな甘えたでベッタリするタイプやない思っとった。」
紫苑 「そう・・ですね。」
光 「こーんな顔して、めっちゃ無愛想やったで。」
光は自分の両目尻を人差し指でつりあげた。
そんな光を鏡越しに見つめて、紫苑は口角を上げる。
光 「ほらな。最初ん頃はそんなん笑わんかったで?」
紫苑 「それは・・・光さんのせいです。」
紫苑は光の頬に掌を添えて振り向かせると口づけた。
2度3度と唇を啄んで、頬にこめかみにチュッチュッと音をたて唇で触れる。
光は紫苑のキスがくすぐったくて、たまらず身体を捻り振り返ると紫苑の腰に両腕をまわした。
少し上目遣いで睨んでみるが、紫苑にはそれがまた可愛くて仕方がない。
紫苑 「俺が変わったのなら、それはあなたと出逢ったから。」
光 「それは・・・紫苑がこん世界に生まれてここまで歩いて来たからや。」
紫苑 「そうですね。・・・光さんと出逢って、それに気づくことができました。」
光 「そうか?」
紫苑 「はい。そして、光さんも同じですよ。この時代のこの世界に生まれて、ここまで歩いて来てくれたから。」
光 「そうやな。・・・どんなに逃げても、自分をやめることは出来ん。」
紫苑 「そうです。だから・・・出逢えた。」
光は紫苑の紫色の瞳をまっすぐに見つめると、八重歯を見せて笑った。
光 「ここからは、一緒やで。一緒に歩いて行こうな。」
紫苑 「はい。もう、どこにも行かないで下さいね?」
光 「ああ。どこにも行かん。」
紫苑 「すっと同じ景色を見ようって言ったのは、光さんですよ?」
光 「そうやな。もう、離れん。」
紫苑 「離しません。」
紫苑は光の細い肩を包み込むように抱きしめると、額に唇を押し当てる。
少し身体を離して、長い指で光の顎をすくうと口づけた。軽く啄んで舌を差し入れる。
光 「んっ。・・・あかん。」
光は紫苑の胸を押して抵抗を試みる。
紫苑 「どうして?」
光 「・・・また、へんな気分になってまうやろ。」
紫苑 「へんな気分?」
光 「へんはへんやねんっあっ。」
光の抵抗も空しく紫苑の口づけは深く激しさを増してゆく。
しかし、それを阻むかのように部屋からは紫苑の携帯の呼び出し音が聞こえてきた。
光 「んっ・・・あか・・んっ・・って・・・電話っ・・鳴ってるで?」
紫苑 「・・・大丈夫です。・・・嫌な予感しかしません。」
光 「はぁっ・・あかんっ・・お父さん・・こと・・かも知らんやん・・か」
紫苑 「・・・」
紫苑はやっと光を開放すると、その頬に軽くキスを落として部屋へ向かった。
紫苑 『はい。』
莉薗 『紫苑?』
紫苑 『忙しいんだけど?』
莉薗 『イチャイチャしてる場合じゃないわよ。』
なんなんだ、相変わらず見てたみたいなこと言いやがって。
紫苑 『何?』
莉薗 『今すぐ帰ってきて。』
紫苑 『はぁ?』
莉薗 『問い合わせの電話が半端ないのよ』
紫苑 『何の話だよ。』
莉薗 『Lumie`re (リュミエール)のことっ!』
紫苑 『えっ!?』
光が心配そうに紫苑を見つめているので、紫苑は大丈夫と指でOKサインを作る。
莉薗 『伊豆で配ったCDの問い合わせ先にうちの会社の電話番号入れたでしょ?』
紫苑 『あっ。』
莉薗 『あっ!じゃないわよ!次から次に問い合わせが来てるの!』
紫苑 『なんで?』
莉薗 『なんで?じゃないわよっ!とにかく今すぐ帰ってきて!』
紫苑 『今日は大阪見物・・・』
莉薗 『ばっかじゃないの?それどころじゃないの。湊さんにも梨里香ちゃんから連絡してもらったから!今すぐ帰ってきて!わかった?』
紫苑 『・・・耳痛い。』
莉薗 『いい?今すぐよっ!?』
莉薗は言うことを言うと、ブツッっと電話を切った。
紫苑 「はぁ・・・マジギレだな・・・」
紫苑は電話を見つめ、大きなため息をついた。
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