【別冊:まだ見ぬ景色】8 ~その頃、このふたりは・・・?~
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いつも通り、湊の家でライブの打ち上げをすることになった。
そこで、晴樹が紫苑に正式メンバーにならないかと持ち出した。
紫苑は自分の話をしたがらない。しかし正式メンバーとなれば、そうも言っていられない。
心を決めたかのように、新庄が言っていた女がらみの話や、莉薗が登場したことで明らかになった家の事情や出生の秘密などを淡々と話した。
Lumie`re (リュミエール)のメンバーは、その想像も出来ないほど複雑な話に驚きはしたけれど、紫苑が何故頑なに人と関わることを嫌がるのか、目立つことを嫌がるのかを知ることができて、内心ほっとするところがあった。
その話をするきっかけとして、湊は自分がゲイであることを告白した。Lumie`re (リュミエール)のメンバーの前でだけは、自分を偽りたくないと思ったのだ。
湊 「メンバーにはバレてるみたいやから、この際カミングアウトするけど、僕はゲイやねん。女を好きになれんのや。女は抱けない。そやから後継ぎつくれんやろ?」
紫苑 「・・・ご両親はご存知なんですか?」
湊 「知っとるよ。東京出るとき言ってきた。・・・で、紫苑くんの話は?」
湊の言葉に彰仁はドキリとした。
「祥くん・・・。俺の事、からかってたわけじゃないんだ。本当に・・・俺の事・・・?」
彰仁は、自分を好きだと言ってくれた湊にどれほど酷いことを言ってしまったのか、思い出すだけで胸が苦しくなった。
「俺の事・・・からかったの?」
「・・・俺、男だし。・・・俺だって祥くんのこと好きだったけど、でもっ!・・・こんなことするの、変だよっ!男同士でキスとか・・・祥くん頭変になった?」
「祥くんのバカっ!!」
今、思い出しても心が痛い。
「あんなこと・・・もし、自分が好きな人に言われたら・・・耐えられないよ。」
好きな人・・・彰仁は、たった今頭に浮かんだその人を見ると、目が合った。
湊 「さっきからずと黙っとるけど、アキも賛成やろ?」
「祥くんは、いつも俺の隣にいて俺を見ていてくれた。俺が落ち込んでいれば励ましてくれるし、悩んでいればアドバイスをしてくれる。・・・俺が何も言わなくても、時には俺より先に俺の変化に気づいて・・・助けてくれたんだ。・・・それを、当たり前だと勘違いしてた。バカは俺だ・・・。」
彰仁は熱いものがこみ上げてくるのを止める事が出来なかった。
彰仁 「・・・うん。」
湊 「えっ!?アキ?・・・なんで泣いてんねん?」
彰仁 「祥くん・・・俺、俺ごめん・・・」
湊 「アキ?・・・ちょ、ちょっと待ち。」
湊は慌てて近くにあったタオルを彰仁の頭にかぶせた。
Lumie`re (リュミエール)のメンバーは、何かを察知し早々に引き揚げ、湊と彰仁を2人にしてくれた。
湊がみんなを玄関まで見送りに行き、リビングに戻って来ると、彰仁は頭にタオルを被ったままリビングの椅子に座っていた。
湊はその彰仁の目の前に膝をつくと、下から顔を覗き込む。
湊 「アキ?大丈夫か?」
彰仁 「祥くん、ごめんね。・・・俺、オレ・・・」
彰仁はまた、ぽとぽとと大きな涙の雫を落とす。湊は彰仁が頭に被っているタオルでその涙を拭き取った。やっぱり、直接は触れてこない。彰仁の胸はチクリと痛んだ。
湊 「どないしたん?」
彰仁 「俺、祥くんに酷いこと言った・・・本当にごめんなさい。」
湊 「なんや、そのことか。・・・もう、ええねん。僕はさっき言った通り、男の人しか好きになれん。そやけど、アキはちゃうねん。そやから、僕の気持ちがわからんでも、それは仕方ないことやし、それでええねん。ただ、こういう人もおるんやってことは、僕んことだけやなしに、わかってほしい。それを理解しろとか受け入れろとか言うてるんとちゃうで?そこは誤解せんといてな?」
彰仁 「・・・うん。」
湊 「誰かを好きになるっちゅうことは素敵なことやで?例え年が離れてても、身分の差があっても、国が違っても、男同士でも・・・。ただな、この間僕がアキにしたことは、あかん。アキの気持ちを無視して自分の欲望を押しつけてしもた。嫌な思いをさせてしもたな。そやから、アキが怒ってもあたりまえや。謝らなあかんのは僕のうほうや。ほんま、ごめんなさい。」
彰仁は、ずるずると椅子から降りて湊の前に膝をついた。頭に被っていたタオルがはらりと床に落ちる。
彰仁 「違うんだ・・・。」
湊 「ん?」
彰仁 「俺、嫌じゃなかった。祥くんにキスされて・・・触られて、ドキドキしてたんだ。どんどん身体が熱くなって・・・そんな自分が怖かった。」
湊 「・・・そうか。・・・ほんでも、やっぱりあれは・・・」
彰仁 「違う!・・・俺はもっと触れて欲しいって思ってた。・・・もっとキスしたいって。だからっ。」
湊は彰仁を強く抱きしめた。
湊の心は揺れた。彰仁は自分を嫌がっていたわけではなかった。でも、自分は男しか好きになれないゲイだけれど、彰仁は違う。ノーマルの彰仁をこちら側に引き込んではいけないのだと、あの日心に決めていたのだ。
暫く無言でお互いの心臓の音を聴いていたが、湊はふぅっと息を吐くと少し身体を離して、彰仁の髪を撫でる。
湊 「もうええ。ありがとう。ありがとうなアキ。そやけど、新しい彼女出来たんやろ?それやったら、彼女と幸せになり。」
彰仁 「・・・出来て・・ない。彼女作ろうと思って合コンいっぱい出たけど、全然その気になれなくて・・・・。」
湊 「なんや、嘘か?ほんまに・・・まぁ、それでもそのうち可愛い彼女出来るやろ。」
彰仁 「無理だよ・・・。」
湊 「なんでや?アキ、モテるやんか。」
彰仁 「だって・・・気づいちゃったんだ。」
彰仁は目の前にある、湊の切れ長の目をまっすぐに見つめた。
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