<ライブハウス・夕方>
百瀬光(ももせ ひかる)は、「スイートポテト」という、なんとも可愛らしい名前のライブハウスの重たい扉を開いた。
光 「マスターおるー?」
真瀬 「ももか?どうした?」
光 「これ、貼らせてほしいんやけど。」
真瀬 「なんだ、まだベースみつからないのか?今度のライブはどうするんだ?」
光 「あぁ、今度んは暁にお願いしてんねん。ヘルプやけどな。」
真瀬 「暁ならテクもあるし、人気もあるし、メンバーにしちぇばいいのに。」
光 「暁は上手いで。そやけど色がちゃうねん。どうしてもそれだけはあかんねん。」
真瀬 「お前、特にベースの音にはこだわるからな。」
光 「そこだけは、譲れへん。」
真瀬 「まぁ、その掲示板にドーンと貼っとけ、やりたい奴は山ほどいるだろうよ。」
光がリーダーで活動しているロックバンドLumie`re (リュミエール)は1年ほど前、ボーカルの百瀬光、ギターの棚橋晴樹(たなはし はるき)、キーボードの湊祥一郎(みなと しょういちろう)の3人で大阪から上京し、同じ大学に入って結成された。ドラムとベースのメンバーを探して1年。やっとこの春、1年下の城田彰仁(しろた あきひと)をドラムに迎えたばかりだった。しかし、どうしてもベースがみつからず、毎度ヘルプでつなぎながらライブ活動をしている。
光とマスターが談笑していると、
そこへ、なんとも無愛想なひとりの男が店に入ってきた。
真瀬 「おお、紫苑おはよう。」
???「あっ、おはようございます。」
マスターに紫苑と呼ばれたその男は、じっと光を見た。
光にとって初めてみる顔だったが、光はいつものように八重歯を見せてニコーと営業スマイルで挨拶をした。
光 「おはようございます。」
すると、紫苑はつかつかと近づいてきて光の顔をまじまじと見つめると、
紫苑 「オカマ?」
光 「!?はぁ!?な、何言うてんねん!俺はれっきとした男や!あほっ!」
紫苑 「あほって言うな。」
ぼそっと言うと、そのまま詫びるわけでもなくスタッフルームへ消えていった。
真瀬 「くくっ。もも、綺麗だからな~女だと思ったんだろな。」
光 「なんでやねん!なんやねんな、あいつ!失礼すぎやろ?」
真瀬 「まぁ、そう言うな。あれでも優秀なバイトくんだから、よろしくな。」
光 「あれで接客とかできひんやろ?」
真瀬 「いや、ボーイじゃなくてSEとか、音響頼んでるんだ。お前らみたいに当日早くから入ってリハする奴らも多くて、俺一人じゃ間に合わんのだよ。」
光 「・・・あいつ、耳はええの?」
真瀬 「ああ、いいな。楽器もほとんどできるし、あっ!メインはベースだぞ。」
光 「はぁ?ないない。あんな奴の音と俺らの音で色が合うわけないやんか。」
真瀬 「そうか?意外と合うかもしれないぞ。」
あんな失礼なこと言う奴の奏でる音が、あの色を出せるわけがない。と光は思った。
光は身長164cmと、小柄な上に色素が薄く色白で髪の色もかなり明るいブラウンだ。
大きな目だが切れ長で、まるで猫のイメージ。唇は薄く、男なのに美人だがニッコリ笑うと八重歯が見えて急に可愛らしくなる。
正直、女性に間違われたのはこれが初めてではなかった。
※拍手&ランキングバナーをポチっとしていただけたら嬉しいです♪
↓
小説(BL) ブログランキングへにほんブログ村
コメントの投稿